学校以外の居場所作りで輝く個性 「15分単位でお給料払います」不登校の中学生が活躍するカフェ
2023年9月8日 07:36
全国で増え続ける「不登校の子どもたち」。いま、学校以外の居場所が広がっています。TikTokで自己表現!さらに、不登校の中学生が活躍するカフェとは。
カフェで働く中学3年生のあやねさん
全国で増え続ける、不登校の子ども。
2021年度は小中学生で約24万5千人にのぼりました。
なぜ、これほど多くの子どもが学校に行けなくなっているのでしょうか?
2022年、不登校の時期があったという女の子は――
「学校の近くに行くと、おなかが痛くなってきて震えてきて、ちょっと嫌なことがあると、めちゃ泣きたい気分になった」(去年不登校だった小学5年生)
不登校の理由として、約半数の子どもたちが挙げたのは「無気力・不安」。
「いじめ」や「友人関係」、「勉強」「親子関係」など、はっきりとした理由を答えた子どもを大きく上回りました。
フリースクール「たんぽぽ」
「好きなコト」を見つけてもらうきっかけ作り
名古屋市中区にある、フリースクール「たんぽぽ」。
9月、新学期が始まったばかりのこの日も不登校の小中学生、約10人が集まっていました。
来ている子はどんな子が多いのでしょうか。
「繊細な子。大きい音が嫌いで、ボソボソと誰かが話しているのを見ると、自分のことをうわさされている気がしてしまう。自分はダメだってなっちゃう子が多い」(フリースクールたんぽぽ 森美智 理事長)
たんぽぽでは、自分に自信を持てない子どもたちにひとつでも「好きなコト」を見つけてもらおうと、きっかけ作りをしています。
フリースクール「たんぽぽ」のゲームの部屋
自分のペースで勉強 学校へ戻る子も半数以上
「ゲーム」の部屋では――
西尾アナ:「何して過ごしているんですか?」
小学5年生「ほとんどマインクラフト」
西尾アナ:「ここ来たらいつもそのゲームをやっているの?」
小学5年生:「朝からずっと。マイクラでこんなゲームがあるんだって知ったから」
西尾アナ:「たんぽぽに来ていなかったら出会えなかったね」
勉強に夢中だという小学6年生。
「小学校は休み時間になると、黒板消しの担当が消しちゃうから、早く書かないとダメ。ついていけない」(小学6年生)
ここでは、教員免許を持ったスタッフのサポートのもと、自分のペースで勉強を進めています。
さらに、教育委員会と連携している「たんぽぽ」での学習は、学校の出席日数として認められるんです。
「たんぽぽは好きなことができる。やりたいことができる」(小学6年生)
たんぽぽで「好きなコト」を見つけ、自分に自信をつけた子どもたち。
学校へ戻る子も、半数以上いるそうです。
「学校に通えるなら通ったほうが良い。まだ無理なら無理で良い。それは自分たちで決めれば良い。子どもの中で何かしらの目標というものがある、言わないけど。親が思うより子どもって大人びている。しっかり考えている」(森理事長)
不登校動画選手権 最優秀賞 あうるの森(TikTokより)
TikTokで自身の考えなどを表現
学校に行けない気持ちを自分で作った動画で表現している子どももいるようです。
8月には「不登校生動画選手権」が開催されました。
不登校を経験した子たちがTikTokで自分の気持ちや考えを表現する動画コンテストで、全国から352作品が集まりました。
イベントを主催したのは、全国不登校新聞社の代表、石井志昂さんです。
「動画という手段が色んな表現を内包できる。一番伝えたいのは、不登校の本人なんですけど、あなたの不登校は価値のあるものに変わるんだと伝えたい」(全国不登校新聞社 石井志昂 代表)
コンテストをきっかけに、「今まで聞けなかったことを親に聞いてみた」という不登校生もいました。
石井さんは、子どもたちに合った環境づくりは大人の使命だと考えています。
「学校の中で苦しんでいれば、その学校は合っていない。合っている場所が本人の力を一番発揮できる場所である。不登校の子どもたちにどう接したら良いかというのは、本人たちが笑顔になる場所。笑顔になる環境を周りが育ててあげることが一番だと思う」(石井代表)
入賞作品(TikTokより)
子どもたちに合った環境づくりが大人の使命
また、コンテストをきっかけに、「今まで聞けなかったことを親に聞いてみた」という不登校生もいました。
石井さんは、子どもたちに合った環境づくりは大人の使命だと考えています。
「学校の中で苦しんでいれば、その学校は合っていない。合っている場所が本人の力を一番発揮できる場所である。不登校の子どもたちにどう接したら良いかというのは、本人たちが笑顔になる場所。笑顔になる環境を周りが育ててあげることが一番だと思う」(石井代表)
カフェで働く中学3年生のあやねさん
カフェで働くのは不登校の中高生
愛知県春日井市にあるカフェ「ワンぽてぃと」。
見た目は、普通のカフェのようですが――
「スタッフが不登校の人とは聞いています」(50代)
「すごいなと思う。受け入れ先になっていて」(40代)
スタッフとして働いているのは、不登校の中高生なんです。
そのひとりが中学3年生のあやねさんです。
「小学生のときに1回学校に行けなくなって。中学生に上がってから、同年代の子たちとあまり合わなくなった。中学1年生の秋ごろから行けていない。ここは働きやすい環境。加奈さんが優しくて」(あやねさん)
カフェに不登校の子どもを受け入れているのがオーナーの小栗加奈さんです。
「娘が小学6年生のころから不登校気味。将来この子を受け入れてくれるアルバイト先はあるのかと思ったときに、ないのではと思った。そういう子たちが世の中にいっぱいいるのではと思い、そんな子たちが一歩踏み出せる場所をつくりたいなという思いで始めた」(ワンぽてぃと オーナー 小栗加奈さん)
高校生の給料は15分247円、中学生はスタンプ20個で1000円分の図書カードなどに交換
不登校生が働きやすい勤務システム
「カフェの仕事を社会に出る一歩へ」。
小栗さんは、学校に行かず家にこもりがちな子どもでも出てきやすいよう、特長的な“勤務システム”を導入しました。
「『15分単位でお給料払いますよ』と。何時に来ても良いし、何時に帰っても良いよというシステムです」(小栗さん)
勤務は、最短15分から可能です。
「なるべくこのカフェをつくるときに、ハードルを下げたいよねと。15分単位だったら、10分働いてあと5分と考えられる。ちょっと頑張れるかも!という思い」(小栗さん)
「シフトを出したり『この日に必ず来てね』もない?」(西尾アナ)
「ないです。来たときにできることをやってもらう感じです」(小栗さん)
高校生の給料は、15分247円。
「お手伝い」として働く中学生にはスタンプカードを配り、20個で1000円分の図書カードなどに交換しています。
ワンぽてぃと オーナー 小栗加奈さん
「その子のタイミングで学び直しはいつでもできると思う」
働き始めて約1年のあやねさん。
以前よりも積極的に行動できるようになったそうです。
いま学校になかなか行けない子どもを持つ家族にどんな言葉を掛けたいのか、オーナーの小栗さんに聞きました。
「進学しなきゃいけないんだよ!高校どうする?とか、どこに行きたいの?とか、追い詰める言葉を掛けてあげないほうが良い。その子のタイミングで、学び直しはいつでもできると思っている。」(小栗さん)
あやねさんは、このカフェで働くことで、将来の目標ができたんだとか。
「将来は加奈さんみたいに、困っている子どもたちが少しでも楽になれるようなことができたら良いなぁと」(あやねさん)
(9月7日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)