選挙ポスター候補者の名前なぜ“ひらがな”? 立候補した人に聞く 漢字と比べて当選率は変わる?

2024年12月13日 17:55
夏の東京都知事選や秋の衆院選、11月の名古屋市長選と今年は選挙が多い一年でした。 そこで「選挙ポスターあるある」です。なぜ候補者は名前をひらがなにするのか疑問に思ったことはありませんか。
 10月に行われた衆議院議員選挙。街中で立候補者のポスターをよく見かけた人も多いのではないでしょうか。東海3県では、掲示板が2万カ所以上に設置されていたといいます。

 各候補が有権者に顔と名前を売り込むため、さまざまなアイデアを詰め込むこのポスター。よく見てみると、名前の一部をひらがなにして表記する人が多いんです。

 公職選挙法では、立候補者は戸籍上の本名を届け出る必要があります。しかし、ひらがなのように「通称」も申請をし、選挙長に認められれば使用できるため、ひらがなを使う人が多いんです。

 10月の衆院選では、東海三県で立候補した87人中なんと63人、7割以上の人が名前の一部を漢字ではなく、ひらがなに変えていました。

 ひらがなを使う立候補者について、有権者に聞いてみると・・・

「孫も名前を言うんですね。漢字だと名前って難しいですよね、読みが。ひらがなだと分かりやすくていいんじゃないですか」(60代)

「ひらがなは印象には残りにくい。漢字の方がパッと見て分かるから」(30代)

「あまり難しい字は書きたくないですもんね」(50代)
 

おおたけりえ氏

芸能人のイメージに合わせて
 実際に名前をひらがなに変え、立候補した人はどういう思いだったのでしょうか。
 
 まずは、愛知14区比例復活で初当選した立憲民主党の大嶽理恵氏。大嶽氏は愛知県内で唯一、ひらがなのフルネームで立候補しました。

「おおたけの『たけ』が難しくて、御嶽山の『嶽』を書きますので」(おおたけりえ氏)

 豊川市議に初当選した2007年から全てひらがなで出馬。名前の『理恵』までひらがなにした理由はーー

「芸能人もひらがなの『りえ』の人が多いじゃないですか。『宮沢りえ』『ともさかりえ』『くわばたりえ』『おおたけりえ』ということで、全ひらがなにしました。やわらかい感じに受け取ってもらえたらいいなと思う」(おおたけりえ氏)

 有名な芸能人のイメージに乗っかって、より覚えてもらうためにひらがなにしたというんです。
 

犬かい明佳氏

地域への親しみも込めて
 続いては犬山市などで構成される新設の愛知16区で立候補も、落選した公明党の犬飼明佳氏。立候補者名は「かい」のみひらがなという、ちょっと珍しい表記です。

「私の名前が『犬飼』で漢字で書くと『飼』の画数が多くなる。『飼』がひらがなだと、投票用紙に書く時も書きやすくなるのかなと思う」(犬かい明佳氏)

 確かに「飼」は13画。ひらがなにすると5画で済みます。では『犬』はーー

「今回新しい愛知16区で初めての挑戦ということで、この選挙区内に犬山市がある。せっかく『犬』がつく名前なので、漢字の『犬』にした方がより皆さん親しみが湧いていいんじゃないかという声をたくさんもらって、それで思い切って『犬』を漢字にした」(犬かい明佳氏)

 犬を目立たせるために、あえてひらがなを入れることでより名前を覚えやすくしようという考えだといいます。この名前に決めるまでにかかった期間がーー

「2カ月ぐらいかかったんじゃないか。去年11月に話が出て年末年始の12月、1月で結論を出した」(犬かい明佳氏)

 票に結び付けるため、立候補者によっては長期間悩むこともあるという名前の表記。
 

10月の衆院選の当選率(東海3県)

名前のひらがな表記について専門家は
 なぜここまでひらがなにこだわるのか、選挙とメディアの関係について研究する名古屋大学の山本教授に聞いてみました。

「一番最初に挙げられるものは親しみやすさを植え付けたい。なおかつ『書いてもらいやすさ』というのを投票箱に入れるまでのコストを相対的に下げている」(名古屋大学 山本竜大 教授)

 日本は候補者名を自分で書く自書式投票を採用しています。ひらがなだと読み間違い、書き間違いが少なく無効票になりづらいメリットがあるといいます。

 それでは、一番気になるところを聞いてみます。

Q.ひらがなにすると当選率は上がる
私の知る限りですけども、当落に影響してるかというのは、はっきりは申し上げられません」(山本教授)

 10月の衆院選の場合、東海3県の25の小選挙区で当選した人で名前が漢字のみの人と、ひらがなを使っている人を分け、当選率を調べてみると、約37%と約27%で漢字のみの方が優勢でしたがーー

「もともと投票先を決めて投票所に行く人もいれば、投票所のポスターで決める人たちも一定数いる。最後『決めかねる』となった時の、押しの1手になっているかもしれない」(山本教授)

 名前ひとつ取っても真剣勝負、それが「選挙」。次の選挙は、各候補のポスターをじっくり見比べてみると、おもしろい発見があるかもしれません。
 

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