将来的には原発20基分相当に?国産の“曲がる太陽電池”最前線を取材

2024年12月23日 00:29
薄くて軽くて自由に曲げられる、次世代の太陽電池「ペロブスカイト」。政府は2040年に原発20基分に相当する発電規模を目指しています。来年は様々な場所で活用が始まり、「国産のペロブスカイト元年」になるとも言われています。(12月21日OA「サタデーステーション」より) ■大阪万博でも注目の的に 報告・山口豊アナウンサー 「巨大なリングが一周、大阪万博会場のパビリオンの周りを繋いでいます」 来年4月に開幕する大阪・関西万博の目玉のひとつ、大屋根リング。一周2キロ、直径およそ600mのリングの中には、各国のパビリオンなど、たくさんの建物が立ち並んでいます。 「未来社会の実験場」と言われる万博では、エレベーター(1853年・ニューヨーク万博)や電話(1876年・フィラデルフィア万博)、携帯電話のもとになったワイヤレステレホンや電気自動車(ともに1970年・大阪万博)など、私たちの生活を大きく変える新しい技術が公開されてきました。2025年の大阪・関西万博で注目されているのが「ペロブスカイト太陽電池」です。 報告・山口豊アナウンサー 「万博会場近くのバス停の屋根にはペロブスカイト太陽電池が設置されています。長さは250mにもなります」 万博に来た人の多くが最初に目にする場所に、世界最大規模のペロブスカイト太陽電池が設置されていました。 積水化学工業PVプロジェクト 森田健晴ヘッド 「発電したものを充電し、LEDライトに電気を送る。バス停は、全体で長さ1キロぐらいありますが、その電力を賄います」 ペロブスカイト太陽電池は重さ2キロと、子供でも持ち上げられるほど軽く、やわらかさも大きな特徴です。 積水化学工業PVプロジェクト 森田健晴ヘッド 「重さは従来型太陽電池の10分の1ぐらい。バス停の屋根も曲がった形状になっていますが、曲げて色々なところに設置できるのが特徴です」 その特徴をいかし、万博会場のパビリオンでは、たくさんのペロブスカイトが天井からぶら下げられていました。 大阪パビリオン 福田篤弘建築整備課長 「全部で219枚、設置しています。今までの太陽光パネルは非常に重かったが、ペロブスカイトはどんなところにでもぶら下げられ、設置できることを表現するために、大勢の人に見てもらえる場所に設置しました」 また、弱い光でも発電できるという特徴を生かし、パビリオン館内で使う電気の一部を作り出しています。「地面や丈夫な建物の屋根に、南向きに設置する」という既成概念を打ち砕く使い方です。 ■目指せエネルギーの地産地消 大規模な太陽光発電を行う場合、地方にメガソーラーをつくり、送電線で大都市まで送ることが必要でしたが、そのあり方も大きく変わるかもしれません。 高層ビルが立ち並ぶ大阪市の中心部で、ビルの壁にペロブスカイトが設置されていました。積水化学工業のビルの壁で発電している電気は、実際にオフィスで使われています。 積水化学工業PVプロジェクト 森田健晴ヘッド 「1m角のペロブスカイト太陽電池を48枚並べて発電しています。今までの太陽電池は、出来た電力をどこかに買い取ってもらう考え方だったんですが、これからは電気をたくさん使う所で、その場で作っていく。運ぶ費用もいらなくなるので、地産地消になります」 今月17日に経済産業省が示した計画では、2040年度に、電力の4割から5割を再生可能エネルギーでまかなうとし、ペロブスカイトを原発20基分まで普及させることを目指すとしています。 山口豊アナウンサー 「2040年に原発20基分が可能だと思いますか?」 積水化学工業PVプロジェクト 森田健晴ヘッド 「本当に可能だと思うし、目指さないといけないと思います」 ■“発電するガラス”で変わる暮らし ペロブスカイト太陽電池は、家庭にどのような革命をもたらすのでしょうか。モデルハウスのベランダには、あいだにペロブスカイトを挟んだガラスが使われていました。 パナソニックHD ペロブスカイトPV開発部 金子幸広部長 「通常のバルコニーに使われているガラスの代わりにつけています」 今はまだ実証実験の段階だといいますが、試験販売を2026年に始める方針だといいます。 パナソニックHD ペロブスカイトPV開発部 金子幸広部長 「ペロブスカイトは両面から発電できるので、朝日の場合は東側からの光で発電します。今度夕方になると西側からの光で発電するので、1枚で朝と晩、両方発電できます。色々なところに使われているガラスを、そのまま太陽電池化できる技術です。世の中にあるガラスは全て置き換えられます」 ■量産化のカギは?実は原材料のヨウ素大国 山口豊アナウンサー 「可能性が広がるペロブスカイト太陽電池ですが、高島さん触ってみてください」 高島彩キャスター 「本当に薄いですし、ぐにゃぐにゃにも曲がるこの柔らかさ、いろいろ応用できそうですね」 山口豊アナウンサー 「軽いからどこにでも持ち運べますよね。柳澤さんいかがでしょう」 ジャーナリスト柳澤秀夫氏 「発電能力という意味では従来のパネルに比べて、2~3倍ぐらい期待できそうなんですかね」 山口豊アナウンサー 「そこまではいかないんですが、すでに従来の太陽光パネルと同じくらいまで上がってきた。でも、今まで付けられなかった壁などにも付けられますから、これの価値は非常に大きいと思うんですね。積水化学ではこれと同じか、もう一回り大きいくらいのものを2025年後半に販売する予定です。最初は政府の建物など公的機関向けに販売するということです。気になる値段ですが、最初は恐らく高くなります。しかし2030年代前半には、設置から廃棄までのトータルで見ると、いま普及している一般の太陽光パネルと同じくらいまで安くできるということなんです」 高島彩キャスター 「安くできるということは、たくさん作らないとダメですね」 山口豊アナウンサー 「そこが大事で、量産化が鍵を握ってくるんですが、量産化において非常に欠かせないのが原材料のヨウ素で、実は日本はヨウ素大国で生産量で世界2位。埋蔵量では世界の8割のヨウ素が日本にある資源大国なんです。このヨウ素を使えるということが日本のペロブスカイト開発に有利に働くんですね」 高島彩キャスター 「日本発の新しい産業として期待が持てますね」 山口豊アナウンサー 「国際競争に勝つ必要があって、いま振り返ると2000年代初頭まで一般の太陽光パネルは、日本が世界シェアの5割を占めていたんです。ところがその後、中国は原料になる金属シリコンも豊富にあることもあり、サプライチェーンを構成して世界市場を席捲し、いま8割は中国製になってしまいました。しかしペロブスカイトの場合は、日本に原料のヨウ素がある。日本でサプライチェーンを形成する。そして国内だけでなく海外、中国にも逆に輸出していく。そういうことを視野に経済産業省も全面的にバックアップしようとしているんです」 ジャーナリスト柳澤秀夫氏 「“耐久性に課題が残る”ということを聞いてるんですが、解決する道筋は見えてきてるんですか」 山口豊アナウンサー 「少しずつ見えてきました。積水化学によると、大体10年ぐらいの耐久性は見えてきている。その先ですが、実はこれまで技術開発の段階なんですが、20年くらいまではもつかもしれないというのが、来年ぐらいに見えてくるかもしれないということなんですね」 ジャーナリスト柳澤秀夫氏 「“20年たったらゴミになってしまう”という問題はどうするんですか」 山口豊アナウンサー 「ペロブスカイト太陽電池には有害物質の鉛も使われているんですが、ペロブスカイトの発明者である桐蔭横浜大学の宮坂力教授の研究室では、その鉛を分離する技術の確立に成功しました。鉛はエンジン車のバッテリーにも使われていて、法律で回収するように義務づけられているので、エコシステムをペロブスカイトの発売に合わせて作り上げていくことが大事で、いま国もそこに向けて動き始めています」 高島彩キャスター 「最後までしっかりと責任を持つのは大事ですね。それにしてもこの薄さ、いろいろなアイデア出てきそうですね」 山口豊アナウンサー 「アイデア次第で、限りなく大きな市場へと広がって日本を豊かにしますので、ぜひ皆さんで国産品を応援してください」

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