障害ある若者が届けるラジオ番組「キミテラス」 愛知・瀬戸市の就労支援施設からバリアフリーを現場取材
2024年10月24日 19:06
愛知県瀬戸市で、就労支援施設に通う若い人たちがラジオ番組を作っています。自分たちで街を取材し、ラジオを通して声を届ける姿を追いました。
メインパーソナリティーの牧野菖さん
「皆さん、こんにちは。きょうも始まりました、牧野菖(あやめ)のユニバーサルラジオ『キミテラス』。きょうもよろしくお願いします」
愛知県瀬戸市で行われているラジオ番組の収録。制作の中心となっているのは、瀬戸市にある「ドリームベース」という就労支援施設を利用する、障害のある人たちです。
牧野菖さんと、石原留実さんと牧聖真さん。3人とも20歳で、特別支援学校で12年間の学校生活をともに過ごした同級生です。
「ドリームベース」は4月に開業した、就労継続支援B型と生活介護に特化した多機能型事業所です。
月曜日から金曜日、午前9時半から午後3時半が障害のある人の就労訓練時間となっていて、自分の予定や体調に合わせて通っています。
駅のバリアフリー状況を取材する牧野さんたち
自分たちで取材・インタビュー
「きょうは、名鉄瀬戸線の各駅のバリアフリー情報について、実際に調査をしたり、駅員さんに直接インタビューをして、質問します」(メインパーソナリティー 牧野菖さん)
このラジオ番組で取り上げるのは、瀬戸市のバリアフリーや身近な暮らしの情報などについてです。自分たちで取材し、ラジオ番組を構成しています。
この日は、名鉄瀬戸線の尾張瀬戸駅から出発し、3つの駅をめぐりバリアフリーの状況を取材します。
切符の受け取りなど、障害のある人にとって、電車での外出には大変なことが待ち構えています。
名鉄瀬戸線では、ホームとホームをつなぐ跨線橋がない駅もあります。
Q.こちらの駅でもし反対側のほうに乗りたいときとかはどうすればいいですか?(牧野さん)
「係員に申し出ていただければ、踏切は危険ですから、係員がお手伝いして、渡れるように案内しています」(名鉄大曽根駅 副幹事駅長 永野善久さん)
取材を受ける名鉄の永野善久さん
ラジオ番組を作るきっかけは
車いすユーザーにとって、ほかにも困ることが。
トイレは広くないと車いすでは入ることができません。どんな広さで、どこにあるかを入念に取材します。尾張瀬戸駅に戻り、取材は終了です。
「きょうは3駅、いろんな形の駅をインタビューさせてもらったり、また設備を直接見せてもらいました」(牧野さん)
「私たち名鉄の係員も、皆さんがいろんなところへお出かけできるように、お手伝いするので、今後も瀬戸線をどんどん使ってください」(名鉄 永野善久さん)
取材が終わったあとは施設に戻り、みんなでお昼ご飯です。午後からは、それぞれの就労訓練をします。
ラジオ番組の制作という、就労支援施設では珍しい職業訓練。なぜ始めたのか、ドリームベース代表取締役の牧治さんはこう語ります。
「自分たちが発想して自分たちが作って、それがお金になっていったら、楽しく、社会人になったという感じがするかなと。障害者目線でラジオ番組を作ったらどうだろうと、そういう発想に至りました。この番組をいろんな企業に持っていき、スポンサーを募ろうかと思っています。車いすの利用者さんたちと一緒に企業を訪問して、『こんな番組を作ったんですけど、スポンサーになってくれませんか』というような形をこれからもとっていきたいと思っています」
ラジオを通して伝えたいことを語る牧野さん
ラジオを通して伝えたいこと
メインパーソナリティーの牧野さんは、企画の提案から編集まで、すべてを担っています。
瀬戸市のラジオ放送局「ラジオサンキュー」で毎週木曜日、午後0時45分から15分間放送していて、YouTubeでも配信しています。
牧野さんに、ラジオを通して伝えたいことを聞きました。
「ラジオは一切視覚の情報がないので、言葉だけで伝えることを大事にしています。車いすは不便なことがたくさんあって、同じように困ってる方には共感してもらいたい、その情報を知ってもらって、もっと出かけてほしい。特別扱いではなく、みんな普通に一緒にいるという風になってほしい、そこが叶うといいなって思っています」