現役大学生が開発、子育て世代注目の“小児科専門アプリ” 夜間でも気軽にオンライン診療が可能に 名古屋

2024年3月8日 13:31
今、母親の間で話題の“小児科アプリ”。 子どもの急な体調不良時にも、自宅で気軽にオンライン診療を受けられる便利なモノなんですが… 開発したのは、現役の名古屋大学生。奮闘する“学生社長”の思いに迫ります。

小児科専門のオンライン診療アプリの利用風景

 名古屋市内に住む6歳の男の子。風邪でしょうか?待っていたのは、タブレットにうつる小児科の医師。

 自宅にいながら医師の診察を受けられ、薬も届けてもらえる。この便利なオンライン診療を可能にしているのが、小児科専門のオンライン診療アプリ「あんよ」です。

 名古屋大学の学生らでつくるベンチャー企業が開発。社長の村上嘉一さんは大学生です。

 オンラインで行う診察前の受付は、社長自ら担当。アプリの使い方などを説明しています。

「症状のことで不安な中、使い方が分からない。どうしたらいいかということが無いように。」(村上嘉一さん)
 

医師歴10年以上の小児科専門医が24人登録

患者は全国から利用でき、診察は保険診療
 「あんよ」には、医師歴10年以上の小児科専門医が24人登録。

 アプリで問診などを済ませ、午前8時から午後11時までの間で診察を予約。

 患者は全国から利用でき、診察は保険診療。愛知や岐阜では、こども医療費助成制度も適用されます。

 では、どういう場合に利用されているのでしょうか。
 
 1歳の女の子は、軽い湿疹が出た時などに「あんよ」を使っています。

「小児科に行くことがハードルが高い。この子を連れて準備をして、予約時間通りに行くのが大変だったのと、感染症が流行っていることもあった。それなら病院に行かなくていいかなと思って。」(あんよ利用者)

 風邪で受診した男の子のママは…

「実は先週も使ったんですけど、長男の口の周りが荒れていて、夜10時ぐらいに気づいた。気になったら夜も気になるので、診ていただいたことですごくホッとしました。」(あんよ利用者)
 

村上嘉一さん

事業に専念するため休学
 事業を始めた村上さんは、もともと医学部志望。人を助ける医療の世界に強く憧れていたと言います。

「医療といえばドクターになることと思っていたので、医学部目指して勉強していたんですけど、難しくて挫折して、ただどうしても医療のことがやりたかったので。」(村上嘉一さん)

 名古屋大学情報学部に入学後、学んでいるコンピューターサイエンスを医療に活かそうと今の会社を立ち上げました。友達2人と、様々なアイデアを試みたそうですが…

「やるしかないという気持ちで、やってはみたんですけど、全然うまくいかなかった。」(村上嘉一さん)

 事業に専念するため、2年の時、休学。大学内にオフィスを構え、本格的な社長生活が始まりました。
 

村上さんの両親

両親は最初は「反対」
 そんな息子に、両親の胸中は複雑だったようで…

「正直反対。大学卒業して企業に入ってと、普通にいけばというのをイメージしていた。大学に行ってないとかね…卒業してからでもいいじゃないかと言うんだけど本人は『今じゃないとできない』というから。」(父 村上依一郎さん)

 両親の反対に、村上さんは…

「息子は寂しそうな困った顔をしていた。」(父 村上依一郎さん)
「応援する方が楽だなって思って。」(母 村上理子さん)
「途中から切り替えて、応援し始めたら急に目が輝いて、応援して良かったと思うぐらいの変化。」(父 村上依一郎さん)
 

子育て中の人に話を聞く村上さん

ママたちの声が村上さんを「一歩前へ」と進める
 とはいえ、続いたのは先の見えない日々。そんな中、訪れたのが、名古屋市の川名公園でした。今でも足を運び、子育て中の人に話を聞いています。

「怒られるかもしれないんですけど、子どもは元気なものだと勝手に思っていました。でも実際(親は)自宅で悩む瞬間が多いというのは驚いた。」(村上嘉一さん)

 子どもが体調を崩したとき、すぐに病院へ行くべきか。悩む親が気軽に利用できるサービスを作りたい。

 ママたちの声が、村上さんを一歩前へと進めたのです。
 

吉田茂医師

「小児科受診の敷居が高くなっている」
 「あんよ」は起業から4年がたった2023年6月に誕生。

 開発に向け、医学的なサポートをしたのが小児科歴30年以上の吉田茂医師です。

「今、小児科医不足で、すぐに小児科で診てもらえない。小児科受診の敷居が高くなっている部分があるので、親がちょっとした不安ぐらいで病院に行けない。そこをフォローしてあげるのは非常に重要。」(小児科 吉田茂医師)

 オンライン診療の利用について、こう話します。

「具合が悪い場合は、直接受診して見て聞いて触ってという行為が必要。なんでもオンラインだけで解決しようとせず、これは実診療がいいという“仕分け”の役割です。」(小児科 吉田茂医師)
 

「あんよ」のスタッフ

「共働き家庭」による利用が増加
 「あんよ」では、赤ちゃんから高校生までが幅広く受診。
 
 中でも増えているのが「共働き家庭」による利用です。

 仕事がない夜間や休日に受診できるため、有休の使い方が変わったという人も。

「半休を病院に行くために取らないといけなかったのが、寝る前に受診できるようになって、通院に有休を使う機会は減った。」(あんよ利用者)

 村上さんから意見を聞かれることもあるそうで…

「子育て世代から意見を取り入れる前向きな気持ちが感じ取れて、頑張って運営してくれている。」(あんよ利用者)

 現在の「あんよ」のスタッフは約20人。

 利用者が全国へと広がる中、村上さんは医師の確保や薬局との連携、そして資金調達に走り回る忙しい毎日です。

 そんな社長にメンバーは…

「医療に対しての情熱はすごくて、こういうことをやるぞという雰囲気を作るのが一番の凄さ。」(共に企業した 成川喬朗さん)
 

保育園でアプリの説明をする村上さん

愛知県内4カ所の保育園に「あんよ」が導入
 実は先日、村上さんにビッグニュースが!

「入籍をして、気が引き締まる思い。事業も会社もしっかりやっていく。」(村上嘉一さん)

 24歳、地元の同級生と結婚しました。

 そして「あんよ」にも新たな一歩が。

 愛知県内4カ所の保育園に、「あんよ」が導入されることになったのです。

 園児が怪我をした時などに病院へ連れていくべきか、保育士たちも親と同じように悩んでいます。

「病院に行けばよかったという後悔はしたくない。そういう場面で診てもらえるのが一番。」(保育士 伊藤京香さん)

 小児科アプリで悩みをサポート。奮闘する村上さんの原動力は?

「困っている人の助けになることができるか・創りだせるかどうか、人のためになることであれば、それが一番の原動力かなと思います。」(村上嘉一さん)

(3月5日 15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』一歩前へより)
 

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