「負動産」問題が深刻化 バブル期の原野商法の土地 子どもが相続したときの選択肢 相続土地国庫帰属制度

2024年11月10日 10:01
相続や遺贈で土地を取得した人が、負担金を納付することで土地を手放し、国に帰属させることが出来る「相続土地国庫帰属制度」。「バブル期の原野商法で土地を購入し、値上がりが見込めないため、子どもたちが相続したときどうしたらいいか」と法務局に相談に来る人もいるといいます。

法務省が作成したパンフレット

「負動産」問題が深刻化
 相続や遺贈で取得した土地の使い道としては、自分で住むか、誰かに貸すなどして活用することや、立地がよければ、売却先が見つかり、お金に換えることもできます。しかし、土地が遠方に存在し、売却先や借主が直ぐに見つからないなど、使い道に困ることも考えられます。

 使い道がなく、所有者の負担感が増加し、そのまま放置されて土地が荒れ果て「管理不全化」する「負動産」問題が深刻化していたことから、国は、相続や遺贈で土地を取得した人が、負担金を納付することで土地を手放し、国に帰属させることができる「相続土地国庫帰属制度」を2023年4月27日にスタートさせました。
 

「相続土地国庫帰属制度」と「相続放棄」の違い

相続放棄との違いは?
 相続した土地を手放す手段としては、「相続放棄」という選択も考えられます。

 「相続放棄」は、相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申し立てて、被相続人の権利や義務を一切受け継がないことにする手続です。これによって不要な土地の相続を行わないことも出来ますが、相続放棄は「不要な土地」だけでなく、「預貯金や株式など全ての資産の相続権」も失うことになります。

 一方、「相続土地国庫帰属制度」は、相続又は遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、1筆の土地ごとに手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる制度です。

 名古屋法務局によると、制度の申請件数は全国でのべ2481件(2024年7月31日の時点)、帰属件数は667件(宅地:272件、農用地:203件、森林:20件、その他:172件)で、愛知県内の申請件数は半数ほどが農地を占めているということです。

 利用者は、60代~80代が中心で、「固定資産税などを考え、売却を考えたが売ることが出来ず困っていた。」「引き取り手が国なので安心した。」などの声があったということです。

 また、「バブル期の原野商法で土地を購入した。値上がりが見込めないため、子どもたちが相続したときどうしたらいいか」と自分が死んだ後のことを考えて法務局に相談に来る人もいるといいます。
 

申請の段階で却下となる土地

申請の段階で却下となる土地は?
 制度の利用申請には、土地1筆あたり1万4000円の申請料が必要で、申請が受理されると、法務局による審査が行われます(標準的な審査期間は約8カ月)。

 問題がなければ土地の国庫帰属が承認され、負担金を納めることで、手続きは完了します(負担金の納付は1度だけで、1筆あたり20万円が目安ですが、土地の種類や面積、地域などによって変動)。

 また、全ての土地を国に引き渡すことが出来るわけではなく、次のような土地は、引き取りの対象外となっています。

【申請の段階で却下となる土地】
◇担保権や使用収益権が設定されている土地
◇他人の利用が予定されている土地
◇特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
◇境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地 など
 

帰属の承認が出来ない土地

該当すると判断された場合に不承認となる土地は?
 審査の段階で、次のような土地に該当すると判断されたときは不承認となります。

【帰属の承認が出来ない土地】

◇一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
◇土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
◇土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
◇隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
◇その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地 など
 

パンフレット改定で追加された写真(法務省のパンフレットより)

WEB相談を試験的に実施 手引きを改定するなどして帰属増を図る
 申請はあっても、帰属に至らないケースもあることから、法務省は、4月に申請の手引きを改訂。これまで分かりにくいとされていた「帰属ができない土地」のイメージがより伝わるように、写真やイラストを充実させた他、法務局から遠い場所に住んでいて相談に行くことが難しい人のために、10月15日からWEB相談を試験的に実施するなど、帰属件数の増加に向けた工夫を図っていました。

 名古屋法務局は「愛知県内では名古屋法務局本局(名古屋市中区)だけで制度を扱っている。高齢の方や遠方の方に来庁頂くことが申し訳なかったが、対面・電話・WEBの3つの相談方法が選べるようになったので、遠方の方も制度を是非活用してほしい」。また「愛知県内は土地改良区が多く、複雑な事例もあるので困ったら法務局に相談をして下さい」と呼び掛けています。

(メ~テレ 中村潤也)

■問い合わせ先
名古屋法務局 
相続土地国庫帰属担当
052-952-8025(直通)
 

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