同性婚を考える…どんな「ふうふ」も平等にと願う愛知の同性カップル 裁判所も判断分かれる 

2023年11月22日 19:05
11月22日は「いいふうふの日」です。様々な、そしてそれぞれの家族のかたちがある中で現在の法律で認められていないのが「同性同士の結婚」です。性別に関係なく、どんな「ふうふ」も平等に生活できるようにと願う2人の「結婚のかたち」を取材しました。

鷹見彰一さん(仮名・左)と大野利政さん(仮名)

 愛知県内にあるマンションで一緒に暮らしている鷹見彰一さん(仮名)と大野利政さん(仮名)の2人は同性のカップルです。

 2016年に出会った2人は動物や植物が好きという共通点はありますが、性格は正反対。

 だからこそお互いの足りない部分を補いあえる信頼関係でつながっているといいます。

 出会ってから1年、大野さんから鷹見さんにプロポーズ。

 生涯をともにすると決めた2人ですが「結婚」はできません。

 法律では同性同士の結婚が認められていないからです。

大野利政さん(仮名):
「国が認めていないということは同居しているだけの他人になってしまう」
 

鷹見さんと大野さんが作成した公正証書

 2人で決めた“結婚記念日”は2018年1月11日、パートナー関係にあることを証明する「公正証書」を結んだ日です。

 10万円以上の費用をかけて2人でつくりました。

 手続きなどで結婚関係の証明が必要な場合、この「公正証書」を使って説明するといいますが――

大野さん:
「保険やクレジットカードなど大きく人生にかかわるところで選択の時点で絞られてしまう。『公正証書がある』と言ってみるしかない、ハードルが高い」

 また、どちらかが病気や事故にあったとき、「ふうふ」と認められないことから病院での面会などがスムーズにいかない不安もあるといいます。

鷹見彰一さん(仮名):
「1分1秒を争って心配したい、一緒にいたいというときに公正証書を取りに行ってパートナーとの関係を説明する間に(パートナーが)亡くなってしまうこともある。同性同士の結婚をどう表すか」
 

豊田市ファミリーシップ宣言の申請をした賢一さん(左)と龍也さん

自治体単位で進む「パートナーシップ制度」
 ここ数年、自治体単位では同性カップルなどの関係を「結婚に相当する関係」と認め、独自の証明書などを発行する「パートナーシップ制度」の導入が進んでいます。

 2021年に開始した「豊田市ファミリーシップ宣言」。

 市内に住む賢一さんと龍也さんは、制度が始まってすぐ申請したといいます。

龍也さん:
「法律上の結婚まではいかないがファミリーシップで一緒になれる」

 制度の利用から2年、自治体から認められ「家族」として一緒に過ごせることがよかったと話す一方で、課題もあるといいます。

賢一さん:
「年齢を重ねて病気をしたり、老後に使えるときはあるかもしれないが、現状メリットはないのかな」
 

豊田市ファミリーシップ宣言

 豊田市の制度を利用すれば、同性カップルなどに対して高齢者向けの公営住宅への入居など、市が取り扱うサービスを結婚関係と同様に受けられます。

 しかし、法的な効力のない自治体レベルの制度では、配偶者控除などの国のサービスは対象になりません。
 

エヴァン・ウォルフソン弁護士

海外の識者からは「遅れ」の指摘
 進まぬ日本の同性婚への対応。

 今年G7広島サミットが開催されましたが、7カ国の中で同性婚やパートナーシップ制度を国として法的に導入していないのは日本だけです。

 アメリカで同性婚の法制化に取り組んだエヴァン・ウォルフソン弁護士も日本の「遅れ」を指摘します。

エヴァン・ウォルフソン弁護士:
「34の国が同性婚の自由を認めていて、その規模は10億人を超える。こうした国の経験が同性婚が家族を助け、だれも傷つけないことの証明をしている。今、各国が前進しているところに日本も参加すべきだ」
 

各地裁が出した判決

同性婚について地裁が出した判決は判断が分かれる
 これまでに国内5カ所で「同性同士の結婚が認められないのは憲法違反」だとして当事者らが訴えを起こしています。

 それぞれの地裁が出した判決は、名古屋と札幌が「違憲」、東京と福岡が「違憲状態」、大阪が「合憲」と判断が分かれています。

 愛知県に住む鷹見さんと大野さんが原告となった名古屋の裁判。

 5月に言い渡された地裁判決では、法の下の平等を定めた憲法14条などに違反するという判断が下されましたが――

鷹見さん:「主張の8~9割は認めてくれたが100%ではなかった」
大野さん:「判決が出たあとの国の動きとして何かがあるわけでも法的なところで動きがあるわけでもない」

 2人は控訴することを決め、裁判は今も続いています。
 

「養育里親」として子どもとの生活を始める

家族3人での新たな生活
 この夏、2人に大きな変化が訪れました。子どもとの3人での生活です。

 結婚をしていない2人は親権を持つ「養子縁組」の制度は利用できません。

 一定期間子どもを家庭で預かり育てる「養育里親」として子どもを育てています。

 それぞれの家族のかたち、ふうふのかたちに性別は関係ない、それが思いです。

大野さん:
「婚姻という制度を私たちが利用することで、話を聞いた人たちが不利益を感じるかどうか。個人個人の幸せを追求することは、ほかの人たちが幸せを追求することと同じで、(周囲に)不利益を与えるものではないと理解して応援してほしい」

(11月22日15:40~放送メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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