名古屋市長戦でもSNSが候補者の明暗に影響 専門家「広がった言説が選挙を支配」

2024年11月25日 20:51

ふたを開ければ広沢一郎氏の圧勝に終わった名古屋市長選。組織力で戦った次点の候補を大きく引き離しました。今回の選挙でもまた、「SNSの影響」がひとつのトピックスとなったかたちです。

 25日午前、当選証書を受け取り新しい名古屋市長となった広沢一郎氏(60)。
 
 河村たかし前市長の後継として、選挙選を勝ち抜きました。

 日本保守党と地域政党「減税日本」の推薦を受けた広沢氏。自民・立憲・国民・公明が推薦し、与野党相乗り支援となった対抗馬の大塚耕平氏に、13万票あまりの大差をつけました。

 訴えてきたのは、既得権益の打破です。

「大政党の支援をいただかないからこそできることがある。市民の方だけを見て、政治をしていく。これが多くの拍手をいただけたので、賛同いただけたと思う」(広沢新市長)

 

河村たかし前市長と広沢新市長

河村たかし前市長と一心同体で勝ち抜いた選挙戦

 選挙選を通し、常に目立っていたのは、隣に立つ河村たかし前市長。

 河村前市長を師匠と慕う広沢氏。師匠仕込みの「親しみやすさ」もアピールしました。

「河村さんの市政が終わってしまうことへの市民への影響は大きいし、当然河村さんを支援してきた方をがっかりさせることになる。いろいろ考えるとなかなか負けるわけにはいかない選挙」(広沢新市長)
 
 河村前市長とまさに一心同体で進めた広沢氏の選挙戦。有権者の反応もーー

「昔から河村さんがずっと好き。市議会をリコールした時からずっと」(40代)

「河村市政は大満足で、私は母が寝たきりなので福祉の恩恵を名古屋市から多分に受けてまして、大満足」(50代)
 
 河村前市長への支持が、そのまま広沢氏の票につながったともいえる結果になりました。

 

  

SNSが予期せぬ追い風に

 さらに今回の選挙でも注目されたのは“SNS”です。勝利した広沢陣営にとって、このSNSが予期せぬ追い風になったといいます。

Q.SNSでの盛り上がりは選挙前に予想していた。
「まったく予想していなかったですね。YouTuberの方がわざわざ来ていただいたり、これはSNSならではですね」(広沢新市長)
 
 特に選挙戦後半では、広沢氏の街頭演説の様子を自身のYoutubeチャンネルで生配信するYoutuberの姿もみられました。

「ライブ配信をやっている。広沢さんの応援に来た」(登録者数15万人以上のYoutuber)

「東京から3泊4日とかで来て通っている。候補者を応援したい気持ちが強い」(登録者数7.5万人以上のYoutuber)

 

大塚耕平氏

SNSがマイナスに働くことも…

 ただ、このSNSの情報が候補者にとってマイナスとなった面もあったようです。

「デマ・誹謗中傷・レッテル貼りの影響というのも一定程度あったかなと」(大塚耕平氏)
 
 選挙期間中、敗れた大塚氏が「増税派である」かのような、本来の主張とは異なる情報がSNS上で出回ったといいます。

 大塚氏はSNSで、これに反論する動画を投稿するなどして対応しましたが、一部に広がってしまった誤った情報を完全に払しょくするまでには至らなかったと肩を落とします。

「SNS上のデマを口コミで聞かれたSNSを利用されない方、高齢者は否定する情報を伝えるすべがなかった」(大塚氏)
 
 現代政治分析が専門の法政大学大学院白鳥浩教授は、今回の名古屋市長選、SNSで広がった言説が勝敗の分岐点のひとつだったと話します。

「広沢氏は市民税減税を10%にしていくという強いメッセージを有権者に伝えていった。それに対して大塚氏は、なかなか強いメッセージを発することができなかった。選挙戦最終盤になってくると、広沢氏が言っている減税なのか、そうではないのか、増税なのかというような“一つの言説”がこの市長選を支配するようになってきた」(法政大学大学院 白鳥浩 教授)

 

法政大学大学院白鳥浩教授

SNSが情報収集の手段に

 選挙での情報収集の手段として主流になりつつあるSNS。街の人は、どのように捉えているのでしょうか?

「公式アカウントだったら気にする必要はないと思うが、素人目線でやっているアカウントはデマ情報もあると思うので、あまり真に受けないようにしている」(10代)
「テレビで放送されていることとSNSで発信される内容が違うことも多い。どっちが本当かわからなくなる」。(30代)

 白鳥教授は、既存のメディアとの特性の違いを理解したうえでSNSを活用することが重要だと指摘します。

「これまでであれば新聞やテレビで、十分なファクトチェックをした情報が流れ、それを信じるという流れだった。大手メディアで『報じられない真実があるのかもしれない』という既存の政治に対する疑問を埋めていくのがSNSなどの新しいメディアという見方もできる」(白鳥教授) 

 

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