愛知・豊橋市の新市長「新アリーナ中止」断言 バスケ・三遠ネオフェニックスの“プレミア”参入取り消しも

2024年11月16日 08:01
新たなアリーナの建設計画を巡って、愛知県豊橋市が揺れています。「中止」を訴える候補が市長選で当選し、白紙に戻そうとする中、「待った」をかけようとする新たな動きも出ています。

豊橋市の新アリーナ完成予想図

「現役世代が余暇を楽しんだり、感動したりコンサートを見たり、スポーツ観戦したり自分でしたりというような拠点がどうしても必要だ。これはいま非常に困難な状況に直面していますが、これは何としても続けていってもらうように」(退任する浅井由崇・豊橋市長)

 15日の退任式で、自身が進めてきた新アリーナ建設計画について、熱い思いを語った豊橋市の浅井由崇市長。

 11月10日の市長選で敗れ、16日付で退任します。

「(新アリーナ計画を)多くのみなさんが続けてほしいという声もかなりあるので、それを私の立場“いち市民”ですけれども、できることがあれば一生懸命やっていきたい」(浅井市長)
 

17日付で豊橋市長に就任する長坂尚登氏

「新アリーナ中止」を掲げた長坂氏が新市長に
 17日付で市長に就任するのは、前豊橋市議の長坂尚登氏。

 浅井市長が豊橋公園で進めてきた新アリーナ(多目的屋内施設)の計画反対を訴え、当選しました。

「新アリーナのことについては、速やかに契約解除をすると。市民の意見を聞くプロセス自体が今回の選挙だったと判断している」(長坂尚登氏)

 当初、新アリーナの建設予定地は、豊橋公園の中で愛知県が「家屋倒壊等氾濫想定区域」に指定したエリアでした。

 そのため浅井市長は去年、公園内で氾濫想定区域から外れた野球場を取り壊して、その跡地に新アリーナを建設すると計画を修正。

 周辺整備なども含め、総額約230億円の事業契約を業者と結び、2027年の開業を目指していた最中、「中止」を掲げた長坂氏が市長選で当選しました。
 

市長選の翌日から解体工事がストップした豊橋球場

市長選の翌日から球場の解体工事はストップ
 14日に新アリーナの建設予定地である豊橋球場を訪れると、解体工事は止まったままになっていました。

 市は、市長選の翌日から球場の解体工事をストップ。今はグラウンドに文化財などが埋まっていないか、発掘調査のみ進めています。

 担当者は今後の作業について「17日に就任する新市長の判断を待つ」としています。
 

プロバスケットボールチーム「三遠ネオフェニックス」

プロバスケットボールチームの新本拠地の予定
 こうした状況に困惑しているのが、豊橋市に拠点を置くプロバスケットボールチーム「三遠ネオフェニックス」。

 昨シーズンは中地区で初優勝を果たし、今シーズンも現時点で首位。

 再来年にスタートするトップリーグ「Bリーグ・プレミア」への参入が決まっていますが、条件のひとつが、5000人を超える収容人数など一定基準を満たしたアリーナの確保です。

 現在、試合会場となっている豊橋市総合体育館は収容人数3000人。老朽化も問題となっていて、フェニックスは新たな本拠地の確保を前提にBプレミアに参入した経緯があります。
 

チームの「プレミア入り」が取り消しになる恐れも

三遠ネオフェニックス「アリーナの必要性に理解を」
 新アリーナ計画がとん挫すれば、チームの「プレミア入り」も取り消しになる恐れがあります。

「Bプレミア参入において、新アリーナの建設は必須と考えています」(三遠ネオフェニックスのコメント)

 三遠ネオフェニックスは、メ~テレの取材に対し、長坂新市長にアリーナの必要性を訴えていく考えを示しました。

「BリーグやBプレミアの現状を丁寧に説明させていただき、アリーナ建設の必要性について、ご理解いただけるよう働きかけていきます」(三遠ネオフェニックスのコメント)
 

「三遠ネオフェニックス」のブースター歴8年の神谷育江さん

三遠ネオフェニックスの「ブースター」は
 こうした状況に、フェニックスのファンは――。

「アリーナの(整備は)、順調に進んでいると感じていたので、『まさか』というところなんです」

 静岡県湖西市から応援に駆け付けているという神谷育江さん。

 チームのファン「ブースター」歴は8年です。

「たぶんBリーグのチームの中で、三遠ネオフェニックスが唯一、県をまたいでいるチーム。『三遠』というのは東三河と遠州という意味なので珍しいと思う。私は遠州側なので(豊橋とは)他県民になるが、応援しているおかげで豊橋の友達もすごく増えたし、豊橋のお店にもすごく行くようになったんです。すごく楽しいし、活力になります」(神谷さん)
 

「できれば新アリーナ建設が進んで欲しい」と語る神谷さん

「どんな状況でも応援を続けたい」
 新アリーナに対する逆風にショックを受けていますが、ファンが批判的になることでチーム全体のイメージ低下につながってしまう可能性があるとして、「どんな状況でも応援を続けたい」と話します。

「やっぱり自分たちの大事なものは、人には不要かもしれないし、人が大事なものは自分には不要ということがある。そこは冷静にというか、もうちょっといろんなことを考えながらと思う。確かにBプレミアは待ったなしなので、できれば進むといいなと思うのは、三遠ブースターとしての願いではあります」(神谷さん)
 

「豊橋公園に新アリーナを作ることはない」と語る長坂氏

新市長「豊橋公園に新アリーナを作ることはない」
 市長就任が間近に迫った長坂氏に、改めて今の考えを聞くと…。

「豊橋公園に新アリーナを作らない、これは変わらないです。そもそも新アリーナの必要性を言われても、論点はそこじゃないと思ってますので。新アリーナが必要だと思ってる人がいるのは分かりますよと。それ以上に豊橋公園を今のような公園として維持してほしいという声が、今回の選挙結果だと私は判断しております」(長坂氏)
 

総合体育館の改修で対応する可能性も

総合体育館の改修で対応する可能性も
 豊橋公園に新アリーナを作ることはない、と断言した長坂氏。

 三遠ネオフェニックスが「Bプレミア」参入のために求めている、アリーナの整備については…。

「可能性として、総合体育館の改修で対応できるかどうか。(三遠ネオフェニックスが)豊橋市総合体育館をホームアリーナにしますよとした、当初は総合体育館の改修で対応していく話だったと承知していて、いつの間にか新しい施設を作るという話に変わったということだと思う」(長坂氏)

 すでに着手している工事の契約を解除した場合、業者側に支払う損失補償などが発生する可能性については。

Q.試算はどれぐらいなのか
「いや全く分かりません。試算もしていない。私が市長になったら、この金額が1円でも低い金額になるために、豊橋市の損害を少なくするために争わなければいけない立場だと思っているので、具体的な金額は言わないと決めております」(長坂氏)
 

新アリーナを求める署名活動を支援すると話す近藤喜典氏

市長選で戦った相手は新アリーナ署名を支援
 こうした中、市長選で戦った相手からは、こんな声が。

「今、明確な情報がないんですね。契約を解除したときにどのような豊橋市のデメリットがあるかという情報は、選挙戦の中でもなかったと思います」(近藤喜典氏)

 新アリーナ推進派として市長選に出馬していた前の市議会議長、近藤喜典氏。

 14日から市民の有志が始めた、新アリーナを求める請願書の署名活動を支援しているといいます。

「(長坂氏の)考えるきっかけが一番大切なので。考えていただいて民意を受けてどうするかという。市長は決断と選択が与えられていて、決断をすることが仕事だと思いますので、その決断を一回を待ちたい」(近藤氏)
 

岡山理科大学経営学部の林恒宏准教授

スポーツマネジメントの専門家は
 選挙を経ても、いまだ火種としてくすぶり続ける、新アリーナ問題。

 スポーツマネジメントの専門家は、どう見ているのでしょうか。

「これから市民が限られたリソース(資源)、地域のリソース、人もカネも含めて、どういうふうに投資して、どういう政策を優先して考えないといけないかを改めて考えて、スポーツも選択肢としてどう考えるかという時代なんだと思う」(岡山理科大学 経営学部 林恒宏 准教授)
 

林准教授「文化活動や魅力的な街づくりの面から考えることも必要」

「文化活動や魅力的な街づくりの視点も」
 林准教授は、アリーナ建設の是非について、スポーツという視点だけでなく文化的な活動への利用や、魅力的な街づくりといった面からも考えていくことが必要だといいます。

「豊橋市も人口減少が進んでいるかと思います。豊橋市の魅力を際立たせながら、どのように今後、豊橋市が持続可能な都市経営を進めていくか。あるいはさらに発展的な都市経営を進めていくか。トップスポーツチームやアリーナをどう活用しながら、街の魅力を高め、それをどう発信していくか。それを住民と行政がいま一度考えていただく機会になるのではないかなと思います」(林准教授)
 

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