名古屋城天守閣の復元計画「バリアフリーと歴史は両立できる?」 河村たかし市長に聞いた

2023年12月18日 17:47
名古屋城天守閣の復元計画をめぐり、”差別発言”まで飛び出す事態となった今年。河村市長が、メ~テレの単独インタビューに応じました。

名古屋城復元計画、差別発言など揺らいだ1年

名古屋市が目指す「史実に忠実な復元」
 週末、多くの人で賑わいをみせたのは徳川家康が築いた、名古屋の“シンボル”「名古屋城」。

 今年は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行し、観光客も回復してきています。

 4月からの入場者数はすでに約137万人となり、去年度を上回るペースとなりましたが城の「主役」ともいえる天守は、2018年から閉鎖されたままです。

 1945年、空襲で焼け落ちてしまった名古屋城。その後、天守は鉄筋コンクリート造りで再建されましたが、耐震性の問題などから改修が必要に。

 そこで名古屋市が目指したのが「史実に忠実な復元」。つまり「木造復元」です。
 

障がい者団体との意見交換(2018年)

復元された天守にエレベーターは――
 総事業費は505億円。河村たかし市長「肝いり」の計画とされていますがーー

 「石垣」の修復などの問題で、たびたび議論が行われ、工期が延期されてきました。

 そして今年3月。ようやく整備基本計画の大筋での取りまとめが進み、市は今年中に、計画を文化庁に提出する予定となっていました。

 しかし、その計画を大きく揺るがす出来事が「市民討論会での“差別発言”」です。

 最終計画をつくるため、石垣と並んで議論が行われていた「バリアフリー」の問題。

 復元された天守にエレベーターは設置されるのか――

 「忠実に復元したい」として、エレベーターを設置しない立場を示していた河村市長に対して、障害者の団体などは、最上階までのエレベーター設置を求めてきました。
 

市民討論会(6月)

市民討論会での“差別発言”
 そんな中で開かれた、市民の意見を聞く場として設けられた「市民討論会」。

「今まであったものをなくしてしまうというのは、我々障がい者が排除されているとしか思えない」(車いすの男性)

 車いすの男性が、エレベーターの導入を求める意見を話すとーー

「平等とわがままを一緒にするな。エレベーターも電気もない時代につくられたものを再構築するという話なんです。そのときになんでバリアフリーの話がでるのかなというのが荒唐無稽で、どこまで図々しいのという話で、がまんせいよという話なんですよ」(参加者)

 市の職員が男性にかけよりましたが、強く止めることはせず、男性は話を続けます。

 討論会には、河村市長も出席していました。市が主催の討論会で差別発言が出たことについて問われると、自身は「聞こえなかった」としたうえでーー

「ご自由に言ってもらうのが前提ですからね。広い気持ちで考えるのが普通。言論の自由は」(河村たかし市長)
 

山田昭義さん

「『人権』という問題が欠けている」
 名古屋を中心に公共施設などでスロープやエレベーターの設置に向けた活動を続けてきた第一人者で、自らも車いすを利用する山田昭義さん。

 市民討論会の場で出た”差別発言”を主催する市が止めなかったことについて、「市の人権意識の低さ」を指摘しました。

「『人権』という問題が欠けている。それは行政の問題。もうちょっと努力をしないと。おれらは障がい者である前に市民で人間である。それが優先。あなたたちができることを私たちも当たり前にできるというのが目指す社会」(山田昭義さん)
 

田中伸明 弁護士

エレベーター設置問題は宙に浮いたまま
 8月には、この”差別発言”について、市がその場で対応できなかった原因の究明や、再発防止について検証する委員会が立ち上がりました。

 委員長を務める田中伸明 弁護士はーー

「どういう立場で発言されているのかを尊重して向き合う姿勢が合意形成につながる。そういった意味で名古屋城の問題は1つ象徴的に問題になっているんだろうと思う。多様性が認め合うことが豊かな社会を作る基盤になるとおもうので今回の問題についても、そういう視点で再発防止策を検討していきたいと思っている」(田中伸明 弁護士)

 すでに市長本人へのヒアリングも行われた委員会。

 18日午前には、4回目となる会合が開かれ中間報告の骨子の作成に向けて、10程度あがった原因となる問題点についての議論が行われました。

 年度内をメドに中間報告を公表するということですが、市は検証が終わるまでは、計画策定を中断する方針を示しています。

 ”差別発言”のきっかけとなった「エレベーター」の設置問題も、宙に浮いたままです。
 

名古屋市 河村たかし市長

河村市長「名古屋城という国宝を変更してまでーー」
 メ~テレの単独インタビューに応じた河村市長。名古屋城のバリアフリー化について改めて聞きました。

Q.木造復元計画について、この1年どうでしたか?
「はよ、つくってちょーいうのかね。多くの人が『河村さん、宝物は宝物で作ってくれ』と名古屋の宝、世界の宝はないですから、図面も完全に残っている、『本物で作ってくれ』と言われている」

Q.バリアフリーと歴史は両立できると思いますか?
「別個というか、両立は両立。文化庁の基準は残さないといけないというつとめがある。バリアフリーはというと合理的配慮をしてくださいと、バリアフリーはバリアフリーでやる。名古屋城という国宝になってくる世界で一つの建物を変更してまでやれというのは書いていない。どこにも」

 市は、地下から1階までのみ、「小型昇降機」の導入する方針ですが、障害者団体などが求める最上階までの設置については結論が出ていません。

 5年以上、観光客も市民も足を踏み入れることなく、たたずむ天守。たくさんの人々が、そこから街を見渡す日はいつになるのでしょうか。

(12月18日15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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