「中学校給食の無償化」財源に祝い金の廃止を検討 郡上市長が語る「まちの未来への危機感」
2024年12月29日 11:04
「中学校給食の無償化」にあてる財源をひねり出すため、100歳を迎えた人に贈る10万円の祝い金などの廃止が検討されています。岐阜県郡上市の新市長を駆り立てたのは、まちの未来への危機感でした。
「徹夜踊り」などで知られる岐阜県郡上市の夏の風物詩「郡上踊り」。
7月から9月にかけてのシーズン中には約30万人が訪れ、自然豊かな山あいの城下町は熱気に包まれます。ところが、冬の郡上市の街なかを歩く人の姿はまばらです。そんな街でいま話題になっているのがー。
「待っているのは『消滅可能性のある都市、郡上』。それを何とか止めたいと…」
そう話すのは、3月の市長選で初当選した山川弘保市長です。打ち出したのは…。
「郡上市内の中学生だいたい1000人いますけど、彼女ら彼らの給食費を無料にできないかと」(郡上市 山川弘保 市長)
約1000人の生徒が通う郡上市の中学校(今年4月時点)。保護者が負担する給食費は現在、月4600円ですが、来年度からの無償化が検討されています。
3年間での家庭の「負担軽減額」は、子ども1人あたりで16万円あまりになる計算です。
子育てをする親には「優しい」取り組みですが、実現には1年で約5500万円が必要になります。その財源は「若い世代への予算シフト」。
山川市長が財源として考えたのは、100歳になった人へ渡す1人10万円の祝い金と、75歳以上の会員1人あたり2000円という敬老会交付金の廃止です。
岐阜県郡上市の人口推移(国勢調査・住民基本台帳より作成)
人口減が急速に進む「郡上市」
今年度予算には、祝い金で約350万円、敬老会への交付金で約1700万円が計上されていました。
これを無償化の財源にあて、さらに足りない分は他の事業を見直して捻出すると言います。
高齢者から若者への予算シフトともとれる政策ですが、山川市長には強い危機感がありました。
郡上市の人口は約3万8000人。15年間で7000人ほど減り、人口減が急速に進んでいます。一方、65歳以上は1万4000人あまりのまま。「高齢化率」は4割に迫る勢いです。
「今まで郡上市は若い世代への事業もやってきました。でも結果として若い子がどんどん減る一方です。中途半端な事業ではなくて、やはりやるときは思い切ったことも子育てに対する事業も打ち出さないとやはり効果がないのかもしれない(と思った)」(山川市長)
医師として地域の医療に長くかかわってきた山川市長。3月の市長選でも若者世代への支援策を訴え、今年10月には公約としていた「紙おむつのサブスク」の全額補助を県内で初めて市内の保育施設で始めました。
若者世代への支援を厚くすることで、人口減少に歯止めをかけたい考えです。
市民からは賛否の声
市民の反応は?
「子どもの方が大事な気がしますよね。子どもも(将来)子どもが生まれるかもしれないし、そういう時にまわってくればいい」(50代 郡上市民)
「高齢者ばかりだとちょっと不安な部分もありまして、若い方が移住してくれたらもっとどんどん発展していくのではと思う」(60代 郡上市民)
「若い人も大事」と感じる一方、高齢者への配慮を求める声もありました。
「お年寄りも年金少ないし、物価がものすごく上がっているから、カットはちょっと。私も高齢だからちょっとつらいです」(80代 郡上市民)
「お年寄りの方もそれぞれに元気でいるように、いろいろ活動をしている。それには補助金を原資にして、いろいろ活動もしているので、金額を少し下げて、お祝いをすることは大事だと思います」(70代 郡上市民)
岐阜県内の約1割の面積を占める郡上市。車の運転が難しく、買い物や通院が困難な高齢者もいます。山川市長は既存の事業を見直すなかで、メリハリをつけた支援を進めたいと話します。
「一律ではなくて、本当に困っている人にできる政策を進めながら、若い世代へのシフトを考えていきたいと思います」(山川市長)