名古屋名物!?ドラゴンズ中田翔も驚きの “バスレーン” 複雑ルールで交通事故や違反も 運転時は注意を

2024年10月1日 06:01

名古屋市では、全国で唯一、バスを“道路の中央”で走らせるという「特異なバスレーン」が存在します。中日ドラゴンズの中田翔選手も驚いたと話すこの交通システム、導入の背景や問題点を取材しました。

名古屋の名物(!?)と言われる「バスレーン」(名古屋・東区)

食べ物だけじゃない!一風変わった“名古屋の名物”といえば…

 みなさんは名古屋名物と言えば、何を思い浮べるでしょうか?

 みそカツ、手羽先、味噌煮込みうどん、エビフライ、ういろう、中日ドラゴンズ、名古屋城に金のシャチホコ…

 挙げればキリがないのは名古屋の良さですが、もう1つ、名古屋を訪れた人にあっと驚かれるものがあるのです(大分県出身の筆者も初めて見たときは「なんだこりゃ?」状態でした)。

 それはなんと「バスレーン」。

 「えっ?バスレーン?」と思われるかもしれませんが、名古屋のバスレーンは他に設置されているものとはひと味違うのです。

 

道路中央のレーンを走行するバス(名古屋・東区)

名古屋のバスレーンは「道路中央」!?

 そもそもバスレーンは、公共交通機関であるバスの定時性や利便性を確保するために設けられた交通システム。正式には「バス専用通行帯」と呼ばれ、日本自動車工業会が実施した2010年の調査では、全国36の都道府県で導入されています。

 一般的なレーンは、道路の一番左端の第1車線を「専用レーン」、もしくは「優先レーン」として運用されています。

 主に交通渋滞が見込まれる時間帯に限定して実施しているところが多く、軽乗用車や乗用車、トラック、オートバイの通行を規制しています。(例外として小型特殊自動車、原付バイク、自転車などの軽車両のほか、場所によってはタクシーの通行は可能)

 名古屋でも、市内に21のバスレーンが設置されていますが、このうち、基幹バスが走行する新出来町(しんできまち)線では、日本で唯一、「道路の中央」を走行する方式が採用されているのです。

 

BRTの先駆けとも言われる「中央走行方式」バスレーン(名古屋・東区)

40年前に導入された「中央走行方式」バスレーン

 「中央走行方式」のバスレーンは、今から約40年前の1985年に導入。今では各地で採用されているBRT(バス高速輸送システム)の先駆けとも言われています。

 中区の桜通大津(さくらどおりおおつ)~名東区の引山(ひきやま)間の9.2kmにわたって整備され、平日の午前7~9時と午後5~7時が「専用レーン」、それ以外の時間帯が「優先レーン」となります。利用者は、道路中央に設置されたバス停で乗り降りします。

 しかし、なぜ道路の中央にレーンを設置することになったのでしょうか。名古屋市に聞きました。

 「当時から交通渋滞が激しかったほか、道路左側の第1車線では、路上駐車や左折する車などで、どうしてもバスに遅れが出てしまう要因があるので、中央を走らせることになりました」(名古屋市交通企画・モビリティ都市推進課の担当者)

 「中央走行方式」の導入は、公共交通機関であるバスの高速運転、定時性の確保を突き詰めた結果なのです。

 

中日・中田選手の入団会見の様子(2023年12月)

中日・中田選手もびっくり!複雑な走行ルール

 まるで路面電車のように道路中央に設置されたバスレーン。

 今シーズン、中日ドラゴンズに移籍してきた中田翔選手は、入団会見で名古屋の街の印象を聞かれると…

 「もちろん食べ物もおいしいですし。一番驚いたことはバスレーンですか。バスレーンはちょっとびっくりしました」(中日ドラゴンズ・中田翔選手)

 レーンに入ったまま交差点を直進してしまうと、いつの間にか対向車線に入っていた、なんてことも…。

 このように、中央走行式のレーンは、一般的な道路と比べて走行ルールが複雑で、初めて走る人にとってはわかりにくいと言われています。

 

2021年にはバスレーン走行車両の事故も発生(名古屋・東区)

交通事故や違反相次ぐ 問題点も…

 基幹バスレーンでは、逆走や誤進入にとどまらず、交通違反も相次いでいます。

 愛知県警が今年5月、朝と夕方の「バス専用レーン」の時間帯に実施した一斉取り締まりでは、1日で24台の車が摘発され、青切符が交付されました。
 
 ほとんどが渋滞を避けるために、レーンに進入したことによるものだったといいます。

 そして、バスが来ていなければ、すべての車が走行可能な「優先時間帯」にも気を付けなければならないことが…。

 右折レーンがある交差点では、右折レーンで信号待ちをしている車の右側を、基幹バスレーンを走行してきた直進車が追い越していくという違和感のある光景が見られます。

 2021年には名古屋市東区で、基幹バスレーンを走っていたトラックが、左側の右折レーンから曲がってきた乗用車と衝突。トラックは横転しながら、反対車線の車3台を巻き込み、男女7人が軽いけがをする事故も発生しています。

 

目を光らせるバスレーン監視員(提供:名古屋市交通局)

対策講じる名古屋市や警察

 こうした状況を受けて、名古屋市や愛知県警は、ドライバーに見やすい箇所に通行区分を知らせる大型の標識を掲示しているほか、バス専用時間帯は沿線の5ヶ所に監視員を配置し、進入車両をレーンの外に誘導するなどの対策をとっています。

 「専用・優先の規制時間帯をよく確認するとともに、例えば優先時間帯であっても道路に慣れていないドライバーはバスレーンに入らない方が無難かもしれません」(名古屋市交通企画・モビリティ都市推進課の担当者)

 公共交通機関としてのバスの運行を支える一方で、事故や違反などの課題も抱える「基幹バスレーン」。運転する際は注意が必要です。

(メ~テレ記者 安部純)

 

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