南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が出たらどうすれば 「地震への備えの再確認」【暮らしの防災】

2025年4月20日 14:02
年度末となる2月~3月は、研究者や専門家による1年間の研究成果・活動報告を発表するシンポジウムや発表会が行われます。災害関係のシンポジウムでは2024年8月の「南海トラフ地震臨時情報(※以降、臨時情報)」についての発表が注目を浴びました。 臨時情報を出すことを決めた「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会(※以降、検討会)」の委員の方も参加しました。そこで「どういう考えで臨時情報を出したのか」「発表したら、このような対応を期待していた」などの説明がありました。臨時情報が発表されたらどうすればいいのか、具体的な説明もありました。私はそのシンプルさに驚きました。

出典:気象庁HP

南海トラフ地震臨時情報とは
 2011年3月11日の東日本大震災の反省から、臨時情報が作られたそうです。2日前の3月9日午前11時45分に三陸沖を震源とする地震がありました。これは後に「前震」とわかります。しかしこの「前震」を見逃し、不意打ちで「本震」に襲われました。2度と見逃してはいけない!そんな思いから「臨時情報」を設けたそうです。

 臨時情報は気象庁が発表します。南海トラフで大規模地震が発生する可能性が高くなっていることなどを伝える情報です。想定震源域とその外側(監視領域=図の黄枠部)で、「異常な現象」が観測された時に検討会が開かれ、その現象が基準に達していた場合に発表されます。この情報には4種類あります。

【調査中】 
 監視領域内でモーメントマグニチュード6.8以上の地震が発生するなどした場合。
【巨大地震注意】
 監視領域内で、モーメントマグニチュード7.0以上の地震が発生したと評価した場合。もしくは、プレート境界面で通常と異なるゆっくりすべりが発生したと評価した場合。
【巨大地震警戒】
 プレート境界で、モーメントマグニチュード8.0以上の地震が発生したと評価した場合。
【調査終了】 
 巨大地震警戒、巨大地震注意のいずれにも当てはまらない現象と評価した場合。

※「モーメントマグニチュード(Mw)」は、世界の機関で使われているマグニチュードです。日本は津波警報をいち早く出すために開発した「気象庁マグニチュード(Mj)」を、普段は使っています。検討会では、世界の機関のデータを参考・比較で使うためにMwを用います。
※「臨時情報」について、より詳しく知りたい方は気象庁HPをご覧ください。
 

気象庁の会見(2024年8月8日)

巨大地震注意とは
 2024年8月8日16時43分頃に日向灘でMw7.0の地震がありました。検討会は、南海トラフ地震の想定震源域で、新たな大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると考えられると評価し、気象庁は「臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。そして国は、今後もし大規模地震が発生すると、「強い揺れ」や「高い津波」が生じると考えられるとして「特別な注意の呼びかけ」を行いました。

 1週間後、この「呼びかけ」は終わりましたが、これは特別に呼びかける「期間が終わっただけ」です。大規模地震の発生の可能性が高まった状況は、いまも続いています。
 

巨大地震注意が出たら どうすれば

巨大地震注意が出たら どうすれば
 国は「社会は経済活動を継続・住民は日常生活を行いつつ、臨時情報発表から1週間は、日頃の地震への備えの再確認と、すぐに逃げられる姿勢で就寝、非常持ち出し袋を常時携帯する」など、特別な注意の呼びかけを行いました。

 みなさん「何をすればいいのか」と、戸惑われたかと思います。

 具体的にどうすればいいか、シンポジウムで検討会の委員から以下のことが説明されました。
・家具の固定
・津波避難場所の確認 避難経路の確認
・非常食などの備蓄の確認
・家族との連絡手段の確認などをする

 特に海沿いや河口部に住んでいる人は、津波から避難しなければいけないので、「避難場所」「避難経路」の再確認が一番重要としていました。

 えっ、これだけでいいの?と思いますよね。いいそうです。それはなぜか。実はこれ「人・地域・企業・自治体が、普段からシッカリ備えている」ことが前提だったのです。だから「日頃からの地震への備えの再確認」という表現にしたそうです。

 つまり「日頃から備えていれば、特に新しい対策をする必要はなく、その再確認でOK」なんです。当然、「日頃から備えていない場合」は、上記対策を一からする必要があります。日頃からの備えが大切です。

 避難所を開設したり、高齢者が避難したりなど、さまざまな対応もありましたが、それは「訓練」でもあるので、過剰反応ではないそうです。

 南海トラフ巨大地震は、いつ来るかわかりません。不意打ちで突然来るかもしれませんし、臨時情報の「巨大地震注意」や「巨大地震警戒」が発表されてから来るかもしれません。いずれにしても「備え」をしておくことが、被害を減らす最善の対策です。

    ◇

 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕
 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。
 

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