「地域の人の協力が大事」“開発と自然保護”課題も…国立公園に“宿泊施設”誘致へ
2024年07月20日 10:50
![](/themes/nagoyatv_pc/news/image/ann/000361052_640.jpg)
岸田総理は19日、全国に35カ所、すべての国立公園で、宿泊施設の誘致などによる魅力向上の取り組みを進めるよう指示しました。
岸田総理
「国立公園制度100年を迎える2031年までに、地域の理解と環境保全を前提に、世界水準のナショナルパーク化を実現すべく、民間活用による魅力向上事業を実施してください」
政府は、2016年から検討を進めていました。
すでにモデル事業として、青森県の十和田八幡平国立公園で動き出しています。
放置されていた廃屋を撤去した跡地を、自然の中でさまざまな体験ができる滞在型施設を誘致する計画が、今年3月に決まりました。こうした開発をすべての国立公園に広げる方針ですが、国立公園は“自然公園法”で守られているため、簡単ではありません。
環境大臣は、「地域の理解」を強調します。
伊藤環境大臣
「高級リゾートホテルに限定したものではない。地域の理解そして、環境保全、これを前提に」
群馬・福島・栃木・新潟の4県にまたがる『尾瀬国立公園』。
尾瀬のふもとで40年前から営む尾瀬岩鞍リゾートホテル。家族連れに人気があり、インバウンドの観光客は1割ほどだといいます。このホテルでは、尾瀬国立公園の木道の廃材を使ってパンフレットをつくるなど、環境に配慮した取り組みをしています。
尾瀬岩鞍リゾートホテル・星野竜次さん
「お客さまの人数が多い場合は、ここで私どもがついてゴミの分別をお願いしている」
入山する観光客に山の注意事項を伝えることも続けています。
尾瀬岩鞍リゾートホテル・星野竜次さん
「観光客が増えればという期待もあるけど、尾瀬の自然を今まで我々が守っていた通り、守っていただけるのか、不安も正直ある」
森だけでなく、水にも恵まれている尾瀬は、その豊かな生態系から『特別天然記念物』に指定されています。ここには、車では来られません。
地元の人
「安易な旅行気分で来て、軽装で入って、事故が起こることは多分に考えられますよね」
地元の人
「観光客が増えるのは確かに良いことでしょうけど、以前はオーバーツーリズムで破壊されたのでいま、復元している。そうなっても困る」
群馬県尾瀬保全推進室長・吉田利佳さん
「いままで尾瀬は、水力発電の計画や、道路開設の話が立ち上がっては、自然保護活動が起こり、守ってきた歴史というか、思いのある方が多いので、かなり反対の意見をもらうことになると思う」
空前のハイキングブームのころ、困った住民が始めた『ごみ持ち帰り運動』は、全国に広がりました。
尾瀬の象徴“木道”も人の手でつくります。人々が泥んこになって生態系を守っています。
群馬県尾瀬保全推進室長・吉田利佳さん
「35ある国立公園が一律同じ状況ではない。周辺地域の実情に合った保護と活用の好循環が生まれるような仕組み作りを、それぞれの国立公園の特色を生かして検討を進めてもらえれば」
◆政府が『世界水準のナショナルパーク化』を目指す一方で、地方からは、突然のことに戸惑いの声も上がっています。国立公園の在り方が変わっていくことになるのでしょうか。
そもそも“国立公園”とは何か。位置づけを見てみます。
法律に基づき、国が管轄をしていて、“自然保護と持続可能な利用の両立”を掲げています。国立公園に“手を加える”場合には、申請や届け出が必要で、ホテルなどの建設といった開発行為を規制しています。
“国が保護”してきたものに“国が手を加える”と、これまでと逆方向に舵を切ったようにみえますが、その背景に何があるのでしょうか。
国立公園の問題に詳しい東京農工大学・土屋俊幸名誉教授に聞きました。
土屋教授は「きっかけは、2003年の“観光立国宣言”。政府がインバウンドを重視するようになりました。その後、国立公園を活用して、外国の富裕層に向けた宿泊施設を作り、外貨を落としてもらうことを目指すようになった」といいます。
自然保護との両立は可能なのでしょうか。
土屋教授は「自然保護を進めるうえで大事なのは、地域の人々の協力。宿泊施設だけでなく、自然保護のための施設の整備や施策も進むのであれば、メリットになる可能性はある。ただ、一律で“すべての国立公園に”というのは、容易ではない。利用客が増えれば、オーバーツーリズムの深刻化の問題も出てくるため、自然保護がより一層、求められる。そもそも国立公園は、現状でも、登山道の維持・管理や野生の動植物を守り切れているのかなど、問題はさまざま。問題をそのままにしたまま、“客を入れる”ことが、順番として先で良いのか疑問」と話します。
これまでに入っているニュース
-
墜落の海自ヘリ1機を海底で発見 今年4月8人死亡の墜落事故で7月22日
-
差別根絶に向け岸田総理トップの対策推進本部設置へ 29日初会合 全閣僚出席で7月22日
-
バイデン氏“撤退”に岸田総理、硬い表情 総理周辺「仕方ない」7月22日
-
岸田総理、バイデン氏撤退表明にコメント7月22日
-
林官房長官 将来の総裁選に意欲「志を持ち続け精進を続けていきたい」7月22日
-
自民・石破元幹事長 総裁選出馬の判断は「お盆が1つのめど」7月22日
-
自民・茂木幹事長「うまくマネージできる」トランプ氏との外交に自信示す7月21日
-
「地域の人の協力が大事」“開発と自然保護”課題も…国立公園に“宿泊施設”誘致へ7月20日
-
岸田総理「循環経済」へ閣僚会議新設を表明 資源の再利用促進へ今月に初会合7月20日
-
「今のところ連絡はない」政府サイバー担当者 世界各国で通信障害7月19日
-
公選法改正案 秋の臨時国会で提出へ 岸田総理と公明・山口代表が会談7月19日
-
「夏の間に感染拡大の可能性」と警戒感 林長官 コロナ感染者が10週連続で増加7月19日
-
政権交代見据え立憲・泉代表が他の野党幹部と協議開始へ7月19日
-
木原防衛大臣「詳しく公表すべきだった」手当不正受給で海自元隊員4人逮捕受け7月19日
-
日台海保が千葉沖で初の合同訓練実施 林長官「中国念頭に置いたものではない」7月19日
-
防衛省不祥事をめぐり衆・参で閉会中審査開催へ7月19日
-
潜水手当不正で逮捕者公表せず 防衛大臣続投で「信頼回復を」7月19日
-
“ポスター問題”受け自公 秋の臨時国会での公選法改正で一致7月19日
-
6月の消費者物価指数は2.6%上昇 電気ガスの補助減額でエネルギー価格が上昇7月19日
-
海自 潜水手当不正受給 元隊員4人逮捕を公表せず7月19日
-
太平洋・島サミット首脳宣言「武力による現状変更の試みに反対」7月19日
-
立憲・斎藤国対委員長「防衛大臣は辞任検討を」 一連の不祥事受け7月18日
-
岸田総理「強い危機感」 特捜部が堀井衆院議員を家宅捜索7月18日
-
林官房長官「日銀の金融政策は為替誘導が目的でない」河野大臣の“利上げ要求”発言に7月18日
-
手りゅう弾死亡事故“正しい退避行動の認識ない” 陸自が調査報告書を公表7月18日
-
政府「事実なら受け入れられない」ルーマニアの駐ロ公使が“北方領土訪問”報道7月18日
-
自衛隊と米韓軍のトップが会談 北朝鮮・ロシアの軍事協力非難の共同声明7月18日
-
堀井議員“家宅捜索”に共産・田村委員長「離党で済まされない」議員辞職求める考え7月18日
-
公明党 公職選挙法改正に向け初会合 ポスター問題など議論7月18日
-
堀井学議員が自民党を離党 茂木幹事長「極めて遺憾」7月18日
-
ルーマニア駐ロ公使が北方領土訪問「事実関係確認し適切に対応」林長官7月18日
-
【速報】家宅捜索を受けた堀井学衆院議員の離党届を自民党が受理7月18日
-
林長官「一人一人の政治家が適正に対応を」堀井学議員の家宅捜索受け7月18日
-
中国念頭に「力による現状変更の試みに反対」島サミット 首脳宣言採択へ7月18日
-
総理「二度と過ちを繰り返さない」 偏見・差別の根絶に新体制構築へ 旧優生保護法巡り7月18日
-
晩さん会で能登復興アピールも7月18日
-
旧優生保護法の原告らに「痛恨の極み」岸田総理が直接謝罪7月17日
-
衆院情報監視審査会 防衛省の不祥事など議長へ勧告要請7月17日
-
岸田総理「心から申し訳なく思う」頭を下げ謝罪 旧優生保護法訴訟の原告らと面会7月17日
-
【中継】政府「除斥期間」取り下げへ調整 旧優生保護法めぐり7月17日
-
都議補選の惨敗で引責…自民・萩生田氏が都連会長を辞任へ7月17日
-
「太平洋・島サミット」 岸田総理が4カ国の首脳らと会談7月17日
-
岸田総理 旧優生保護法原告らと初めて面会 17日に総理官邸で7月17日
-
ネット上の偽・誤情報対策の法整備を 総務省に有識者らが提言まとめる7月17日
-
「勝つ気ある?」立憲民主党に支持者が苦言7月16日
-
萩生田氏の都連会長辞任は「不思議だ」 立憲・岡田氏が疑問呈す7月16日
-
総裁選は「9月20~29日のいずれか」国連総会とは無関係 自民・茂木幹事長7月16日
-
自民・萩生田氏が都連会長を辞任へ 都議補選惨敗受け7月16日
-
トランプ氏の銃撃事件受け警戒を強化「街頭演説会場は危険度増す」林長官7月16日
-
「太平洋・島サミット」開幕へ 中国など念頭に海洋安保の関係強化7月16日
-
旧優生保護法巡り参議院 謝罪決議や救済を議論7月16日