名古屋が誇る俳優・天野鎮雄さんしのび「大アマチン祭」 市内各地で演劇や難病啓発イベントなど

2024年10月14日 14:40
東海地方を代表する俳優で、ラジオパーソナリティーとしても活躍した天野鎮雄さんが87歳で世を去って1年。「アマチンさん」の愛称で親しまれた天野さんと縁が深かった人々が「大アマチン祭」と名付け、名古屋市で10~12月に演劇や朗読会、写真展などを開きます。

天野鎮雄さんと山田昌さん夫妻

 天野さんは名古屋市出身。1960年代に深夜ラジオ「ミッドナイト東海」のパーソナリティーとして一躍有名になり、難病患者や障害者、災害被災者らを支援するキャンペーンを展開しました。妻で俳優の山田昌さんらとともに名古屋に劇団「劇座」を設立し、国内外の名作を上演しました。2023年11月5日に亡くなり、山田昌さんも今年6月に世を去りました。
 

「秋のそら音」の稽古をする俳優たち。中央が伊沢勉さん

アマチンさん出演がかなわなかった舞台
 名古屋市内で8月から、「大アマチン祭」の公演の一つ「秋のそら音(ね)」の稽古が続いています。

主役は、妻を亡くして認知症を患った元高校教師の海原鏡太郎。83歳の彼が住む大邸宅を巡り、家族の思惑が交錯します。一方、海原は幼かった戦時中に命を助けられ、その後行方知れずになった「みっちゃん」を追い求めています。ある女性が海原の邸宅に現れ、家族は動揺。そしてその女性の話を聞いた海原に様々な記憶が蘇ってくる…というストーリーです。

 作・演出は斎藤敏明さん(64)。名古屋を拠点に活動する演出家で、天野さんとは40年来の付き合いです。2021年10月には天野さんの主演でシェイクスピアの「ザ・テンペスト」を演出しました。「秋のそら音」は、天野さんに海原役を演じてもらおうと斎藤さんが企画したオリジナル作品ですが、天野さんの死去でかないませんでした。

 今回、天野さんに代わって海原役を務めるのは、東海地方を拠点に活躍する俳優の伊沢勉さん。天野さんと長い付き合いで、斎藤さんの出演依頼に二つ返事で快諾してくれたといいます。このほか、天野さんが代表を務めた「劇座」のメンバーや、天野さんと舞台で共演したことがあるダンサーら、縁のある多くの俳優やスタッフが参加することになり、主演の伊沢さん以外はダブルキャストとなりました。
 

「秋のそら音」の稽古風景

演出家「チンさんと昌さんも見に来てくれるはず」
 斎藤さんは「チンさん(天野さん)は器用ではないけれど、唯一無二の存在感がある俳優でした。とても親しみのある方で、私たちと分け隔てなく付き合ってくれました」と振り返ります。「公演にはきっとチンさんと昌さんが見に来てくれるはず。2人に恥ずかしくない作品にしたい」と意気込んでいます。

「秋のそら音」は11月1日午後2時・午後6時半、2日午前11時・午後3時半、名古屋市西区花の木2丁目の西文化小劇場地下3階ホールで計4回上演されます。チケットは一般前売4000円、学生前売2500円。日時指定で自由席。障害者割引もあります。当日券は500円増。チケットの問い合わせは名古屋市西文化小劇場(052・523・0080)へ。
 

「大アマチン祭」のチラシ

難病救済イベントや写真展、しのぶ会も
 12月12~13日には、名古屋市東区東桜1丁目の愛知芸術文化センター大リハーサル室で、「愛知難病救済アマチン基金啓発イベント2024」が開かれます。
 天野さんは、ラジオパーソナリティー時代に呼びかけた募金をもとにできた「愛知難病救済基金」の理事長を亡くなるまで務めました。この基金は「愛知難病救済アマチン基金」と名称を変え、今後も活動を続けます。

 イベントの第1部は「手記を読む」と題し、パーキンソン病患者の手記を劇座のメンバーが朗読。第2部は演劇「文左衛門の事件簿」。江戸時代の尾張藩士、朝日文左衛門が記録した事件や噂話などを題材に、尾張名古屋の人々の暮らしぶりを再現する舞台です。12日は午後2時と午後6時半、13日は午後2時からで、基金への寄付金1000円で全席自由。難病患者と家族は無料です。会場には、NPO法人「愛知県難病団体連合会」に加盟する団体が、パネルで活動内容を紹介します。
 イベントの問い合わせは劇座(gekiza.mac@icloud.com)へ。

 「大アマチン祭」では、天野さんの舞台の姿を長年撮影してきた服部義安さんの写真展「役者、あまちん」(入場無料)が名古屋市中村区稲葉地町1丁目の演劇練習館アクテノンで10月16日~11月15日(月曜休館)に開かれるほか、「アマチンさん昌さんを偲(しの)ぶ会」が12月22日午後2時から名古屋市千種区吹上2丁目の中小企業振興会館「吹上ホール」で開かれる予定です(会費3000円)。

 ほかにも演劇公演や展覧会があり、詳しくは劇座ホームページ(https://gekiza.website/)で紹介されています。

(メ~テレ・山吉健太郎)
 

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