“トランプ関税”、東海経済に大きな影響か メキシコ進出の自動車部品メーカー会長「嵐が過ぎるまで待つ」

2025年2月3日 19:42
アメリカのトランプ大統領が25%の関税をカナダとメキシコからの輸入品にかける大統領令に署名し、混乱が広がっています。東海経済に影響はあるのでしょうか。

カナダとメキシコ、中国からの輸入品に関税・追加関税をかけるトランプ大統領

 3日の東京株式市場は朝から大荒れ。

 売りが売りを呼ぶ展開となり、日経平均株価は一時1100円余り値を下げました。
 
 その原因は「トランプ・ショック」。

 アメリカのトランプ大統領は1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税をかけ、中国からの輸入品にも10%の追加関税をかけるとする大統領令に署名しました。

 高関税の発動は大統領選のさなかから公言していたものの、「実際には見送られるのでは」との見方も出ていて、衝撃が広がりました。

 影響が大きいとみられるのが自動車産業です。

 日系メーカーの中にはメキシコやカナダに拠点を構え、アメリカに輸出する企業が多くあるためです。

「うかつなことを言うと怒られそうだが、うちもメキシコに工場がある。多少なりとも影響があると思う」(日本特殊陶業 川合尊 社長)

 エンジンプラグや排ガスの測定センサーをつくる日本特殊陶業の川合社長は、事業への影響は避けられないといいます。

「関税なので、できる限り適正な価格転嫁を図りながら、事業継続を図っていく準備を始めている。いきなりやられたので、パフォーマンスなのかわからないが、それに対応しなければいけない」(川合社長)

 先行きの不透明感が強まるなか、トヨタ自動車や日産自動車の株価は大幅下落して3日の取引を終え、日経平均株価の終値も先週末より1052円安い3万8520円となりました。
 

メキシコに拠点を持つ自動車部品メーカー「大同メタル工業」の判治誠吾会長

「日本にも関税をかけてくるのでは」
 「メキシコにも拠点を持つ自動車部品メーカーに来ています。メキシコからの輸品にかける25%の関税。どのように受け止めているのでしょうか」(上坂嵩アナウンサー)

 名古屋市中区に本社がある大同メタル工業。自動車エンジン向けの「軸受け」(ベアリング)をつくっています。

「自動車の3台に1台あるいは2.5台に1台は、当社の製品を使ってくれている」(大同メタル工業 判治誠吾 会長)

 日本国内を含めて、北米やヨーロッパ、アジアなどに拠点があります。

 メキシコにも工場を持っていますが、トランプ大統領が署名した関税引き上げの影響について判治会長は――。

Q.トランプ大統領が署名するのは想定していた?
「想定していた。もっと問題はメキシコ・カナダ以外の国、例えば日本もそうだし、もっともっと関税をかけてくるのではと想定しているし、心配しています」(判治会長)
 

大同メタル工業のメキシコ拠点(同社提供)

「耐えるのではなく、待つ」
 現時点では自社には大きな影響がないと語りますが、トランプ大統領の打ち出す政策に対しては「耐えるのではなく、待つ」と話します。

「消極的と考えるかもしれませんが、ここはじっと"嵐"が過ぎるまで待つのが、1番得策だと。あまり慌てて対応しないほうがいいと思いますね。建屋を立てて工場をつくって、設備を入れる。稼働を始めるまで2年かかる。工場稼働から2年経ったら、トランプ大統領以外の人が大統領になる。そうするともっと自由貿易になってきたら、またアメリカの工場をやめるのかと。そんなことでコロコロと変えるわけにはいかない」(判治会長)

 新たに拠点をつくっても、また大統領が交代すれば状況が変わります。

 部品メーカーとして商品に自信を持っているからこそ、「待つ」のだといいます。

「軸受け(ベアリング)というような機能部品、エンジンの中で使われるもの。こういうものを変えるには、テストをきちっとしないといけない。それには1年、2年かかってくる。変えるというのはそう簡単にはできません」(判治会長)

 「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領の政策が、本当にアメリカ国民のためになるのかにも疑問を持っているといいます。

「トランプ大統領になったら余計に物価が高くなる。自由貿易をどんどん続けて行かないと、市場が狭くなったら、それは人類にとってマイナスじゃないかと思います」(判治会長)
 

7日に日米首脳会談に臨む石破茂総理大臣

7日に控える日米首脳会談
「(関税引き上げが)いかなる背景に基づいてこのような決定がなされたか、それによってどのような影響が及ぼされるのかということは、よく私どもとして考えていかねばならないと思っている」(石破茂 総理大臣)

 7日に日米首脳会談に臨む石破総理。

 3日の衆議院予算委員会で、関税発動について「望ましくないと主張するべきでは」と問われ、影響を精査する考えを示しました。

 石破総理はトランプ大統領の矛先が日本に向かないよう、首脳会談で日本企業のアメリカでの投資実績を強調する考えです。

 とはいえ「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ大統領が、この先もどんな「ディール」(取引)を仕掛けてくるかは見通せません。
 

記者会見する中部経済連合会の水野明久会長

中経連会長「首脳会談で具体的な提案を」
 東海地方の経済団体トップは――。

「(メキシコとカナダ)両国に生産拠点・調達先を持っている中部の企業への影響はやはり大いに懸念されるところ」(中部経済連合会 水野明久 会長)

 トランプ大統領との首脳会談では、石破総理が両国にメリットとなる提案を打ち出せるかに注目しているといいます。

「首脳会談というのは国益と国益のぶつかり合い。意見交換であるので、日本国として何がメリットになるのか。win-winの関係に持っていくには何を一番提案するのがいいかをよくよく考えないといけない。具体的な提案まで首脳会談で出して話をするのがいいのではないか」(水野会長)
 

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