名産アワビから「イセエビの町」に変貌 猛暑で生息域に異変も

2024年07月05日 21:33
■千葉“海のダイヤ”アワビに異変  記録的な猛暑は海の幸に大きな影響を与えています。  千葉県の南東部、外房に位置する「いすみ市」。今、地元の名産が危機的な状況に陥っています。  ウェットスーツを着た漁師たち。この地で、古くから続く伝統のアワビ漁です。房総半島で行われている素もぐり漁は、海底まで一気に潜り、岩場に潜むアワビを探します。  「海のダイヤ」とも呼ばれる「クロアワビ」。大きなものは、1個で4万円の値がつく高級食材です。ところが、アワビの漁獲量は以前に比べ、減少しています。  漁師たちが素潜りで海の中へ。潜ってアワビを探しますが。 アワビ漁師 「潮が速い。これだけで流れて行っちゃう」  潮の流れが速く、うまく潜ることができません。さらに別の問題も起き、漁師たちは船に戻ります。 齋正忠幸船長 「もやが出て向こうが真っ白」  水平線がかすむほど大気中に霧がかかっています。船が出る前には水平線や海岸の切り立った崖が見えていましたが、2時間後には辺り一面に海霧がかかります。 齋正忠幸船長 「この時期は結構出る。海水温が低いから」  海霧は暖かく湿った空気が冷たい海面に接することで生じます。  アワビを一つも取ることなく漁を中断することに。  漁師たちは、アワビに代わる海の幸で生計を立てています。  「アワビの産地」として栄えてきた港町は、今では「イセエビの町」へと変貌を遂げています。 ■アワビから「イセエビの町」に変貌  近年、イセエビが豊漁で豪華絢爛(けんらん)な料理がお得な料金に値下がりしていました。  千葉県では、6月と7月はイセエビの禁漁期間ですが、いすみ市では春先に大きなイセエビがたくさん取れたことで、仕入れの値段が下がったといいます。  イセエビづくしの豪華な定食を700円以上、値下げしました。  最新のデータでは、千葉県はイセエビの漁獲高が1位です。近年では2位の三重県を大きく上回っています。  ただ、店主は先行きの不安が拭えません。 割烹かねなか 中村一俊店主 「この先どんどん海水温が高くなったら、もしかしたらイセエビが取れなくなる、少なくなることもあるのかなと心配している。実際、三重県では去年おととしは不漁と聞いている」 ■海水温上昇でイセエビの生息域に変化? 元水産庁職員 東京海洋大学 上田勝彦客員教授 「昔からの産地が今、変わりつつある。新たな産地ができる兆しがある。一つの要因としては水温が大きな原因となっている」  これまで取れることのなかった東北の海でも、数年前からイセエビが増加しています。その訳は。 元水産庁職員 東京海洋大学 上田勝彦客員教授 「黒潮がすごく強くなっている傾向があるから、暖かい潮にのってイセエビが北上している。このたび起こっている黒潮の大蛇行はずいぶん期間が長い予測。収束の見込みがない。当分はこの状態のままいくのではないか」

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