住宅の耐震チェックをしていますか?「耐震基準」と「耐震等級」の関係【暮らしの防災】

2024年12月29日 14:01
「地震・津波から身を守ろう」「南海トラフ地震に備えよう」の出発点は、住まいの耐震対策です。建築物の地震への強さを示す基準として「耐震基準」があります。耐震基準は何度か見直しが行われていて、より厳しいものになっています。また、最近は「耐震等級」という指標も導入されています。「耐震基準」と「耐震等級」の関係についても紹介します。

住宅の耐震

<旧耐震基準>
 日本の建物の耐震基準は建築基準法に基づいています。これは建物を建築する際に最低限満たさないといけない基準で、大地震があるたびに見直しが行われてきました。

 その大きな節目は、1978年宮城県沖地震の経験も踏まえて行われた1981年6月の改正で、それ以前を旧耐震基準、以降を新耐震基準と呼びます。(※以降「旧耐震」「新耐震」とします)

 旧耐震は中地震に対して、家屋が損傷しないという基準です。また、大地震に対する設計が十分なされていませんでした。(※建築確認済証の交付日が1981年6月1日以降の建物は新耐震)
 

旧耐震基準と新耐震基準

<新耐震基準>
 新耐震は、現在適用されている基準で、震度5弱から5強程度の地震に対しては損傷を防ぐ(機能維持)、震度6弱から6強程度の大地震に対しては、損傷は許容するが倒壊等を防ぎ人命を保護する(人命保護)という考えに基づいています。

 このように耐震性に関する規定は厳格化されています。1995年の阪神・淡路大震災では、新耐震で建てられた建物で、倒壊・崩壊したものは旧耐震に比べてかなり少なかったとされています。

<2000年基準>
 2000年基準は阪神・淡路大震災を受け、木造住宅における新耐震基準をさらに厳しく改正した耐震基準です(※建築確認済証の交付日が2000年6月1日以降の建物が2000年基準)。大きく、以下の3点が強化されています。

 1.地盤に応じた基礎設計
 2.基礎と柱の接合部に金具の取り付け
 3.耐力壁のバランスと配置
 この改正で、木造住宅の耐震化が一層強化され、耐震性能が向上しました。

<既存不適格>
 すでにある建物が法令の改正などで違法建築物とならないよう、新たな規定(ルール)を施行する時は、既存の建物には新たな規定を適用しません。これを「既存不適格」と言います。

 ですので、耐震基準が見直され強化されても、それまでに建てられた建物がその新しい基準を満たしていなくても「違法建築物」にはなりません。但し、原則として増改築等を実施する機会に当該規定に適合させることとしていますので、早めに耐震改修工事をすることをお勧めします。
 

「耐震診断」などは一部補助金が出る自治体も

<公費負担>
 自分が住んでいる家が耐震基準を満たしているかどうかの「耐震診断」や、「耐震改修工事」については、自治体によっては、一部補助金が出ます。まずは、お住まいの市町村に相談してください。

<メディアとしての反省>

 ここでメディアとしての反省を記します。メディアは被災状況を伝えるために、激しく損壊した建物・住宅を中心に映像展開します。しかし災害現場に行くと、道1本隔てて片側は全壊、反対側はほぼ大丈夫とか、お隣同士で家の被災状況がまったく違うことがよくあります。

 このような場合、私たちは「被災状況の大きい家」を取材して伝えます。「大丈夫だった家」も取材しその理由を伝えれば、どうすれば次の被害を減らせるのかを考えることにつながるのですが、多くの場合そのような取材はしません。

 被害が大きくなった理由はさまざまで、一概には言えません。そこに住んでいた人に瑕疵があったとは言えません。大丈夫だった理由も同様です。ただ、いずれにも「減災への教訓」があるはずです。そこをきちんと伝えなければいけないと考えます。
 

耐震等級

<耐震等級>
 「耐震等級」は、建物の耐震性能を表す指標です。2000年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいています。住宅を購入する人が客観的に住宅の性能を知ることができるようになりました。

 耐震性能は「等級1」から「等級3」までの3段階で、「等級1」は建築基準法レベルの耐震性能を満たす水準です。

□耐震等級1 
 建築基準法で定められたこれまでに紹介した「耐震基準」と同等の基準です。震度6強程度の地震に対して倒壊や崩壊しないものです。これから建物を建てる場合、最低でも「耐震等級1」を満たしていなければなりません。

□耐震等級2
 「耐震等級1」の1.25倍の耐震性があることを示します。「耐震等級1」の1.25倍の力がかかっても、倒壊・崩壊しない程度の強度となり、大地震にあっても損傷の軽減が期待できます。

□耐震等級3
 「耐震等級1」の1.5倍の耐震性があることを示します。この3つの中で耐震性が最も高いレベルです。

 この「住宅性能評価」は国土交通省に登録された住宅性能評価第三者機関が、設計図書の審査や施工現場の検査を行って評価します。登録住宅性能評価機関は、国土交通省のHPなどで確認できます。

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 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕
 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。
 

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