シーズンなのにカキが大量死「これが続いたら廃業…」 異変はシラスでも
2025年1月20日 19:47
三重県鳥羽市で養殖しているカキや、愛知県の篠島でシラスが記録的な不漁になっています。
プリプリの身に、豊かな磯の香り。冬の食卓を彩る「カキ」。週末のカキ小屋も賑わいを見せていました。
しかし、いまカキにある異変が起きていました。
東海地方のカキの産地、三重県鳥羽市。間宮昌昭さん(56)は30年以上、養殖業を営んできました。
この時期は例年、水揚げのピークだといいますが…
「軽いですよ。(カキが)ついている量が少ない。通常だったら株が大きくて、たくさんついている状態。今までで一番よく死んでいる。死活問題」(間宮昌昭さん)
今年のカキは成長が遅く、身が小さい
カキのほとんどが死に、経営に大打撃
間宮さんによると、例年5割ほどのカキは死んでしまいますが、今年は8割から9割ほどが死んでしまっているといいます。
1年かけて育てた貝ですが…
「死んだ貝は口が開いている。ゴミですね。悔しいね」(間宮さん)
さらに、例年より成長が遅く、身が小さいカキが多いといいます。
今年は、カキ小屋やネット販売向けに出すと、全国に向けて出荷できるカキがほぼ残らず、経営的にも大きな打撃だといいます。
「市場への出荷で別の収入があると、従業員の夏の給料になる。それがない。カキが終わったらその後の収入源がない。無力感もしかり、どこに当たることもできない状態」(間宮さん)
鳥羽・志摩地域から死んだカキの貝殻が集まる場所も、今年は例年より1カ月ほど早く一杯に。
三重県のカキの生産量
不漁の原因は?
貝の生息数などを研究する専門家も、海水温の上昇や病気などが原因の可能性があると指摘します。
「水温が高くなった場合、特に夏はカキが何度も産卵してしまうとか、産卵にエネルギーを投資し過ぎることで、斃死の割合が高まるのではないかという報告は、広島県などでされている」(水産研究・教育機構 栗原健夫 研究員)
三重県では、一昨年までの20年ほどで養殖カキの生産量が3分の1に減少。県によると、事業者が減ったことも要因とみられています。
間宮さんは養殖業のかたわら、カキ小屋も経営しています。例年休みなく営業していますが、今年は週に1、2回休みにせざるを得ません。
間宮さんの養殖場では、今回の大量死を受けて、厳しい環境にも耐えられるよう改良されたカキを一部で取り入れました。
ただ、これまでのカキの5倍以上の値段なので、すぐに全てを置き換えることは難しいと話します。
「これが何年か、来年でも続いたら可能性もありますよね、廃業の。地域全体でそういう可能性がありますよね」(間宮さん)
愛知のシラスの漁獲量
異変はカキの他にも
異変は、他の海でも。愛知県内トップの漁獲量を誇る、南知多町篠島へ。
観光客のお目当ては、やはりシラス。しかし…
「去年は半分以下だね、おけ数でいうと。最低最悪やろ」(篠島しらす連合会 新美篤彦 本部長)
一昨年は、シラスの漁獲量が全国3位だった、愛知県。県によりますと、シラスの漁獲量は減少傾向にあり、去年は2276tでした。記録がある1950年以降で過去8番目の低さだったということです。
これに伴い、去年の売り上げは前の年と比べて半分以下に減ったといいます。
「赤字だから燃料費分もとれない。若い子は島から出て行ってしまう、これが何年も続けば」(新美 本部長)
本来、しらすは春から秋にかけて最盛期を迎えますが、近年はとれる時期が変わってきているといいます。
「どういうわけか知らないけど、寒いときにとれるようになった。12月、1月でとれるようになってきた」(新美 本部長)
水揚げできるようになってきた矢先に、しけの影響が。漁に出られない日も多く、19日は1週間ぶりでした。ほかの漁師からはー。
「落ち込んでいるよ、ずっとこうなっている。下を向いて歩くぐらい。去年は暮れに少しとれただけで、かろうじて首がつながったわ。珍しいもんね、だんだん時期がずれている」(篠島しらす連合会 福林孝徳 役員)
カフェ「OHANA」の生しらす丼(1500円)
島内のカフェでは…
影響は、生シラス丼を提供するカフェにも…
「生シラスが入らないと、お客さんに提供できなくなって、お客さんにもここまで来て『すみません』っていう感じになった」(OHANA 吉戸満奈 店長)
篠島の絶景を眺められる、カフェ「OHANA」では、生シラス丼が去年11月から1カ月ほど販売できませんでした。
「値段が高くて手に入るなら、買って提供することができたけど。ランチをやりだして5年くらいだが、シラスがないことがなかった」(吉戸 店長)
去年12月から、ようやく生シラス丼が提供できるようになりました。
シラス料理をほおばる客からは…
「篠島ではどこへ行っても『シラス』で、どこでも食べられるものだと思っていた。残念というか寂しいような気持ち」(観光客)
「生で食べられるところがないのかなと思っていて悲しい。本当に篠島のシラスが大好きなので」(観光客)
「篠島にシラス漁がなければ、盛り上がりもないし、観光客のお客さんや漁師の方みんな沈んでいるっていう感じ。今年はもう願うしかない」(吉戸 店長)