最後のメッセージを法務局が預かります 終活の一環、相続をスムーズに 自筆証書遺言書保管制度

2024年9月14日 11:01

自らの思いを書き残す「遺言書」は、遺産を巡るトラブルの防止などが期待できます。しかし、自宅で保管されることが多く、紛失や改ざんなどの可能性がありました。法務局が保管するという選択肢が増え、自筆証書遺言書を前向きに作成する方が増えています。

画像はイメージです

亡くなった後に自分の意思を伝える「遺言書」

 遺言書には、「自筆証書遺言」と、法律の専門家である公証人が関わる「公正証書遺言」などがあります。

 自筆証書遺言は1人で作成ができて手軽に作れる半面、自宅で保管することが多かったことから、亡くなった後に遺言書が見つからなかったり、改ざんされたりするおそれなどの問題がありました。

 そこで法務省は、相続を巡る紛争を防ぐ目的などから2020年7月に、法務局が自筆証書遺言を保管する「自筆証書遺言書保管制度」を導入しました。

 

「自筆証書遺言書保管制度」と「公正証書遺言」の違い

「自筆証書遺言書保管制度」と「公正証書遺言」違いは?

 「公正証書遺言」は2人以上の証人の立ち合いが必要なほか、財産の価格に応じて手数料がかかるなど費用面でもハードルがありました。

 一方、「自筆証書遺言書保管制度」は、法務局が定める様式に従い、遺言者が自筆証書遺言を作成。保管場所は法務局で、紛失や改ざんのおそれがなく、長期間(原本は遺言者の死亡の日から50年間、遺言書の画像データは遺言者の死亡の日から150年間)保管されます。

 手数料は3900円(預けるときの1回のみ)と安くおさえることができるほか、「日付、氏名、全文自書、押印」など形式面の確認を法務局が行うため、形式面の不備で遺言書が無効になることを防ぐことができます。

 また、遺言者の死亡後、遺言書が保管されていることを法務局から通知され(2つの「通知制度」)、遺言書の存在が確実に伝わるように配慮がされています。

【2つの「通知制度」】
◇遺言者が希望した人(3人まで)に保管があることを通知
◇相続人などのうち誰か1人が遺言書の内容を法務局に確認したとき、その他の相続人など全員に遺言書が保管されていることを通知

 

遺言書保管申請のガイドブック

制度利用者は7万人を超える

 名古屋法務局によると、遺言書保管制度の利用者は制度開始以降、全国でのべ約7万7000人(2024年6月の時点)となり、利用者の約8割が60代以上で、中には「若いかもしれないが、万が一、突然死亡したときに悔いを残すことがないようにと思った」と40代の利用者もいるといいます。

 利用者からは「相続手続きを円滑に進められると思いました」「財産の行方はしっかりと決めておきたい」「保管場所が法務局なので安心」などの声があり、年々関心が高まっているといいます。

 

遺言書保管の窓口 名古屋法務局

制度利用には注意点も

 名古屋法務局によると、制度利用には以下の注意点があるといいます。

・遺言書は自筆で書く
・法務局が定める様式に従い書く(用紙サイズはA4、片面のみに記載、各ページにページ番号を記載、複数ページでもとじ合わせない など)
・窓口には遺言者本人が行く
・官公署から発行された顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカードや運転免許証など)を持参する
・法務局は形式面の審査はするが、遺言書の中身の有効性の判断はしない など

 名古屋法務局は「最後のメッセージである遺言書を大切に保管します。安心で利用しやすく、しかも安い、遺言者に寄り添ったこの制度を是非利用してほしい。」と呼び掛けています。

【自筆証書遺言書保管制度の問い合わせ先】
◇電話又はインターネットでの予約制
名古屋法務局供託課(TEL:052-952-8184)
 又は最寄りの法務局の支局へ問い合わせを

(メ~テレ 中村潤也)

 

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