震災で大打撃の輪島塗…伝統を絶やさぬために職人らが名古屋で作品展

2024年2月21日 17:52
能登半島地震で地元の伝統工芸も大きな打撃を受けています。石川県輪島市の「輪島塗」の職人たちが伝統を途絶えさせまいと奮闘しています。

日本を代表する漆器「輪島塗」

 何層にも塗り重ねられた、深い色とつや、美しい装飾。

 日本を代表する漆器、石川県輪島市の「輪島塗」です。

 21日から輪島塗の職人たちによる作品展「WAJIMANOMIRAI 輪島の未来のために」が名古屋栄三越で始まりました。

 職人9人と工房・漆器店10社による計600点の作品が展示、販売されています。

「輪島塗の良いところは直せるところで、金継ぎとか塗り直しで直せるので」(辻椀木地木工芸 辻正尭さん)

 輪島塗の木地を作る工房「辻椀木地木工芸」の職人、辻正尭さん。

 能登半島地震で工房が大きな被害を受けました。
 

辻さんの工房(石川・輪島市 10日)

辻さん「お客さんの顔を見て話すと次の仕事につながるし、うれしい」
「ここは全部こういった荒型が置いてある部屋なんですけど、全て散乱していてというか」(辻さん)

 辻さんの工房は建物の被害はなかったものの、木地の型や見本が散乱しています。

「普段、輪島にいると悲惨な光景を見ることが多いんですけど、直接お客さんの顔を見て話すと次の仕事につながるし、うれしいですね」(辻さん)

 今回の作品展には辻さんを含め、3人の職人が会場を訪れています。

 3人とも能登半島地震で工房などが被災しました。
 

古込さんは自宅兼工房が被災

輪島塗の事業所の約8割が大きな被害を受けたか
「毎日生きることに必死で企画を考え動き始めたことで、ある意味この企画があったからこそ自分が保てた」(漆芸家 古込和孝さん)

 漆芸家の古込和孝さんは自宅を兼ねる工房は建物の基礎が歪んでしまい住めなくなりました。

「だいぶ片付けたんですけど、本棚とかも全部倒れちゃって、商品もそこにちょっとあるんですけど」(古込さん)

 輪島塗の事業所の約8割が大きな被害に遭ったとみられ、古込さんによると被害の大きさから廃業を考える作家や職人も少なくないそうです。
 

輪島塗職人たちの作品展

「僕らで途絶えさせていいのか」全国の百貨店での展示販売を企画
 こうした中、古込さんは輪島塗を製造・販売する漆器工房を訪れ、地震で壊れなかった品物を集めて、全国の百貨店で展示会を開き、販売しようと提案しました。

「僕らの業界はここ数年(担い手が)ものすごく少なくなったので、(この地震で)10分の1に減ったとしたらもう輪島塗自体がなくなってしまうと思うと、つむいできてもらったものを僕らで途絶えさせていいのかっていうのがあって」(古込さん)

 「輪島塗に関わる人の励みになってほしい」と古込さんはこれまで個展を開いた百貨店に働きかけ、今回の展示会が決まりました。

「仕上がっていたものはギリギリ大丈夫で、つくっていた仕掛け品は仕事場にあった9割がダメに。漆と金が全部ダメで」(古込さん)
「古込さんと辻さんの作品を持っていてすごく大好きだったので、輪島がすごく心配で2人がいらっしゃるということで元気な姿を見たいと思って(来た)。ずっと続いてほしいと思います。沈金だったり螺鈿細工とか想像もつかない細かさなので、途絶えてしまうのはもったいない」(来店者)
 

漆芸家 古込和孝さん

後継者の育成も課題
 ふるさとが誇る伝統工芸を絶やしてはならない―。

 後継者の育成も課題のひとつです。

「僕たちが踏んばって次につながる人材を残すこと、(テーマを)輪島の未来のためにという大枠で決めたのは決して漆だけじゃなくて、輪島は漁業や観光で成り立っているので、もっと幅広くその人たちも巻き込んで街づくりをいちからしたい」(古込さん)

 名古屋での作品展は27日まで行われ、その後、全国8カ所で輪島塗を展示・販売する予定です。

(2月21日15:40~放送メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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