市議会が“自主的に解散”の決議案可決 市長選と“ダブル選挙”のメリットと課題 岐阜・海津市

2024年12月16日 19:06

岐阜県の海津市議会で「自主解散」の議論が進んでいます。来年の市長選と同じ日に選挙をすることでメリットが見込めるという目論見ですが、果たして…。

「議会の自主解散」が議論されている岐阜県海津市

 三重県・愛知県に隣接し、岐阜県の最南端に位置する海津市。

 人口約3万2000人のこの自治体でいま検討されているのが「議会の自主解散」です。

 海津市では来年5月に市長が、9月に市議会議員が任期満了を迎えます。

 それぞれの任期満了に合わせ、選挙が行われることになるはずですが…。

「海津市議会議員一般選挙を海津市長選挙と同時に執行するための措置をとる決議について議題とします」(海津市議会 橋本武夫 議長)

 16日の定例会では、市長選と同じ日に市議選を行う、つまり“ダブル選挙”とするため、市議会を来年3月に「自主的に解散」する決議案が議題となりました。

 

海津市議選の過去の投票率

投票率アップと経費削減のねらい

 2005年3月に3つの町が合併して誕生した海津市。

 市長選はその年の5月に行われましたが、合併後の特例により、前の町議が引き続き在任したため、新たな市議会議員の選挙は9月に実施されました。

 その後は無投票を挟みつつ、4年ごとの選挙イヤーに「春」は市長選、「秋」は市議選が行われてきましたが、一部の市議から“ダブル選挙”を求める意見が出始めたといいます。その理由は…。

「選挙をまとめて行うことで、選挙への有権者の関心を高め、かつ経費を節約することができるというメリットがあったからです。投票率の向上が見込めます」(海津市議会 伊藤誠 議員)

 海津市議選の投票率は2005年には76.17%でしたが、回を追うごとに下がり続け、前回は58.63%に。

 また、市の選挙管理委員会によりますと、前回の市長選と市議選で合計約2700万円かかっていた費用が、“ダブル選挙”となると約500万円の削減が見込まれるということです。

 

自主解散に反対の意見を表明した海津市議会の松岡唯史議員

「任期は守られるべき」という意見も

 一方、反対派の意見は…。

「私たち議員は市民から4年という任期で負託を受け、任期は原則守られるべきであり、その任期を自ら縮めてまで同時選挙のための自主解散をすべきではない」(海津市議会 松岡唯史 議員)

 その後、行われた採決。議長を除く14人のうち11人が賛成し、可決されました。

 実際に解散するかどうかについては、来年3月に開かれる定例会で決まる予定ですが、現状は賛成派の議員が多数のため、このまま「自主解散」が議決される可能性が高くなっています。

 今回の自主解散について、海津市民はどう感じているのでしょうか。

「無駄なお金使わないんだったらいいかなと思いますけど」(海津市民)

Q.一緒の日にやれば選挙に行く?
「まだいいかなと思います。忙しい者にとっては」(海津市民)
「まとめられるならまとめてしまっていいのかな。選挙を1回やるにもやっぱりお金がかかるわけですし、削減という部分でもいいと思う」(海津市民)

 

名古屋市立大学の三浦哲司准教授

“ダブル選”に地方自治の専門家は

 実施の公算が強まっている「ダブル選挙」について、地方自治に詳しい専門家は…。

「首長の選挙と議会選挙が一緒に行われることによって、個別に行われるよりも街のあり方を考える機会としての注目度が高まるということはあるかなと思います。有権者が、何回も投票があるとどうしても投票疲れ・選挙疲れが起きる部分があるので、それが1回で済むということで有権者にとっても利便性が高まる」(名古屋市立大学 三浦哲司 准教授)

 また、ダブル選は「経費削減」だけでなく、選挙事務の負担軽減にもつながると話します。

「議会選挙と首長選挙を個別にやるよりも、1回で行うほうが会場費や人件費、その他の費用が2回分が1回で済みますので、費用の削減につながる。地域で投票所を運営する人たちが高齢化していて大変という事情があり、1回で済むならばその方が望ましいという事情はあるかもしれない」(三浦准教授)

 一方、こんな指摘も。

「4年間任期を全うするという前提で立候補し、当選して議員活動をしているので、有権者との間で納得のいく説明が得られるかどうか。(市議選が)前倒しで4月になるということであれば、今年度で退職して、半年後の市議選にチャレンジするという想定でいた場合に、その目算が狂ってしまうというところはあるかと」(三浦准教授)

 もし「自主解散」が行われれば、市長選と市議選のダブル選挙は来年4月に行われる見込みです。

 

三重県名張市と伊賀市の“ダブル選挙”の投票率と経費

先行事例では投票率に変化

 こうしたダブル選挙は東海3県でも先行事例があります。

 2022年4月にダブル選挙があった三重県名張市の投票率は…。

・市長選は56.02%(前回より4.33ポイント上昇)
・市議選も56.02%(前回より4.05ポイント上昇)

そして今年11月にダブル選挙があった三重県伊賀市の投票率は…。

・市長選は61.93%(前回より9.10ポイント上昇)
・市議選は61.92%(前回より5.34ポイント上昇)

 いずれも、ダブル選挙で投票率が上がったという結果になりました。

 経費も名張市は約1400万円、伊賀市は約3900万円、別々に実施した場合と比べて節約できたということです。

 

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