【日本でここだけ】“龍の子孫”と呼ばれる珍生物 小さな水族館で暮らす訳とは…貴重なエサの瞬間も入手

2024年10月5日 08:01

碧南海浜水族館に生息するドラゴンズベビー (提供:碧南海浜水族館)

 「日本でここだけ」の動物と言えば、今年7月に名古屋の東山動植物園にやってきた「コモドオオトカゲ」が皆さんの記憶にも新しいでしょう。

 しかし、東海地方には他にも「日本でここだけ」の動物がいるんです。

 その名は通称「ドラゴンズベビー」。ホライモリとも呼ばれ、主にヨーロッパの洞窟に生息する両生類です。

 そんなドラゴンズベビーを見られる日本唯一の場所が、愛知県碧南市にある碧南海浜水族館。

 “ドラゴン”という名前とは裏腹に、体長はわずか約16cm。まさに“赤ちゃん”のような未成熟な見た目が特徴的なこの生き物は、2005年から碧南海浜水族館の一角に展示されています。
 

ドラゴンズベビーの水槽

日本唯一のきっかけは愛知万博
 2005年、愛知県内で開催された「愛・地球博」の一市町村一国フレンドシップ事業において、碧南市とフレンドシップ国となったクロアチアから寄贈されました。

 「現地では“龍の子孫”という伝説を持っているため、『ドラゴンズベビー』と呼ばれています」(碧南海浜水族館 地村佳純館長)

 当時寄贈されたドラゴンズベビーは4匹。そのうちの1匹が19年経った今でも元気に暮らしています。

 日本で飼育されているのはここだけということもあって、県外からも多くのお客さんが来るそう。
 

顔の先端をよく見ると、退化した目が

普段は動かないけど…
 筆者が実際にドラゴンズベビーを見て思ったのは、なかなか動かないということ。

 さらに動きはとてもゆっくりで、長い時間まったく動かないこともしばしば。テレビ局で働いている筆者に言わせれば、映像映えする動物とは言い難いでしょう。

 「過去にドラゴンズベビーを特集するために、パンフレットに載せる写真をカメラマンの方に撮影していただいたのですが、その方は丸2日かけて撮影していた。ずっと水槽の前でカメラを構えていました」(地村館長)
 
 動きが遅い理由について、飼育担当の三嶋さんはーー

 「もともと暗い洞窟の中に住んでいる生き物なので、頻繁に餌にありつけるかというとそうではない。実際に当館で飼育しているドラゴンズベビーの給餌は週に1度か2度ほど。少ない餌の回数でも生きていけるように、普段はなかなか動かないんだと思います」(飼育担当 三嶋達郎さん)

 ちなみにドラゴンズベビーは、ヨコエビという小さな生物を食べるのですが、ここで一つ疑問が。「ゆっくりな動きでエサは確保できるのか?」

 その心配は無用。実はドラゴンズベビーの捕食は恐ろしく早いんだそう。

 「暗い場所で生息しているので目はとても退化しているのですが、それ以外の感覚器官が発達しているので、それで獲物を正確にとらえることができると思います」(地村館長)
 

普段はじっとしていることが多い

経験のない飼育に試行錯誤
 クロアチアでも希少種に指定されているドラゴンズベビー。まったく環境が違う日本での飼育は、試行錯誤の連続でした。

 「クロアチアでも希少な生き物であるため、飼育のデータがあまりない。洞窟の水質のデータをもとに、それに合う水を探したり、餌をいろいろ変えてみたり、最初はほぼ手探りの状態でした」(地村館長)

 ちなみに、ドラゴンズベビーに合う水質を追い求めた結果、現在はコンビニなどで売られている「evian」をそのまま使用しています。

 飼育員たちの努力で、19年も碧南市で暮らしているドラゴンズベビー。寿命は一般的に80年から100年と言われていますが、生まれた年がわからないため、どれくらい生きているのかも不明です。

 「日本で唯一ということで、まずは長生きして、この子が持っている飼育記録をどんどん更新し続けてほしい。そしていろんな人に見ていただけたら。来年で碧南に来て20年になるので、何かPRできる企画ができないか考えています。」(地村館長)

 館長の地村さんによると、午前中の方が比較的動いている姿を見ることができるので、おすすめだそうです。

(メ~テレ 杉野公祐)
 

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