開幕まで3カ月切った「大阪・関西万博」チケット販売低調、問われる意義…課題について吉村知事を直撃
2025年1月23日 08:01
4月に開幕を控える「大阪・関西万博」。急ピッチで工事が進む会場に潜入取材し、完成間近のパビリオンを一足早く体感しました。また、万博の”旗振り役”の一人でもある大阪府の吉村知事へ単独インタビュー。「販売が低調なチケット」「関心の低さ」「問われる万博の意義」など抱える課題について聞きました。 目標入場者を大きく上回る成果をおさめた、あの愛知万博から20年。開幕まで3カ月を切った「大阪・関西万博」の現在地は…。
大阪・関西万博「日本館」
5000人超の作業員 急ピッチで工事進む会場
万博の会場となる夢洲。メインの出入り口のひとつ「東ゲート」から中に入ると、シンボルとなる「リング」はすでに1周2キロのすべてがつながっていました。
濱田アナウンサーが取材に入るのは半年ぶり。当時は「準備の遅れ」が懸念されていましたが、着々と工事は進んでいるようです。
「開幕にあわせてみなさん精いっぱい力を合わせて頑張っていますね。会場全体では5000人を超える作業員がこの中で作業している」(大林組 大阪関西万博室・森田真行さん)
会場を取り囲む「リング」が世界各国のパビリオンを1つにまとめます。
不思議なパビリオン「ベター・コ・ビーイング」
屋根や壁がない不思議なパビリオンが…
それぞれのパビリオンも、完成に近づいていました。
「こちらが日本館です。板が重なり合っています。560枚の板が使われていて、一見平面的なオブジェのようですが、実は円形のパビリオンなんです」(濱田アナ)
万博終了後には、建物の部材を日本各地でリユースする計画で、解体しやすいよう工夫されています。
会場の中心を構成するのは「シグネチャーパビリオン」です。8人のクリエーターがそれぞれのコンセプトをもとに展開するパビリオンは、どれも個性的な外観が目を引きます。
そのうちの1つが「ベター・コ・ビーイング」。雲のような形をしています。鉄の棒を組み合わせたオブジェを柱が支える、屋根も壁もない、ユニークなパビリオンです。
ここで体験できるのが…
「不思議な石ころ、名前がエコーブという石ころを持っていただく。パビリオンの中にアート作品が点在していて、その石ころがどこにアートがあるか導いてくれる」(2025年日本国際博覧会協会・柴田晃宏さん)
この”不思議”なパビリオンを手掛けているのが、岐阜県出身のデータサイエンティスト・宮田裕章さんです。
自然の中で過ごした幼少期の思い出が、今回のパビリオンのコンセプトにつながっているといいます。
「岐阜では学校帰りに用水路に葉っぱを浮かべてレースをしたり。すごく楽しかったし、自然のつながりをポジティブに感じる。岐阜であり中部地域、東海地方の暮らしは僕の中で原体験のひとつ」(宮田さん)
屋根や壁が無い、斬新なデザインについては…
「ともに空を見て未来を考えながらどう一歩を歩んでいくか。足元だけではなく未来を想像しながらともに集った人たちとどう歩んでいくかを考える。どう感じるかは1人人違うのが面白いところ」(宮田さん)
2005年愛知万博
東海地方で調査「万博行きたい」と回答は2割
2005年、愛知県で開催された「愛・地球博」
計画当初の目標である1500万人を大きく上回る、約2200万人が来場しました。
今回の大阪・関西万博では、愛知万博を超える2800万人を想定の来場者としています。
三菱総合研究所が半年ごとに行っている万博に関する全国意識調査。去年10月の調査では「行きたい」と回答した人は24.0%。
開幕に向けて、万博への関心が高まっていくはずが逆に若干の減少傾向となっています。
東海地方に住む人を中心に、年末年始の間にメ~テレが実施した約11000人へのアンケートでは、盛り上がりについて「全く感じない」「あまり感じない」と答えた人は9割以上で、”関心の低さ”が浮き彫りとなっています。
大阪府・吉村知事に聞く
盛り上がり今一つ…吉村知事「開幕すれば関心高まる」
万博の”旗振り役”の一人、大阪府の吉村洋文知事にこの結果をぶつけると…
「(盛り上がりを)全く感じない、あまり感じないがあわせて9割ほど。どうやって機運を醸成していくのか?」(濱田アナ)
「まあ、正直なところだと思います。なかなか情報もない中で課題があるじゃないかということ全国報道で流れますので。万博の中身をこれからどんどん発信していくことが大事だと思っています」(吉村知事)
吉村知事が強調する「中身の情報発信」。これまでに発表されている展示内容は…
「実際に心臓のように動いているiPS細胞、これを肉眼で見るものを展示します。それを見た時に強烈なインスピレーションを感じると思うんですね。今は治らない病気もひょっとしたら治るかもしれない」(吉村知事)
このほかにも、3Dプリンターの技術を活用した「培養肉」や、入浴中にAIが健康チェックをしてくれる「人間洗濯機」など、万博のテーマ「いのち輝く未来社会」につながる技術が結集していると吉村知事は強調します。さらに…
「火星の石を展示します。火星の石は本邦初公開です。かけらにちょっと触れることが出来る」(吉村知事)
1970年の大阪万博では「月の石」が話題に。今回は南極で発見された世界最大級の「火星の石」を日本館で展示。一般に公開されるのは初めてです。
「現時点では万博の中身がまだ体験できない。実際に体験すると全然違うと思う。開幕して人々が経験するとバッと関心が広がると思います」
大阪・関西万博 会場の完成イメージ(提供:2025年日本国際博覧会協会)
「世界」「未来」体験できる万博に
前向きな姿勢を崩さない吉村知事。ただ、チケットの販売は低調です。
万博協会は、チケットの販売想定数を2300万枚としていて、そのうち前売り券の売り上げ目標を1400万枚としています。
しかし、1月15日時点でその販売実績は約756万枚と、目標の半分あまりにとどまっています。
さらに、メ~テレのアンケートでは、ほとんどの人が「チケットが高い」という印象を持っていました。20年前の愛知万博、前回のドバイ万博と比べても、高額に設定されています。
「半年しかやりません。期間限定です。50近い国々は独自のパビリオンを作ります。色とりどりで、そして個性豊かで、万博に行けば世界の地球儀がある。未来の地球儀がある。そういう意味で僕は(チケットは)安いと思うんですけどね」(吉村知事)
多くの人が行列をつくった愛知万博から20年。スマートフォンやSNSの普及で、現地に行かなくても、個人が手軽にたくさんの情報を手に入れられるようになりました。
そんな時代に開かれる「大阪・関西万博」の開催の意義は…?
「こんな未来社会があるのかということを体験できるという意味で、僕は自信を持って皆さんにおすすめしたい。ここで展示した技術が実装されていくような、社会が変わって素晴らしい世の中になったと、そう言われるような、そうなるような万博を実現したい」(吉村知事)