各地で相次ぐ山火事…その背景は「降水量の少なさ」 被害を食い止める技術を愛知県のメーカーが開発
2025年3月28日 16:40
各地で発生した山火事、今も消火活動が続けられています。なぜここまでの広がりとなっているのでしょうか?背景には、今年特有の事情が指摘されています。

全国で相次ぐ山火事は東海地方でも
各地で相次ぐ山火事。27日はこの地方でも――
27日の昼ごろ、三重県伊賀市喰代の山林で火事が発生していると119番通報がありました。
通報から約2時間半後に火は消し止められ、約8000平方メートルが焼けました。
この火事で、70代の男性が喉をやけどする軽いけがをしました。
男性は当時、獣害用の柵の整備をするため、あつめた枯草を燃やしていたといいます。
「この辺の草を集めて、邪魔なので火をつけて燃やした。風の勢いで、それ(火)が上にあがった感じ」(男性・70代)

伊賀消防署 警防第一課長 藤生正樹さん
今年は枯れ草火災が非常に多い
消防によりますと、伊賀市内では今年に入り28件の火事が発生。(27日まで)
このうち21件が野焼きやたき火、ごみ焼きなどに関連する枯草や山林火災だということです。
「(今年は)枯れ草火災が非常に多いということで、非常事態宣言を出している。啓発をしているが、なかなか火災が減らないのが現状」(伊賀消防署 警防第一課長 藤生正樹さん)

林野火災の発生件数は1月~4月が約6割を占める
林野火災の発生件数は、1月から4月にかけて増加
林野庁のまとめでは、2019年から2023年の月別発生件数の平均では、1月から4月にかけて増加。
全体の発生件数の約6割が、この時期に集中するといいます。
森林内に落ち葉が積もっていることや、乾燥や風が強いことなど火災になりやすい自然条件が重なるほか、農作業などで枯れ草焼きが行われ、山林に飛び火することも原因となっているといいます。
“大規模化”する山火事が各地で頻発する背景は「降水量の少なさ」
山火事が各地で頻発する背景とは
それに加え今年は特に延焼が拡大し、「大規模化」する山火事が各地で頻発する傾向にあります。
その背景は一体何なのか。
岐阜大学の応用気象研究センター長、吉野純教授は、「降水量の少なさ」があると指摘します。
「今年の冬は、降水量が非常に少なかった。樹木・地表面付近が非常に乾燥していて、火災が燃え広がりやすい状態にあった。そういった条件のところに火種があれば、山林火災が拡大しやすいということになる」(岐阜大学 応用気象研究センター長 吉野純教授)
三重県伊賀市の降水量は、平年に比べかなり少ない
カギは「いかに素早く、確実に消火するか」
27日に火事のあった、三重県伊賀市。
月ごとの降水量を見てみると、たしかに平年に比べ、今年の降水量がかなり少ないことがわかります。
乾燥した状態で、延焼しやすくなっている山火事。
カギとなるのは、いかに素早く、確実に消火するかです。
「フォレストディフェンダー」は木材の表面にバリアーをつくり、延焼を止める
山火事の対応に特化した消火剤を開発
愛知県大口町にある消火剤メーカー「ファイテック」。
山火事の対応に特化した消火剤を、8年かけて開発しました。それが――
「こちらで、フォレストディフェンダーの製造をしています」(ファイテック 林富徳社長)
「フォレストディフェンダー」は水に対し、1%の割合でまぜて使う消火剤です。
ヘリなどに載せ、火災現場に空中散布します。
「大きな特徴は消火剤が木に着いて、火が来ると消火剤が膨らんで、木材の表面にバリアーをつくる。これが延焼を止めて木を燃やさない」(林社長)
ファイテック 林富徳社長
消火のプロから見た、山火事の恐ろしさ
2月発生した岩手県大船渡市での山火事でも、実際に消火活動に使われたといいます。
「消防隊が、急斜面の山にホースをもって上がるのが非常に難しい。空中消火で消すしか方法がない」(林社長)
消火のプロから見た、山火事の恐ろしさとは――
「研究では、風速8m以上になると数十分後には、強い風と乾燥によって水は乾燥して、水は火をここで止めるという効果がないので、どうしても火に向かって追いかけていかないといけない。そうなるとすべて消しきれないので、飛び火とつながっていくのが水だけでは難しい原因に」(林社長)
全国各地で相次いで発生する山火事。各自治体からの問い合わせも増えているといいます。
「各都道府県が、きちんと林野火災が起きた時のマニュアルを構築すること。いつでも、火災起きたら対応できる準備や備えをすることが最も重要」(林社長)