いつか必ず来る南海トラフ巨大地震 歴史から考える“一部割れる場合”と“全部割れる場合” 暮らしの防災

2024年12月15日 14:01

東海地方の災害・防災を考える上で「南海トラフ巨大地震」は避けては通れません。「南海トラフ巨大地震はいつ来るのでしょうか?」と聞かれることがあります。それがわかれば、そのタイミングに向けて万全の準備ができるのですが、そうは行きません。 私は「いまの子どもの世代か、その子ども(孫)の世代が大人になるまでには必ず来ますよ。着実に備えを進めてください」と、答えています。

南海トラフ想定震源域と対策推進地域

発生確率が0.4%に

 2024年8月8日、日向灘でM7.1の地震発生を受け、内閣府は初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。

 これは「南海トラフ巨大地震が発生する確率が少し高まったので注意しましょう。地震への備えを進めてください」という情報です。

 「南海トラフではM8~9クラスの地震が今後30年以内に70~80%の確率で発生する」としていますが、今回のことで「これまで0.1%だった発生確率が、0.4%になった」ということなんです。

 もう少し具体的に言うと、地震が起きたら「数百回に1回程度が大地震」ということ。その1回がいつかは分かりません。次かもしれないし数百回後かもしれません。

 そんな「いつ起きてもおかしくない」状況は、いまも続いています。

 

「南海トラフ巨大地震」とは

南海トラフ巨大地震とは

 「南海トラフ巨大地震」とは、太平洋のフィリピン海プレート(海側)がユーラシアプレート(大陸側)に沈み込む「プレート境界(境い目)」で発生する地震です。

 最も大きい場合は、駿河湾から日向灘沖までの海底が一気に崩れてM9クラス、各地で震度7の激しい揺れ、太平洋岸に最大30m級の大津波が想定されています。

「南海トラフ巨大地震」は「阪神・淡路大震災の地震被害」+「東日本大震災の津波被害」とイメージしてほしいという専門家もいます。

 

気象庁HPより(※慶長地震は震源が南海トラフではないという説もあり)

約100~150年間隔

 南海トラフでは概ね100~150年間隔で、大津波を伴う大地震が発生しています。歴史的にみて、南海トラフが一気に全部割れる場合と、部分ごとに時間差で割れる場合があり、その時々で違います。

 史料や記録が残っている「安政地震(1854年)」では、始めに東海地震が発生し、その32時間後に南海地震が起きています。

 前回は、昭和東南海地震(1944年)と、その2年後の昭和南海地震(1946年)です。

 また、1701年の宝永地震では南海トラフ全体が一度に割れています。

 よく「南海トラフは、全部割れるか、半分ずつ2時間後か2年後に割れる」と言うのは、こんな史実からです。

 

最低1週間分の備蓄を

部屋や家の耐震対策 最低1週間分の備蓄を

 研究者によって、「いつ起きるか」に関して考えが違います。「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の発表後、メディアにその議論が一気に出ています。発生時期の予測も「明日にでも」から「100年後」と、かなり幅があります。

 「えっ!どれを信じればいいの」と戸惑うかもしれません。しかし一つだけ共通点があります。それは「いつか必ずくる」です。これだけは確かです。

 私たちは、部屋や家の対策、食料・飲料の備蓄、避難についての家族や仲間、地域での情報共有など、対策を進めなければなりません。

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 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕
 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。

 

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