噴火でわが子を失った父の10年 登山者ら58人が死亡の御嶽山で追悼式

2024年9月28日 14:04

戦後最悪の火山災害となった御嶽山の噴火は27日に10年を迎えました。遺族らが国などを提訴した裁判は今も続いています。

 長野県王滝村。御嶽山のふもとにある公園では27日、噴火があった午前11時52分に合わせ追悼式が開かれ、遺族らが鎮魂の祈りを捧げました。

 10年前、噴火した御嶽山。当時、山頂付近にいた登山者ら58人が死亡し5人はいまも行方不明のままです。

長山幸嗣さん
「10年、もう10年なんだな、というのはありますね。正直」

 愛知県豊田市の長山幸嗣さん。御嶽山の噴火で当時、小学5年生だった娘の照利(あかり)さんを失いました。

長山さん
「自分はそのとき仕事をしていたが、家族は3人登っていて『子どもたち2人がいない』と涙ながらに妻から電話があった」
 
 10年前の衝撃的な情景を鮮明に語る長山さん。

長山さん
「『照利が発見されました」と警察から連絡があったが、そこから遺体が安置されているところに行くまでのどきどきというか、あのときの思いから10年も経ったのかというのはある」
 
 噴火直後には頻繁に照利さんの夢を見たといいますが、最近はあまり見なくなったといいます。

長山さん
「こっちも安心というか、(照利さんが)つらい目に遭っているとかそういうことではなくて体はないけれど、心ではどこかでつながっていて(照利さんが)楽しくやっているのではないか」
 
 長山さんをはじめ一部の遺族ら32人は噴火前の国や長野県の対応が不適切だったとして、合わせて3億7600万円の損害賠償を求める訴えを起こしています。

 

 

犠牲者を減らすことはできなかったのか?引き上げられなかった「警戒レベル」

 火山の危険性を示す「噴火警戒レベル」。
 
 噴火までの1カ月ほどの間には1日に50回を超える火山性地震が発生する日があったことをなど、様々なデータを気象庁は把握していました。
 
 ただ、気象庁内での検討の結果、噴火警戒レベルは「2」に引き上げられることなく最も低い「1」を継続。その後、御嶽山は噴火しました。
 
 おととし7月、長野地裁松本支部は判決で気象庁の判断は「著しく合理性に欠ける」として、国の違法性を認定しました。
 
 その一方で、警戒レベルを上げるなどの注意義務を尽くしたとしても被害が生じなかったとは言えないなどとして、国と県の賠償は認めませんでした。

長山さん
「すっきりしない判決だったと思う。国に違法性はあるけど賠償まではいかないという。あのときは『空振りしてはいけない』いう『レベル2に上げたらそれなりのことが起こらないと』という感じだったかもしれない」
 
 長山さんなど遺族らは控訴し、10月21日の2審判決を待ちます。

長山さん
「これが15年、20年と経てばそのころには。またさらに忘れられていくんでしょうけどね。でも忘れたころに災害は起きるので、国が責任を持つというのであれば、しっかりとやってもらいたいと思います」

 

 

10年経っての課題

 噴火から10年。多くの犠牲が出た山頂付近の「八丁ダルミ」は去年、立ち入り規制が解除されました。
 
 再び多くの登山客を迎えつつある御嶽山。

 災害の教訓をどう伝え続けていくかがこれからの課題です。

長山さん
「そういう災害を二度と起こさないように、噴火で亡くなることがないように。せっかく山に登って、いい景色を見るために登っているわけだから。犠牲者が出ないために風化させたくない」

(2024年9月27日放送「ドデスカ+」より)

 

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