阪神・淡路大震災から30年 教訓を考える 地震発生から15分以内に圧死 【暮らしの防災】

2025年1月19日 14:01
いまから30年前、1995年1月17日(火)午前5時46分に阪神・淡路大震災が発生しました。日本の災害行政・災害対策・被災者対策・災害研究など、全てを根本的に見直す契機となる大災害です。

阪神淡路大震災・兵庫県神戸市長田区(1995年1月)映像提供:ABCテレビ

 この地震を契機に日本は「地震の活動期」に入ったとされています。

 2024年1月1日の能登半島地震の被害を見て「阪神・淡路の被害と似ている部分がある」という指摘もあります。

 つまり教訓が活かされていない可能性があります。改めて阪神・淡路大震災について考えます。
 

兵庫県監察医務死因調査統計年報 平成7年版に基づき作成

地震発生から15分以内に圧死
 人的被害は、死者6434人 (消防庁調べ 2006年5月)にもなります。阪神・淡路大震災の報道では、よく火災の映像が使われます。

 このため火災による被害や死者に注目が行きがちです。しかし「神戸市内における検死統計」によると、亡くなった方の死因の約8割は圧死です。

 倒壊した建物、倒れてきた家具などによるものでした。しかも死者の9割以上の死亡推定時刻は6時までで、発生から15分以内に亡くなっていたことになります。
 

兵庫県医師会HPから引用(厚生労働省人口動態統計による)

社会的弱者が犠牲に
 死者は、年齢別では高齢者が多く、20代も多くなっています。

 高齢の方は耐震性の低い古い住宅に住んでいたと思われます。では20代はなぜでしょう。

 20〜24歳というと大学生や就職したばかり。収入も低く、下宿・木造アパートなど、やはり耐震性が低い建物に住んでいたと考えられます。

 いずれも経済的に厳しい「社会的弱者」です。災害は社会の弱点を浮き彫りにします。
 

神戸市の仮設住宅 1997年1月

孤独死
 せっかく大地震から命を守れたのに、その後、亡くなった方が多数出ました。残念でなりません。避難所、仮設住宅、災害復興公営住宅などで亡くなっています。

 仮設住宅、災害復興公営住宅では孤独死が多く社会問題になりました。震災そのものや、その後の仮設住宅・復興住宅への部屋の割り振りで、地域のコミュニティが壊され、ご近所づきあいが無くなってしまったのも、被災者の孤立化を招いた大きな原因とされています。

 内閣府の資料では「50代と60代の男性は、孤独死のハイリスクグループであるとされた」「死亡者の多くは、無職または不安定なパート労働者だった」「自宅への閉じこもり・対人関係の断絶により、過度のアルコール摂取、不十分な栄養、慢性疾患の放置」などの結果が孤独死となったとされています。
 

日常のあいさつ活動から始める

身の回りから減災・防災対策を
 この「暮らしの防災」や、さまざまな防災サイトで伝える「地震対策」は、いつもほぼ同じです。なーんだ、またかと思われる方も多いかと思います。しかし以下の対策は、防災・減災の出発点です。

・部屋の耐震対策
・建物(家)の耐震補強
・家族分の食料と飲料水の備蓄
・ご近所づきあいを大切にする

 このような対策は、実は阪神・淡路大震災からの教訓です。今回はその理由となるデータを示してみました。すぐできる対策もあればお金や時間、手間がかかるものがあります。

 例えばご近所づきあいを・・・というと町内会活動に参加するのが望ましいのですが、やはりこれも大変な場合があります。ですので「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」という、日常のあいさつ活動から始めてみてください。

 一気にすべてはできませんし、経費の問題もあります。とは言え、いつかは南海トラフ地震が来ますし、日本中どこでも活断層による地震の恐れもあります。まずは出来ることからやっていただければと考えます。

    ◇

 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕
 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。
 

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