自販機設置やボドゲ振興を掲げる”政党”を吟味 中学校で30万円の使い道を考える選挙

2025年1月30日 18:22
去年12月、愛知県犬山市で、繰り広げられたアツい”選挙戦”。舞台となったのは、中学校です。学校をよりよくするため生徒自らが考え、取り組んだ”戦い”の結末は?
 朝の登校時間、校舎の前でチラシを配る生徒たち。

 「カードゲーム・ボードゲーム党でーす、号外です」

 自分たちで立ち上げた“政党”を猛アピール。

 実はこれ、生徒会の選挙ではありません。

 「30万円の使いみちを子どもたちの選挙活動で決める(活動)」(東部中学校 教員 藤田桃歌さん)

 題して「30万選挙」!

 犬山市では、それぞれの市立中学校に1年ごとに「30万円」を上限として予算をつけ、その使い道を生徒たち自身が決めるという取り組みを2023年度から始めました。
 

選挙の方法は、学校によって異なる

予算の使い道を決める選挙
 決まった予算内で何ができるのか?

 それを決める方法が、学校内での「選挙」なんです。

 「今、若年層の投票率が全国的に課題となっている中で、『主権者教育』というのが必要になってきている。模擬投票のみならず、政策を立案する。改善策を考えることが非常に重要になってくるため企画した」(犬山市選挙管理委員会事務局 山田春樹さん)

 選挙の方法は、学校によって異なります。
 

“有権者”は、全校生徒と教職員を含めて約370人

選挙活動は、クラスも学年も関係なし
 12月、選挙を実施した東部中学校。

 選挙活動は、クラスも学年も関係ありません。

 30万円の使い道の「アイデア」を公約とした“政党”を、生徒がそれぞれ立ち上げ、仲間とともに当選を目指します。

 「アイデアがあれば誰でも出馬できるというところにこだわっていて、例えばクラスで1つ(案を)決めて、プレゼンをしてという形だと、誰かの意見がなくなってしまうということがあるので」(藤田さん)

 “有権者”は、全校生徒と教職員を含めて約370人。

 過半数の票を獲得すれば、“当選”です。

 ただし、1回の投票で過半数を獲得した“政党”がいなければ、決選投票にうつります。
 

今回の選挙に正式に出馬したのは、6つの政党

6つの政党が出馬
 今回の選挙に正式に出馬したのは6つの政党。

 「簡易クーラー党です!」
 「夏は最近、体育館とか暑いから少しでも涼しくできるようにするためです」(簡易クーラー党 2年生)

 「部活動・受験応援党です!」
 「(各部活動や各クラスによるんですけど、自分は野球部なので野球部なら新しいネットを買いたいなと思っています」(部活動・受験応援党 1年生)

 他には、学校内で花火を打ち上げることを掲げた「BIGイベン党」に、自動販売機の設置を目指す「自販機党」、学校全体で楽しめるゲームの購入を訴える「カードゲーム・ボードゲーム党」などがあります。
 

選挙活動には、学校内で使える“通貨”が必要

選挙活動も、本物さながら
 選挙活動も本物さながら。チラシやポスターの作成のほか、校内放送でも政党のCMが流れるなど、本格的です。

 こうした選挙活動をするには学校内で使える“通貨”が必要で、それぞれの“政党”のほか、全生徒にもあらかじめ配られます。

 “支持者”を集めた“政党”は、生徒から通貨の寄付を受け、選挙活動にさらに力を入れることができるという仕組みです。

 投票日前には、“世論調査”も行われます。

 「世論調査の結果をお伝えしましょう」
 「BIGイベン党290票中116票、全体の39.9%を獲得」

 “世論調査”を受け、各“政党”も戦略を練り直します。

 支持が伸び悩んでいた“政党”2つが合流するなど、勢力図を変化させながら、激しい選挙戦が繰り広げられました。
 

実際の選挙で使われている投票箱を使用

生徒や教職員が思いを込めた1票を投じる
 そして迎えた投票日、当日。

 この日は実際の選挙で使われている投票箱が市から貸し出され、生徒や教職員が思いを込めた1票を投じます。

 しかし1回目の投票では、どの政党も過半数に届かず――

 「花火の打ち上げ」を掲げた「BIGイベン党」と「校内への自動販売機設置」を目指す「自販機党」による決選投票にもつれこみました。
 

当選した『BIGイベン党』

「30万選挙」を制したのは…
 その結果は――

 「『BIGイベン党』の勝利です」

 「30万選挙」を制したのは、BIGイベン党。その差はわずか12票でした。

 30万円の予算を使った、花火の打ち上げ。

 3月の実施に向け、急ピッチで準備が進められることになりました。

 「これまでめちゃ頑張ってきたので、努力が報われるというか。本当にうれしかったです」(BIGイベン党 3年生)

 「1・2年生は『すごい』と思ってくれたらいいし、3年生は卒業間近なので、思い出に残ってくれればと思います」(BIGイベン党 3年生)
 

2年生

生徒の目にはどう映った?
 この取り組み。生徒の目にはどう映ったのでしょうか。

 「中学生のうちから、身近に政治みたいなやり方に触れることができるのでいいと思います」(3年生)

 「将来、投票する時もこんな感じなんだなと」(1年生)

 「みんな『学校を変えてやるんだ』とか、『学校に衝撃を与えたい』とか、そういう気持ちが伝わってきて、いい企画だなと思いました」(2年生)

 「自分が社会に何かできると思う練習、何かをする練習を『学校』という一番身近な小さな社会で体験することができれば、大人になった時に、自分も何かする力があるとちょっとでも思ってもらえたら思っています」(藤田先生)
 

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