”危険運転”後に男はドラレコのカードを捨てた…クラブ帰りの飲酒運転で女性(19)死亡 きょう判決 

2024年10月28日 07:01

去年5月、名古屋市内のクラブから帰宅途中の男女5人が乗った車が橋の欄干に衝突。19歳の女性が死亡し、ほか同乗の男性2人も重傷を負った事故がありました。 車を飲酒運転していたとされる当時19歳の男は危険運転致死傷罪などに問われ、10月28日午後、名古屋地裁で判決が言い渡されます。

事故車両(去年5月)

■「クラブで飲酒し車を運転した」

 去年5月14日午前6時ごろ、名古屋市東区の矢田川橋の欄干に赤色の国産スポーツカーが激突しました。右側後部付近が大きくへこみ、リヤバンパーは外れ衝突の激しさを物語っています。

 運転していたとされるのは当時19歳の無職の男。中学校の同級生の男女4人を乗せていました。この事故で後部座席にいた女性が死亡、ほか男性2人が顎の骨を折ったり、頭の骨を折ったりする重傷を負いました。

 男は逮捕直後、警察の調べに「午前5時ごろまで栄のクラブで飲酒し、車を運転した」と供述していました。

 そして事故から約半年が経った去年12月、名古屋地検は男を起訴。今年10月17日から名古屋地裁で裁判員裁判が始まりました。

 男が起訴された罪は酒気帯び運転による「道交法違反」、「危険運転致死傷」、「犯人隠避教唆」の3つです。

 起訴内容では、男は酒気を帯びた状態で時速100キロを超えて車を運転し事故を起こして3人を死傷させたうえ、その罪から逃れようと車の持ち主で事件時に助手席に座っていた同級生に運転の身代わりを依頼したとされています。

 初公判で男は「スピードが何キロ出ていたかはわからないが、かなり出ていたと思う。それ以外は間違いない」などと起訴内容を概ね認めたことで、裁判の争点は量刑に絞られました。

 

事故現場(去年5月)

■事故後、ドラレコのSDカードを捨てる

 検察側の冒頭陳述では、男は去年5月13日夜に同級生らと名古屋市中区を訪れました。日付が変わったあと中区内のコンビニ店で酒を購入し付近で飲酒。その後に入店したクラブでも酒を飲んだ際に偶然、同級生の女性と出会いました。

 帰宅の際、男は同級生の車を運転したいと言って運転席に座り、定員4人の車にこの女性を右側後部座席に座らせて5人で地元の愛知県春日井市に向かって出発。パトカーを見かけたため時速76キロ~115キロで走行しました。

 そして車は事故現場へ。この時、道路は雨で濡れて滑りやすくなっている状態でした。車は時速40キロに制限された左カーブの道路に時速約106キロ~111キロで進入、曲がり切れずにスピンして橋の欄干に車の右側後部に衝突しました。左側後部座席に座っていた男性は窓から投げ出されるほどの衝撃でした。

 男は助手席にいた同級生に犯人の身代わりを依頼。さらにドライブレコーダーからSDカードを抜き、橋から捨てました。

 事故を受けて現場に駆け付けた警察官が同級生と男を連行し、署での事情聴取を経て身代わりがばれて男は逮捕されました。裁判で検察側は「同乗者からスピードを落とすよう言われたものの、そのまま走行した」などと指摘しました。

 

事故車両(去年5月)

■繰り返していた飲酒運転

 弁護側からの被告人質問の際、「事故前に飲酒運転は何回ほどしたか」という問いに「20~30回ほどだと思います」と答えた男。事故当日はコンビニで買った度数の強い、いわゆる「ストロング缶」などを路上で飲んだあと、クラブでは「テキーラのショットを飲んだ」と述べました。

 帰宅途中にパトカーを見かけたときには「飲酒運転で逃げるわ」と車内で発言したといい、発言したときの心境を問われると「逃げることに必死だった」と振り返りました。

 男は現在、釈放されて家具製作所で働いているといいます。「毎週、事故現場を訪れ花を供えて手を合わせている」と述べ、今後の飲酒の意思については「ありません」と断言しました。

 

事故車両(去年5月)

■死亡した女性の母の思い

 証拠調べの際、検察側は死亡した女性の母親の調書を読み上げました。「元気で明るいが繊細な一面のある娘だった」、唐突に突き付けられた愛娘を失った事実に「2週間憔悴しきって起き上がることができなかった」と悲しみがつづられていました。

 また、「娘の腕にはクラブ側が未成年に(酒を提供しないために)巻くバンドがあったので娘は酒を飲んでいなかったと思う」、被告の男には「SDカードを投げて自分だけ助かることを考えている。絶対に許せない」と厳しく処罰するよう求めました。

 

名古屋地裁の法廷(10月17日撮影)

■男の最後の言葉

 23日、検察側は論告で改めて男に対して「いかに危険な運転をしたか」、「1人死亡2人重傷という結果の重大性」、「飲酒運転の発覚を免れようとした身勝手な動機」の観点から厳しく指弾しました。

 身代わりを立てたことについては「他人を巻き込んでまで責任を免れようと自己中心的な行為」として、事件前から事件後までの男の行動を批判。「事件後も裁判直前まで数回飲酒している」と指摘して、「後悔はしているが深い反省は見られない」などとして懲役10年を求刑しました。

弁護側は「事故当時のスピードは不明である」としたうえで「危険運転であることに争いはないが、危険運転の速度超過のなかでは軽いほうだと考えるべき」、身代わりを立てたことについても「事故当日に警察官に申告して罪を認めているため悪質とまでは言えない」などとして執行猶予付き判決を求めました。

男は最終陳述で「これからの僕の人生、被害者のことを思い続けていきたいと思います」と述べて結審しました。

判決は28日午後3時に言い渡されます。

 

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