秋の味覚サンマ、今年も細くて小ぶり 専門家「エサが少ないこと」が一つの原因
2023年9月12日 19:02
秋の味覚、サンマですが2022年に続いて、今年も、小ぶりなんです。今後はどうなるんでしょうか?
名古屋市中央卸売市場で競りに出されたサンマ
夜明け前、午前3時過ぎの名古屋市中央卸売市場。
午前4時を回り始まった、サンマの競り。
12日は北海道産を始め、約900ケースのサンマが競りにかけられました。
次々と買い手が決まっていきますが、サンマを見定める仲買業者に12日のサンマの状態を聞いてみると――
「去年に続いて全然ダメです」(仲買業者)
「小さい、ちっちゃいね」(仲買業者)
仲買業者によると、8月の初競りと比べると、大きいサイズも入荷されつつあるものの、2022年に引き続き、比較的小ぶりのものが多いといいます。
「小さくて90gから大きいものは150グラムから160グラムまで幅広くは入荷していますけど、全体には細かいサイズが水揚げされています。去年なかった100グラムをきるサイズも入荷しているので、数量的には多くなっているかもしれないです」(名古屋海産市場 小平隆二さん)
サンマの不漁に加え、燃料費の高騰が追い打ちをかける
20隻ほどあったサンマ漁の船も現在は3隻のみ
一方、古くからサンマ漁が盛んで「サンマのまち」として知られる三重県熊野市。
例年、11月ごろから熊野灘沖でサンマ漁が始まります。
水揚げされたサンマを丸干しにする光景は、まさに冬の風物詩でした。
年明けには地元の人たちにサンマを振る舞うお祭りが開催されるなど常に身近にある魚でしたが――
「去年もゼロ。取れないというのが4~5年続いている」(熊野漁協 浜田徳光組合長)
最盛期には20隻ほどあったサンマ漁の船も現在は3隻のみ。
サンマの不漁に加え、燃料費の高騰が追い打ちをかけ、今シーズンも厳しい見通しです。
「北海道とかで取れたサンマで丸干しも出来るけど、やっぱりいいものができない。ここで取れるサンマは丸干しに1番適した脂がほどよく抜けた、ここ特有のサンマ。サンマ漁ができる状況だといいんだけどね。悪い条件ばかり重なっている」(浜田組合長)
名古屋市内のスーパーではサンマは1匹税込み162円
サンマの価格を抑えられるのは大量に仕入れること
名古屋市内のサンマの仕入れに力を入れているスーパー。
お客さんが次々とサンマを袋に入れていきます。
12日販売されているサンマは1匹税込み162円。
2022年9月下旬に取材したときは1匹240円。
12日のほうが約80円安い価格です。
サンマを購入した人は――
Q.150円の値段を見てどう?(石井祐里枝アナ)
「安くなってきたなと思う」(サンマを購入した客)
Q.サンマっていくらぐらいのイメージ?(石井アナ)
「今だと1本300円ぐらい。この値段で買えたらうれしい」(サンマを購入した客)
ここまで価格を抑えられた理由は、大量に仕入れることにあるそうです。
「今、サンマが旬なので、より多くの人に食べてもらいたい。利益は薄いが利益をとらず、たくさんの人においしいサンマを今のうちに食べてほしい」(ウオダイプラス 鈴木隼介副店長)
ウオダイプラス 鈴木隼介副店長
昔と比べると、高い傾向が続くサンマの価格
今が旬ですが、ひと昔前のサンマを知る人は――
「昔は100円前後だったかな、ちょっと高くなったね、前よりも」(サンマを購入した客)
昔と比べると、高い傾向が続くサンマの価格。
さらに――
「昔のほうが大きかったかな」(サンマを購入した客)
市場全体でも小さめの傾向にあるというサンマの大きさ。
仕入れる際は大きさを重視しているといいます。
「おいしく食べられるサイズか見て判断している。おいしいものしか買っていない」(鈴木副店長)
そんな今年のサンマの特徴は――
「脂のノリは大変良く。お客様からも『おいしかった』という声が届いています。おいしいサンマです。今は塩焼きで脂のノリを楽しんでいただきたいです」(鈴木副店長)
サンマ開き(825円)
居酒屋では仕入れ値の安い干物でサンマを提供
一方、名古屋・栄で店を構えて13年目を迎える居酒屋「和食の森」。
サンマは、こちらでも――
「きょうはたまたま長いものが入ったがやはり細い。去年くらいから細くなっていて、ちょっと見栄えが悪いですね」(和食の森 店主 森喜久治さん)
さらに、値段も去年より上がっているといいます。
「生のサンマを3本ほど仕入れたが1匹400円近い。販売価格が1000円を超えてしまう。お値打ちの居酒屋でやってるので1000円を超える商品はなかなか売れない」(森さん)
値上がりを受け、出しているメニューがあるそうです。
「サンマの開きになります」(森さん)
少しでもお値打ちに食べてもらいたいと、仕入れ値の安い干物でサンマを提供しているそうです。
和食の森 店主 森喜久治さん
手の届かない存在になりつつあるサンマ
しかし、その干物にも不安が――
「去年、実は160円くらいで干物が入ってきていた。今年は280円で来年はどうなってしまうのかなという感じ。来年は干物も使えないかもしれないです」(森さん)
ますます手の届かない存在になりつつあるサンマ。
しかし、秋の味覚はサンマだけではありません。
「秋ですと、きのこも入れて秋の野菜と肉料理に力を入れたいかなと思っています」(森さん)
生息場所が沖合になったことで漁獲量が減った
サンマが細くなったのは「エサが少ないこと」が原因の1つ
なぜ、サンマは細くなってしまったのでしょうか?
専門家に話を聞きました。
「1つはエサが少ないことは最近わかってきて、それに伴ってサンマは小さくなり、痩せてきています」(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 冨士泰期さん)
エサが少ない原因はよく分かっておらず、2024年以降の見通しも立てづらいといいます。
また、漁獲量自体も減っていて、これは生息する場所が沖合に移動していることが一因だといいます。
「サンマの子どもを広い範囲でとってきて、成長具合をみると、沖にいくほど悪くなっていく。サンマにとって日本から離れた海域は、必ずしもあまり良い状況ではない」(冨士さん)
(9月12日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)