共通テスト「詰んだ」「人生おわった」受験生へ「あなたも勇者です」 河合塾主席研究員のメッセージ

2025年1月20日 17:01
「詰んだ」「人生おわった」…。18、19日に実施された大学入学共通テストで、実力を発揮しきれず、悲観する受験生もいるのではないでしょうか。大学入試を長年ウオッチしてきた河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員(63)は「共通テストだけで人生は終わらない」と強調します。受験生へのアドバイスを聞きました。

共通テスト会場に向かう受験生(18日、名古屋市千種区の名古屋大学)

 今回は新課程に対応した初めての共通テストで、不安に思う受験生も多かったと思います。

 結果としてそれほど大きな変化はなく、「難しくてお手上げ」という教科や科目は見当たりませんでした。「易しかった」とまでは言いませんが、手ごたえを感じた受験生が多かったのではないでしょうか。
 

今回の共通テストの出題傾向を分析する河合塾の近藤治さん

試作問題に沿った出題が多かった
 大学入試センターは今回、変更点を予告していました。
 例えば国語で現代文の大問を1問増やしましたが、3年前の試作問題に近い内容で、予備校各社の模試を経験した受験生は「見たことがない」ということはなかったと思います。
 また、選択肢は前回は5択が多かったのですが、今回はほとんどが4択になりました。前回よりちょっと易しくなったかなという印象です。

 新教科の「情報」も、3年前の試作問題と構成・内容・分野がほぼ同じでした。教科書レベルを把握し、「知識プラス活用」をトレーニングすれば対応できます。平均点はまだ出ていませんが、60~65点ぐらいではないでしょうか。

 「地理歴史・公民」が再編され、「歴史総合」では日本史と世界史の融合問題が出ました。やや世界史寄りの内容で、日本史を中心に勉強してきた受験生は少し解きにくかったと思います。
 とはいえ、「歴史総合」は日本史と世界史を両方まんべんなく学習するものですから、「不公平」というのは違うと思います。

 英語はリーディングで新しい試みがみられました。
 かつて「読む・聞く・話す・書く」の4技能をはかろうと外部試験を導入しようとしたことがありましたが、「書く」(ライティング)の素養をはかろうとする出題者の工夫を感じました。
 
得点調整はある?
 共通テストとしては今回で5回目になり、教科や科目間のばらつきが当初に比べて収まってきたように思います。

 得点調整があるかどうかはまだわかりませんが、今回は現役生向けの新課程の科目間に加え、浪人生が受けた旧課程の科目と、新課程の科目との間の得点調整もありえます。
 従来でも浪人生の方が平均点が10点ほど高いのですが、今回は旧課程の母集団が浪人生だけになるので、平均点はとても高くなるでしょう。

 河合塾は22日に国公立大学のボーダーラインを発表し、得点調整があれば週末から来週初めにかけて見直します。

 ただ過去の例では、得点調整があってもボーダーラインが大きく変わることはありません。得点調整は差を縮めるだけで、得点が逆転することはありません。慌てないようにしましょう。
 

大学入学共通テスト会場となった名古屋大学(名古屋市千種区)

共通テストだけで国公立は決まらない
 20日は受験生が自己採点をし終わって、集計に出すタイミングです。
 今回はおそらく期待していた点が取れた人が多いと思いますが、決して有頂天になってはいけません。自分だけでなく、ほかの受験生も取れている可能性が高いからです。

 ほっとしていいのは共通テストの翌朝までです。入試はまだ始まったばかりで、これからの方が長く、高いハードルがあります。自信は持ちつつ、私立入試や国公立の2次試験に向け、自分の立ち位置を冷静に振り返りましょう。

 特に今回は、暦の関係で共通テストが少し遅くなりました。その分、私立入試や国公立2次試験への日数は短いことを忘れないでください。

 国公立は共通テストだけで決まるわけではありません。
 2段階選抜がある場合は別ですが、2次試験で逆転できた例は毎年いくつもあります。
 特に難関大ほど共通テストの比重は低くなります。共通テストの1問より、2次の1問の方が合否に大きく影響します。

 2次試験は記述・論述の比重が高くなりますが、まだ1カ月あります。ここから先は高校の授業もあまりないと思うので、記述・論述対策をする時間はあります。

 この段階で早々と志望校を下げるのではなく、最後の最後まで志望校にしがみついてほしい。合格可能性が50%、河合塾の模試ならC判定だったら、受ける価値はあると思います。
 

大学入学共通テストに臨んだ受験生(18日、名古屋市千種区の名古屋大学)

途中でやめて後悔した先輩たち
 私立大の入試は2月初旬から始まり、特に東海地方の私立は早いです。共通テストが終わって緩んだ気持ちを早く立て直しましょう。

 私立は合格発表も早く、私立専願ならいいのですが、国公立大の志望者も、私立大の合格が出たことで歩みを止めてしまうことがあります。
 合格すればうれしいし、何より勉強を続けることがしんどいからです。

 そこで知っておいてほしいことがあります。
 河合塾に例年入る浪人生の3割は、いずれかの大学に合格していながら、入学しなかったということです。
 途中で勉強をやめてしまい、入学直前に「やっぱり違う」と思い出したり、力が入らなくなって第1志望に不合格になってしまったりした例が多いのです。

 気持ちはよくわかるのですが、「やりきれなかった」「やり残した」と“合格浪人”を選ぶ先輩たちが結構多いということをみなさんに伝えたい。

 これから願書を出す時期ですが、「滑り止め」とは、合格するためではなく、入学するために受けるものです。合格は通過点に過ぎず、ゴールではないことを忘れないでください。
 

受験生にエールを送る河合塾の近藤治さん

「人生おわっていません」
 私は、共通テストの受験生を「勇者」と言いたい。

 「年内入試」と言われる総合型や推薦を選ぶこともできたのに、この時期まで逃げずにがんばり続けてきたからです。

 共通テストで失敗した受験生はつらいと思いますが、共通テストはゴールでも何でもないし、これで人生は終わりません。

 本当に悔しかったら、来年もう1回チャレンジしてやるぐらいの気概を持ち、盛り返していきましょう。
 

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