台風10号 漁業への影響長期化 鮮魚店も品薄状態に困惑「ここまで魚ないのは初めて」

2024年9月4日 19:36

ノロノロと迷走を続けた台風10号。大雨など長期間に及んだ影響は漁業にも及んでいます。品薄による値上げだけでなく、そもそも仕入れ自体に苦慮する店も。

 三重県尾鷲市の尾鷲漁港。

 沿岸では定置網漁が行われていて、台風10号の影響で約1週間ストップしていた漁が9月2日に再開しました。

 4日朝は、ヘダイやカマス、コガツオなどが水揚げされました。

 「水揚げ量はこの2日間は少なかったですけど、きょうは多かった。再開できてちょっと安心です」(丸友丸 漁労長 東幸広さん)

 台風の影響で約1週間も漁が止まるのは、初めてだといいます。

 「水揚げができない分、人件費はかかるので、その分はマイナスに。なるべくなら台風は来てほしくない」 (東さん)

 ゆっくりとしたスピードで進路も迷走した今回の台風10号。

 東海地方でも台風が近づく前から大雨になるなど、漁業への影響も長期化しました。 

 

魚安商店 弘中孝宜 社長

「タイの良いのが無い。アジも無い。カニもカキも無い」

 名古屋市中区大須にある「魚安商店」。

 愛知県産や三重県産など「地のいい物」を中心に取り揃え、飲食店の関係者も足しげく通う鮮魚店です。

 3日は店頭にタイやキンメダイなどが並んでいましたが、2日までは品薄の状態だったといいます。

 「今まで40何年やってますけど、ここまで台風が遅くて、荷物がないっていうのは初めてじゃないですかね。普段の台風だと1~2日くらいで通り過ぎて、魚なども浜の水槽に入っていたり、うちの水槽で何とか回すことはできるけど」(魚安商店 弘中孝宜 社長)

 この店に魚を卸す人は――

 「1週間くらいかなり商品がなくて、お客さんに頭さげっぱなし。30年以上、魚を売っているけど、ここまで無いのは初めてです。きょうから本格的にやっと漁師が漁に出てくれて、今週木曜日からようやく魚がまともにそろえられるかな」(かね大商店 鮮魚部 磯部良満さん)

 魚安商店では、魚の仕入れ値が、すべてにおいて2割から3割ほど高くなったといいますが、そもそも入荷が困難な状態だったといいます。

 「南のほう、淡路島とか、九州だとかの魚が入らない。なおかつ愛知県も漁が出ないので、タイの良いのが無い。アジも無い。カニもカキも無いというような状態。本当に飲食店さんも困られたんじゃないかなと思います」(弘中社長)

 

魚洋丸では入荷の途切れを見越して魚を昆布じめにするなど調理を工夫

飲食店では調理を工夫し、メニュー変更も

 「台風による漁獲量の減少、飲食店にも影響が及んでいます」(望木聡子アナ)

 名古屋市北区にある「魚洋丸」。天然の魚にこだわった居酒屋です。

 店内のいけすには、立派なクエとキジハタが悠々と泳いでいます。

 いまは、大きな魚がゆったり泳げるほどスペースがありますが、台風の影響を受ける前はたくさんの魚がいました。

 Q.今日いけすの中の魚の種類が少ないようですか?
 「そうなんですよ。台風が来るっていうのは知っていたので、たくさん仕入れておいたが無くなってしまう。使っていくものですから、このくらいの種類しかない状態です」(魚洋丸 大将 小川洋永さん)

 店は通常通り営業していますが、ランチで提供するメニューに台風の影響が――

 「この時期ですと戻りガツオをよく使うんですけど、とれなかったので、代わりにスズキを昆布締めにしたり、メカジキマグロを使ったりしています」(小川さん)

 希望する魚の入荷が途切れることも見越して、魚を昆布じめにして、長持ちさせるなど調理を工夫。

 

魚洋丸 大将 小川洋永さん

秋の味覚「サンマ」台風の影響は――

 台風が過ぎ漁が再開したことで仕入れの不安は解消されますが、いつでも天然魚の料理を提供できるよう試行錯誤が続きます。

 「師崎に直接仕入れに行ったり、自ら釣ってきた魚を水槽に入れたりして、自分たちで魚を確保する。そういうお店をやってますので、こういう形を続けていきたいと思います」(小川さん)

 一方、秋の味覚のとしてこれから出回り始めるのが「サンマ」。
 
 今回の台風10号の影響はないか聞いてみると――
   
 Q.サンマは台風とは関係ない?
 「遠洋でサンマの漁はしているので、影響はないと思います。ここ数年いいサンマの状態になるのが、10月入ってからという年が多いので、今年もサンマは出ていますが、小ぶりで小さいものなので、まだうちでは扱えない。まだあと1カ月くらいはかかるのでは」(小川さん)

 

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