伊勢・五十鈴川がカラカラに…水がなく川を“横断”する人も 原因の一つは“雨不足” 地元住民「珍しい」

2025年4月11日 17:05
サクラの見頃もそろそろ終盤。三重県伊勢市では、サクラとともに人々に親しまれているあの清流が、いつもとは違う姿になってしまっています。
 三重県伊勢市の桜の名所で知られる「五十鈴川」。

 今年も、たくさんの桜が咲き誇りました。

 この時期、川の周辺では「桜まつり」も開かれ、せせらぎに耳を傾けながら桜を楽しめるのですが、今年は水が干上がっているという「異変」が。

 五十鈴川の一部には、川の“面影”がないところも――

 川を管理する三重県によると、取材した9日の水位は「7センチ」。

 過去の4月の平均水位と比べ、圧倒的に少ないのが分かります。

 例年、冬は水位が下がり、4月になると上がるといいますが、今年はまだ戻っていないといいます。
 

川の水がないため、川を“横断”する人も

川の水がないため、川を“横断”する人も…
 川の水がないことから、川を“横断”する人も見られます。

 この五十鈴川の姿を見た人たちは――

 「流れていないからあれー?と思った」(三重・桑名市から)

 「見た感じ水位が減っているなと思っていて、きょうも上から見ておかしいなと思った」(名古屋市から)

 「うんと昔の話になるけど、ここを泳いでいたからそれに比べると…。歩いて渡れるというのは珍しい」(地元の人)
 

五十鈴川は伊勢神宮の内宮を流れており、身と心を清める参拝者も多い

五十鈴川は、伊勢神宮の内宮を流れる
 五十鈴川は、伊勢神宮の内宮を流れています。

 五十鈴川を「御手洗場」として手や口を洗い、身と心を清める参拝者も。

 秋には神宮に新米を奉納する「初穂曳」が行われるなど、信仰の場でもあります。

 「(参拝は)神聖。心がほっとしました。(訪れるのは)2年に1回くらいかな。(水が)ちょっと少ないねって思いました」(大阪から)
 

伊勢人力車 竜笑 前田竜さん

数年前から感じる五十鈴川の変化
 40年近く伊勢で暮らし、現在は内宮周辺で人力車の車夫をしている前田さんは、数年前から五十鈴川の変化を感じていました。

 「数年前から比べると、はるかに水の量が減っていて寂しい状況が続いています。この時期は桜がきれいなので、川沿いに行ったりするので、観光客の人にも水の量が少ないというのは見てもらったら分かる。『五十鈴川ってこんなに普段から少ないの?』と聞かれるので、『昔は違ったよ』とお答えしている。清流五十鈴川はすごく美しいので、その光景が見られなくなるのを懸念している」(伊勢人力車 竜笑 前田竜さん)

 この原因の一つは、やはり雨不足。

 伊勢神宮に近い気象庁の観測地点の降水量をみてみると、10日までの60日間の合計が平年の47%しかないことがわかります。
 

「瀬切れ」により、ウグイなどの魚が産卵できない可能性も

清流の生きものへの影響も
 今回取材したのは、伊勢神宮の宇治橋から直線距離で約800mほどの場所で、川の両側に、市営の駐車場があるあたりです。

 川の干上がりについて専門家は、清流の生きものへの影響も心配しています。

 魚など生き物への影響について、三重大学大学院で淡水魚の生態を研究している淀太我教授によると、川の一部で川幅全体が干上がってしまう状態を「瀬切れ」といいます。

 この瀬切れの状態になると心配なのは、「この時期に産卵する魚」への影響です。

 例えば、五十鈴川にも生息する「ウグイ」という魚は、伊勢・鳥羽あたりでは多くが川で生まれ、海へ下り、この時期に産卵のため川へ戻ります。

 そこで必要なのが、「十分な川の水量」です。

 魚は「菜種梅雨」と呼ばれる3月下旬~4月の雨で、川の水が増えるを待って戻るそうですが、今のように川の水が少ないと、川に戻ることができずに産卵することが難しくなるそう。

 またアユもこの時期に海から川へ遡上してくるため、この状況では上ってこられないといいます。

 これから夏にかけて雨が多くなる季節ではありますので、徐々に川の水位が上がることを期待したいところです。
 

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