三重の海に広がる“磯焼け”が深刻に 漁村の暮らしを体験、海の課題と向き合う高校生たちに密着

2024年9月14日 08:01

連日猛暑が続いていますが、海も温暖化が深刻です。海藻の森が減る、いわゆる磯焼けが問題になっている三重県熊野市で東京などから来た高校生たちが、海の課題と向き合いました。

 

 三重県熊野市二木島町。

 子どもたちに各地の海で起きている問題について考えてもらいたい。
 
 日本財団が行っている「海と日本プロジェクト」の一環で7月、高校生たちが小さな漁村を訪ねました。

 日常では味わうことができない豊かな自然を満喫する一方で、海の課題を肌で感じとる、夏休みの合宿に密着しました。

 

定置網漁の体験

漁村の暮らしを体験

 まだ薄暗い早朝の港に集まったのは、東京の新渡戸文化中学校・高等学校と三重の津高校の生徒たちです。

 漁船に乗って港を出発、定置網漁の体験です。

 地元の漁師が仕掛けた網を引き揚げます。

 今度は、漁師と一緒になって、大きな網を引っ張ります。網には、タイを始め、たくさんの魚が。

 「見ていると、めっちゃ楽そうなんですけど、1回やってみるとだいぶきついので、すごさがめっちゃ分かりました。この海にこんなに魚が、集まっているんだなと思いました」(三重 津高校の生徒) 
 「引っ張ってみたとき網が本当に重くて、漁師さんはすごくぐいっと一気に引けていて、さすがプロだなと思いました」(東京 新渡戸文化中・高の生徒)

 港に戻ると、さっそく慣れない手つきで、魚をさばき、朝ごはんです。さて、お味は――

 「皮がやわらかくておいしい。歯ごたえもあってめっちゃおいしいです」(東京 新渡戸文化中・高の生徒)

 “漁師の朝”をすっかり堪能したようです。

 

磯焼けしている現場を子どもたちも自らの目で確かめる

自らの目で確かめる

 一見、海洋資源に恵まれているように見えますが、二木島の海は、ここ数年で大きく変わってしまったといいます。

 原因の一つが「磯焼け」です。

 磯焼けとは、ワカメなどを含む海藻が枯れてなくなってしまうこと。

 海藻が多く生える「藻場」をすみかとする貝類や魚などの生態系が失われていくことにも繋がります。

 二木島で生まれ育ち、ダイバーとして活動する松本翔汰さんは、海の変化を目の当たりにしてきました。

 「本格的に仕事を始めたのが5、6年前。5、6年の間でも全然変わったと思います」(二木島出身 松本翔汰さん)

 磯焼けしている現場を子どもたちも自らの目で確かめます。

 視界に広がるのは、海藻がなく、岩場がむき出しになった海底でした。

 「ガンガゼのいるところと、いないところで植物の数が違って、ガンガゼがいなかったところは、イソギンチャクや海藻が広がっていて、そこをすみかとしている魚がけっこう多く泳いでいた」(三重 津高校の生徒) 

 

ガンガゼ 提供:三重県水産研究所

海の天敵をどうすれば

 「ガンガゼ」は、ウニの仲間で、海藻などを食べて生活する「植食性」です。

 ガンガゼに詳しい尾鷲市の職員によれば、温暖化による海水温の上昇などが原因で、太平洋だけではなく、比較的水温が低い日本海などにも広く生息するようになったといいます。

 さらに、他のウニと比べて苦みが強く、基本的に漁獲対象になりません。

 増え続けた結果、海藻を食べ尽くし、磯焼けの原因になっています。  

 水温が高い、暖かい海に生息する魚、アイゴやニザダイも同様に海藻を食べる“海の厄介者”として知られています。

 二木島に来て2日目の夕食は、このニザダイの漬け丼に挑戦。

 「めちゃくちゃ味が染みわたっていておいしいです」(東京 新渡戸文化中・高の生徒)
 「ニザダイは青臭さがちょっとあるかもしれないが、僕はこの青臭さが好きです。漬けにした方が、多少においは良くなると思います」(三重 津高校の生徒) 

 海藻を守るための単なる駆除ではなく、漬けという味付けによって美味しく食べる方法を見つけることができました。

 

新渡戸文化中学校・高等学校 山藤旅聞先生

「日本のさまざまな現場に、高校生が気づいて知ってもらいたい」

 生徒たちに、こうした海の課題に向き合ってもらおうと考えたのが、東京の高校生たちを引率してきた山藤先生です。

 「二木島のように日本文化や農林水産系の衣食住を支えるような、日本のさまざまな現場に、高校生が気づいて知ってもらいたいなと」(新渡戸文化中学校・高等学校 山藤旅聞先生)

 二木島の抱える海の課題や解決方法について学んだ高校生たち。

 9月15日から二木島で始まる1泊2日のイベントでは、地元、三重県の小中学生に“先生”として伝え、一緒に海や二木島の課題を考えるという大事なミッションがあります。

 

3日間の漁村滞在で現地の子どもに先生として伝えたいこと

「実際に来て、こんなにヤバいんだな、本当に危機的状況だと身に染みた」

 二木島のおいしい魚、磯焼けのこと、散策して見つけた自然、人口減少が進むまちのこと、3日間の漁村滞在で現地の子どもたちに先生として伝えたいことは――

 「正直なことをいうと全部伝えたい。厳選するのであれば、日常と海と食は伝えないといけない」
 「学校でいま、SDGs教育とかあって『海の豊かさ守ろう』ってよく出るやん、ぶっちゃけよくわからんけど、現地でこれみたら絶対わかるやん」
 
 「過疎とか環境の問題とか、教科書やテレビで出てくるので知っていたが、実際に来てみて、こんなにヤバいんだな、本当に危機的状況だなと身に染みて分かりました。伝えたいことは、環境の問題や過疎の問題が結構あるので、それが小学生に伝わるように頑張ります」(三重 津高校の生徒) 

 「子どもたちが日に日に、変化・変容していく様子は見て取れたし、大切にしたいなと思ったものが入っていて、さらに彼ららしいアレンジもあった」(山藤先生)
 
 Q.先生になれそうですか?
 「素敵な先生になって、僕らよりも小学生に伝えられる人になるんじゃないかなと思います」(山藤先生)

 

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