会わずに信じた恋愛・投資話 「SNS型詐欺」被害者が語る巧妙な手口 40~50代にも広がる

2024年12月19日 18:58
犯人と直接会うことなく、SNSのやり取りだけで現金をだまし取られる詐欺被害が急増しています。

SNS型詐欺の被害に遭った津市の60代男性

 添い寝をイメージさせるような写真や、時には入浴中のきわどい写真。

「馬鹿ですよね。やっぱりおかしいと思わないと。途中おかしいと思うことはあったが信じてしまっていた」

 こう語るのは、三重県津市に住む60代の男性。きっかけは今年8月にTikTokでフォローした“ある女”からのダイレクトメッセージでした。

「Ayaと言って台湾・台北市の人だった。仕事も素晴らしいですねとか、結構褒める感じだった」(津市の60代男性)

 その後LINEでのやり取りに移行し、女からは手料理の写真などが送られてきました。さらに「両親にあなたのことを話した」などと、結婚をほのめかすこともあったといいます。

「良いように受け取ってくれているんだと心が開きぎみになった。結婚を考えているという意識ではなく、好きは好きだけど、つながっていたいという感じ」(津市の60代男性)
 

“女”から男性に送られてきたLINE

心を許した男性にもうけ話、390万円戻らず
 日増しに心を許していく男性に、女はある提案をしてきました。

「女が慈善活動をしていると言っていたから、自分も子ども食堂をやりたいと言った。そうしたら『素晴らしいですね』と。しばらくしてネットショップの話になった」(津市在住の60代男性)

 子ども食堂を開く資金を集めるために女が勧めたのは、女性ものの洋服やバッグを扱うネットショップ。「1日20万円以上儲かる」と話すカラクリは…。
 
 まず男性は、ネットショップに陳列する商品を選びます。客から注文が入ると「仕入れ代」を運営会社に振り込み、後日利益が乗って戻ってくるという仕組みです。

 男性は最初の3回で38万円を振り込み、計9万円ほどの利益が戻ってきたといいます。しかしーー。

「初めの3回は1~2日で利益が届いたが、残りの6回あたりになると届かなくなった。『あれ?おかしいな』というのもあったし、購入される金額がだんだん上がっていって、次に1000万円ぐらいの商品の購入があったと言ってきたので、これは対応できないと思って警察に行った」(津市の60代男性)

 結局その後の利益は戻ってこないまま、振り込んだ約390万円をだまし取られました。

「一番の原因は会っていないのに信じてしまったこと。会っていないのに金の話をしてくる状況は疑ったほうがいい」(津市の60代男性)

 対面することなく、恋愛感情を抱かせ現金をだまし取る「SNS型のロマンス詐欺」。今年に入って全国的に急増し、愛知県でも10月末までに被害は50件、総額3億7000万円にのぼっています。
 

正しいチャートと捏造されたチャート

被害額がさらに大きい「SNS型投資詐欺」
 一方で、被害件数はその10倍、66億円もの被害が出ているのが「SNS型の投資詐欺」です。

「多少プラスになればくらいの感じで少しずつやっていた」(豊橋市の60代男性)

 日頃から株式投資をしていたという男性。ある日、LINEで投資に関するグループに招待されました。

 アメリカ帰りの投資アドバイザー「江藤先生」がおすすめの銘柄を紹介するシステムだったといいます。

Q.怪しさは
「全然、全くなかった。実際その中の1つを試しに買ってみると、数カ月で多少利益は出たので、何も疑うところはなかった」(豊橋市の60代男性)

 「江藤先生」の実力を信じた男性。その後、アシスタントを名乗る男から紹介されたFX取引でも利益が出たといいます。

「30万円からスタートして、1日1万円ぐらいはプラスになっていた。何にしろ毎日プラスになっていたという状況だった。最終的には900万円を少し切るぐらいまで出しちゃった」(豊橋市の60代男性)

 900万円の投資に対し、取引サイト上の男性の口座には150万ドル、日本円で約2億円という表示が。

 違和感を覚えた男性は、正規の証券会社が公開しているチャートと見比べてみると…。

「2つを並べて時間を追って見ていったら、動きが違うなと初めて気付いて、これはやられたなとそこで思った」(豊橋市の60代男性)
 
 男性はアシスタントを名乗る男に連絡しますが、「出金には手数料が必要」と言われ、詐欺だと確信。

 同時にLINEの「江藤先生」のグループにいた人がアカウントごと消えてしまったといいます。

「まさか自分が詐欺にはまるとは思いもよらなかった。『楽して儲けよう』という意識は捨てなさいと。かなり高い勉強代だったが、そこは本当に身に染みてわかった」(豊橋市の60代男性)
 

「投資はリスクがつきもの」と注意を呼びかける節約オタクふゆこさん

著名人のアカウントを装うケースも
 犯行グループは、著名人のアカウントなどを装う手口でも接触してきます。

 YouTubeで投資情報を配信している「節約オタクふゆこ」さん。SNSの広告に名前と写真を無断で掲載されたことがあるといいます。

「ニュースで『ふゆこ』を名乗る女性からだまし取られたと言われたりするので、YouTubeどうなんだろうと思ってるくらいの人からすると、信用が下がってしまう」(YouTuber 節約オタクふゆこさん)
 
 ふゆこさんは、投資はリスクがつきものであることを十分認識してほしいと訴えます。

「『元本保証で配当10%』とか『資産2倍を確約します』はありえない内容。中身が本物の人であろうと、偽の写真を勝手に使った詐欺グループであろうと、詐欺なので気を付けましょうと」(節約オタクふゆこさん)
 

「SNS型詐欺」の注意点

愛知県の被害総額は約70億円
 今年10月までの愛知県内の「SNS型投資詐欺」被害総額は約66億1000万円、「SNS型ロマンス詐欺」は約3億8000万円。合わせて70億円近くもの多額の被害が発生しています。

 従来型の特殊詐欺の被害総額と比べると、「SNS型詐欺」は2倍以上の被害金額となっています。

 またターゲットに関しては、高齢者の被害が目立つ特殊詐欺に対して「SNS型詐欺」は40代~50代の比較的若い世代の人たちも狙われています。

 被害を回避するための注意点は、インスタグラムやフェイスブック、LINEなどのバナーなどの広告やダイレクトメッセージ、グループの招待など、怪しいものは避けるようにしてください。有名人になりすます場合もあるので注意してください。

 警察は、SNSだけでやり取りしている相手を信用しないよう、注意を呼びかけています。
 

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