SNSを悪用した性犯罪が小学生にまで… 親や周囲はどうすれば被害に気づき、防げるのか

2025年3月25日 12:04
今や子どもにとっても手放せないコミュニケーションツールとなったSNS。それに伴い、SNSをめぐるトラブルは年々、低年齢化が進んでいます。

子どもにも手放せないコミュニケーションツールとなったSNS(資料映像)

 愛知県長久手市で、SNSのリスクを学ぶ特別授業が開かれました。

「悪い人は、本当の自分を隠してだましやすい子どもをさがしています」
「そういう悪い人は優しい言葉で話しかけて、なんでも話を聞いてあげることで信頼できるいい人だと思わせます」
「でもこういう人たちの本当の目的は、子どもを自分の思い通りに操ること」

 授業を受けているのは、小学生です。

 モバイル社会研究所が去年11月に行った調査では、自分専用のスマートフォンを持っているという小学6年生は6割以上に。

 関東地域に限った調査では、年々その所持率は増加傾向にあるといいます。

 今回、小学校での特別授業が企画された背景も…。

「これまで中学生を対象とした教室を開催していたが、SNS利用やスマートフォン所持の低年齢化がだいぶ進んできたので、小学校高学年向けの教室も必要であると考えた」(愛知県警 少年課 秋沢徳明 課長補佐)
 

SNSをきっかけに犯罪に巻き込まれた小学生は急増している(警察庁による)

性犯罪の手口を紹介し、子どもに考えてもらう
 特別授業では、具体的な事例を紹介して、どう対応すればよいのか、子どもたち自身に考えてもらいます。

「ねぇFちゃんの顔見たいな。写真送ってよ!」

 インターネットで知り合った相手から、下着姿の写真を求められたFさん。

 断り切れずに自分の下着姿を送ってしまい、結果的にインターネット上に拡散されてしまいました。

「(相手の)Gさんは女の子ですが、もしかしたら悪い大人で、自分のことを”女の子”だと嘘をついていることがあります」

 警察庁によりますと、去年、SNSを通じて性犯罪などの事件に巻き込まれた18歳未満の子どもは1486人。その数は減少傾向にはあると言いますが、目立つのは、被害者の「低年齢化」です。

 10年前は小学生の被害は35人でしたが、昨年度は136人に。4倍近くにはね上がっています。

 早いうちから求められる、子どもたち自身が「SNSのリテラシー」を学ぶ機会。

「最近携帯を買ってもらったんですけど、新しくLINEの友達もできた。メールの使い方には気を付けようと思いました」(小学6年生)

「いまSNSとかインターネットをやっていない人の方が少ないと思うんですけど、そこでの1つの行動が命取りになったり大きなことにつながってしまうと思うと、本当に気を付けなければいけないなと思う」(小学6年生)
 

父親らが加害者として逮捕される事例も起きている(画像はイメージ)

「家庭」が犯罪の舞台となる場合も
 しかし、SNSをめぐる犯罪の状況は複雑化しています。

 本来なら、子どもを守るべき「家庭」が犯罪の舞台となる場合も。

 捜査関係者によりますと、娘に性的暴行を加える様子を撮影した動画をSNSのグループ内で共有したなどとして、3月までに父親ら30代から50代までの男7人が、不同意性交等や児童ポルノ禁止法違反の疑いで愛知県警に逮捕されています。

 うち1人が罰金40万円の略式命令を受け、5人が起訴されているということです。

 SNSのグループのメンバーは10人程度で、「4歳の頃から手なずけている」「ママに言ったらパパといられなくなるから秘密にできる?で大丈夫でした」などの投稿が見つかったということです。
 

福井裕輝医師が挙げる、性犯罪に遭った子どもが訴える症状の例

専門家「子どもを注意深く見てほしい」
 子どもへの性暴力加害者の治療に長年携わってきた、福井裕輝医師は。

「SNSを含めたさまざまな新しいツールが、人間関係や情報へのアクセスを変えたところがあって、簡単に性的な画像や文章を送信したり見たりできる。(新しいツールは)いろいろなものを発展させる側面もあるが、一方で子どもが事件に巻き込まれる可能性が非常に増えている。子どもたちだけの心がけでは防げないし、早期発見できない」(性障害専門医療センター代表理事 福井裕輝 医師)

 また福井医師は、子どもの様子を注意深く見ることで、声にならない助けに気付くことができる可能性を示します。

「子どもが性被害に遭うと体の症状を訴える。例えば腹痛とか頭痛とか、行動上にもろもろ現れる。家を出て行って夜遊びが増えたり、性的逸脱行動(多くの異性と関係を持つ)、うそが増える。異変があった場合にはもしかしたら被害にあっているんじゃないかという直感みたいなものを、常に持っておいてもらうことが重要」(福井医師)
 

三輪記子弁護士

SNSの規制は?弁護士の見解
 SNS自体の規制はできないのでしょうか?弁護士の三輪記子さんの見解は。

「プラットホーム側にもう少し責任を課していくべきだと思う。すぐにあなたがどこの誰か分かってしまう、そういう仕組みがあれば一定の歯止めになるかもしれない。ただ一方で通信内容を全部チェックするのはおかしい。『通信の秘密がない』ということになるので、実際に対策を求めるのはなかなか難しい側面がある」(三輪弁護士)

 では一体どうしたら、SNSを通じての性犯罪から子どもを守れるのでしょうか。

「どういう状況でどういう被害が起こるのか、あるいは加害が起こるのかをもっと知って、自分で自分のことを守る。知り合いのことを守ることをやっていかなければいけない。(性被害の)相談窓口がたくさんあるということを伝えていかなければいけない」(三輪弁護士)
 

子どものスマホには「フィルタリング機能」の活用を

「フィルタリング機能」で防げる可能性
 被害を防ぐために、スマホの「フィルタリング」機能を利用する方法もあります。

 子どもがスマホ内でできる操作を部分的に制限する仕組みです。

 警察庁によりますと、去年、SNSをきっかけとした事件に巻き込まれた801人のうち、9割がフィルタリング機能を使っていなかったことがわかっています。

 フィルタリング機能を利用していれば、被害に遭うリスクを減らすことができるという見方もできそうです。

 そして万が一、性被害に遭ってしまった場合の相談先は、全国共通番号「#8891」。

 各県に設置されている性犯罪・性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター」です。この番号で、最寄りのセンターにつながります。

 携帯電話、NTTアナログの固定電話からかければ、通話料は無料です。
 

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