土砂崩れの現場で救助にあたった消防隊員 長時間に渡った活動「励ましをしっかりした」

2024年8月29日 19:38
27日の夜、愛知県蒲郡市で発生した土砂崩れ。現場で長時間にわたり救助活動にあたった消防隊員が、当時の状況を語りました。  
 崩れた建物に、つぶされてしまった車。

 そして木は倒れ、電線にひっかかっています。

 27日の夜に蒲郡市で発生した土砂崩れ。

 木造2階建ての住宅が巻き込まれて、家族5人が生き埋めになりました。

 蒲郡市によりますと、このうち70代の夫婦と30代の長男が死亡、40代の長女と次女がけがをしました。
 

名古屋市消防局 ハイパーレスキュー 小林慶祐消防司令

「一次隊」として現場に入る
 この土砂崩れで、名古屋市消防局はハイパーレスキューなど、延べ66人を現場に派遣しました。

 レスキュー隊員の小林さんは、「一次隊」として現場に入りました。

「天候も悪くて雨が降っているような状況で、現場は斜面が建物の付近にあったので、二次災害のおそれのある活動現場でした」(名古屋市消防局 ハイパーレスキュー 小林慶祐消防司令)

 小林さんは、救助活動の指揮や、全体の安全管理を担いました。
 

小林さんは全体の安全管理を担う 提供:名古屋市消防局

思うように作業は進まず…
 先に到着していた別の市の消防隊から「建物の中から女性の声がする」と伝えられ、小林さんらも捜索に加わりました。

 「声がする所に捜索に入ったところ、女性の体の一部が確認できたので、その位置から救出活動を実施した。建物が倒壊していて、柱や梁が乗りかかっているような状況。『苦しい痛い』っていう声は確認できたので、励ましをしっかりして救出活動を実施した」(小林消防指令)

 生き埋めとなっていた女性を発見することができたものの、思うように作業は進まなかったといいます。

 「活動障害となったのが、倒壊した建物。二次災害の危険があったので。隊員の安全管理という面でも注意しながら活動していたので、どうしても時間がかかった」(小林消防指令)
 

救助の様子 提供:名古屋市消防局

約12時間後に救出
 救助活動を始めて、約12時間。

 女性の周りの土砂やがれきを手作業で取り除き、建物の外に助け出すことができました。

 女性は病院に運ばれ、重傷だということです。

 「我々の任務として、何としても生存している状況。その状況から救出することが、我々の活動の1番の目的ではあるので、今回救出できたことはよかったと思う」(小林消防指令)
 

「表層崩壊」が1つの特徴

今回の土砂崩れの特徴は?
 「今回地元の人にとっては、まさに不意打ちという表現をしなくてはいけない」(名古屋大学 田中隆文客員教授)

 こう話すのは土砂災害に詳しい、名古屋大学の田中客員教授です。

 今回の土砂崩れについて、映像を見てもらい、特徴を聞きました。

 「周りに同じような崩壊が全然発生していないところが、すごく重要なところだと思う。単独の表層崩壊、これが今回の災害の1つの特徴だと思います」(田中客員教授)

 「表層崩壊」とは、雨などによりもろくなった山の斜面が崩れる際、山を覆う土の部分だけ、つまり「表層」だけが滑り落ちるような崩れ方のことを言います。
 

「表層崩壊」は群発的に発生することが多い

「表層崩壊」は群発的に発生することが多い
 「例えば、1972年に豊田市で発生した小原藤岡災害の場合は、合計3000カ所以上の崩壊が起きた。いずれも多数の場所で災害崩壊が発生するのが、表層崩壊の特徴。今回は、見渡す限り他に崩れている所が見当たらない。そういう点では、今まで数多く発生してきた表層崩壊の災害とは、ちょっと性質が違うんじゃないか」(田中客員教授)

 群発的に発生することが多いという、表層崩壊。

 今回のようにピンポイントで発生した土砂崩れは、事前に警戒を呼び掛けることが非常に難しいといいます。
 

災害が起きる前の蒲郡市では、夜の時間帯に断続的に雨が降っていた

周辺の「雨の降り方」にも特徴が…
 そして、今回は周辺の「雨の降り方」にも特徴がありました。

 蒲郡市では、土砂崩れの2日前にあたる25日の午後11時に、1時間雨量が11.0ミリ、前日の26日には午後11時の1時間雨量が24.0ミリと、夜の時間帯に断続的に雨が降りました。

 これが、土砂崩れの発生を予想することを難しくした要因のひとつだといいます。

 「夜中に強い雨が断続的に降って、昼間はそれほど強い雨じゃない。すごく警戒しづらい雨だった」(田中客員教授)
 

名古屋大学 田中隆文客員教授

「情報の共有が大切」
 こうした警戒や予想しづらい災害に対し、私たちはどのように備えればよいのでしょうか?

 「地元の人同士で、『今まで水が噴いていない場所から水が』と。あるいは『過去にここは崩れたことがあるよ』など、シニアの人から情報を集める。まずは情報の共有が大切」(田中客員教授)
 

これまでに入っているニュース

もっと見る

これまでのニュースを配信中