危険な状況になる前に「早期避難」 ハザードマップを活用して地形の理解を【暮らしの防災】

2024年8月18日 14:01

災害のとき、行政機関やメディアは 「危険な場所から逃げて下さい」「避難してください」と言います。「避難」とはその文字のごとく"難を避けること"です。今回は災害が発生する前に避難する「事前避難」について考えます。

危険な状況になる前に安全な場所に行く

避難=”避難所へ行く“だけではない

 少し前までは「避難とは避難所へ行くこと」でした。しかし、豪雨の中を家族で自宅から避難所に歩いて行く途中に、溢れた用水に流されて死亡するという痛ましい事故がありました。

 夜中に突然の豪雨で、自宅から避難所まで暗くて危なくて行けないなどの事態も頻発しています。

 今、避難とは「危険な状況になる前に安全な場所に行くこと」とされています。

 

「危険な状況になる前」とは?

「危険な状況になる前」とは?

 最近、豪雨はなぜか深夜や未明に発生します。線状降水帯の発生も暗くなってからのケースが多いです。その理由はわかっていません。

 深夜では避難所に行けませんし、危険を知らせる自治体からのエリアメールの着信音にも気づきません。

 そこで、気象庁は夜〜明け方、翌日に豪雨の恐れがある場合、夕方に危機感を伝える情報を出すようにしています。これが「危険な状況になる前」です。

 情報発信が雨の降り出しよりかなり早いことなどから、豪雨にならない可能性もあります。しかし「万が一!」があります。早い段階・明るいうちの早期避難です。

 

「水平避難」と「垂直避難」

「安全な場所」とは?

 水害、土砂災害を例に考えます。水平避難=避難所に行くこと(水平移動)、 垂直避難=住宅などの上の階に行くこと(垂直移動)をいいます。

 豪雨や洪水で家が浸水する恐れがある場合、避難先は指定避難所に行く(水平避難)のほか、自宅の上層階に移動すること(垂直避難)が推奨されています。

 平家の人はご近所の家の上層階、集合住宅の1階に住んでいる人は2階以上の知人宅への避難になります。

 土砂災害も同様で、指定避難所に行く場合と、住宅の崖側でない上層階への避難となります。但し、大規模土石流の可能性がある場合は「早めに避難所へ行く」=「早期避難」に越したことはありません。

 避難所への道は、川(橋)や崖を避けます。

 

「安全な場所」はハザードマップで 確認を

ハザードマップの活用を

 価値観や生活形態の多様化から人の活動範囲が広がり、「家を建てる場所」が変わってきています。また昔の人が家を作らなかった場所が住宅地になっているケースもあります。

 以前は安全だった場所も、開発が進み環境が変わり、安全とは言えなくなっているケースもあります。

 どこが「安全な場所」かは、行政機関が出している「ハザードマップ」で 確認できます。避難所も示されています。

 ハザードマップには「地震」「津波」「水害」「土砂災害」と各種あります。

 災害の種類によって「避難場所」が違うケースもあります。ハザードマップで、自宅の安全さの確認、避難所の確認、避難所までのルートの確認、そして早期避難ができなかった時に、 どこに避難すればいいか、家族で話し合っておきましょう。



 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕
 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。

 

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