「春バテ」という言葉を知っていますか？春は、一年の中でも特に身体への負担が多い季節です。寒暖差や新生活のストレスなどにより、朝起きるのが辛かったり、頭痛や肩こりなどの不調を感じる方も多いのではないしょうか。そういった症状を感じている方は、もしかしたら春バテかもしれません。

　春は寒暖差などの気温の変化が大きく、また新生活の始まりなどで生活も大きく変化する季節です。名古屋市天白区にある「にん内科」の任隆光院長は、冬から春にかけて季節の変わり目に体に起こる、自律神経の乱れや失調による症状を「春バテ」だと診断しています。

　主な春バテの症状として、基本的に以下の症状が当てはまります。

　・朝起きるのが辛い
　・イライラする
　・寝つきが悪く熟睡できない
　・日中の眠気
　・食欲減退
　・息がしにくい、呼吸が浅くなる
　・立ちくらみ
　・憂鬱感、気分の落ち込み
　・頭痛、肩こり
　・冷え、浮腫み
　・下痢、便秘

　そもそも寒暖差とは、1日の最高気温と最低気温の差や、前日との差、室内外の温度差が7℃以上あることをいいます。なぜ寒暖差が大きいと自律神経が乱れてしまうのか、その理由として自律神経と内分泌系と免疫系の相互作用が影響していると任院長は語ります。

　「人間にはホメオスタシスというものがあり、自律神経と内分泌系と免疫系の相互作用で体内の状態を一定に保つ働きをしています。そのため多少の変化には対応できますが、春は寒暖差が最も激しく、低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わり気圧変動も大きい季節です。それに加え、新年度を迎えたことによる環境の変化も加わり、交感神経が優位な状態が続きやすく過度なエネルギー消費が増え、それにより疲れやすさを感じます」(にん内科　任隆光院長)

　また寒暖差や気圧の変化で、自律神経である交感神経と副交感神経が目まぐるしく変動することにより自律神経が乱れ、最終的に自律神経がうまく働かなくなることで、自律神経の失調が起きてしまうのだそうです。

　自律神経が乱れると、心血管系の異常が出やすくなるといいます。

　「自律神経は、体が活動的に働く交感神経と、リラックスさせる副交感神経から成り立ち、バランスをとって様々な臓器の働きをコントロールしています。特に心臓は血管に及ぼす影響が強く、交感神経が過剰に働くとカテコラミンが大量に分泌され、心拍数や血圧の上昇などにより心血管系の異常もきたしやすくなります」(任院長)

　そのため、「春バテを放置しておくのは危険」です。

　では、春バテを予防するにはどうすればいいのでしょうか。

　任院長は「自律神経を安定させること」、「規則正しい生活を通して気持ちを安定させることに加え、冷えの対策をすること」が重要だと語ります。

　具体的な予防法の一つとして、まず「十分な睡眠時間の確保」があります。

　睡眠は自律神経に与える影響が大きいため、決まった時間に寝て、決まった時間に起きるといった質のいい睡眠を心がけましょう。

　特に寝る2、3時間前に38℃から40℃のぬるめのお湯にゆったりと浸かることで、血液の循環が良くなり、リラックス効果が高まります。それにより睡眠にいい影響を与えてくれるので、寝つきが悪いという方は試してみてください。

　また、散歩やストレッチなど「軽い運動をする」ことも効果的です。

　「朝の時間帯に、自然の中で散歩をすることがおすすめです。脳がリラックスでき、また太陽の光を浴びることでセロトニンがでます。セロトニンは脳内神経物質で“幸せホルモン”と呼ばれていて、自律神経を整える働きがあり、睡眠にも効果があります」(任院長)

　散歩など運動以外にも、「規則正しく三度の食事を食べ、栄養バランスの取れた食事を摂ること」も予防につながると任院長は言います。

　「ビタミンの摂取不足に注意が必要です。自律神経を整えるには、特に神経への働きに重要なビタミンB群を多くとるようにしましょう。腸内環境を整える食事を意識してください」(任院長)

　また冷え対策としてカーディガンや上着を活用し、冷える時間帯は3つの首(手首、足首、首)を温めることが効果的とのこと。部屋の温度にも注意し、特に脱衣所や浴室、可能であればトイレもあたためておくことがおすすめなんだそう。寒いと感じたら、温かいものを飲むのも有効です。

　これらの対策以外にも、読書や音楽を聴いたり、植物を触る、飼っているペットと過ごすなど、1日の中でリラックスできる時間を設けて、ストレスを貯めないようにすることも、春バテの予防には効果的だということです。

　新年度は生活リズムが乱れやすい時期のため、改めて食生活や生活態度を見直して整えることが大切です。また春バテだと思ったら、思わぬ病気が隠れている場合もあります。症状が長引いたり、悪化した際は医療機関を受診しましょう。

　(メ～テレ　飯田莉穂)