台風への備え、いつ何をすべきか事前に決める「タイムライン」の活用 メリットは“漏れがない”こと 

2024年8月23日 19:28
日本に近づいている台風10号。すでに沿岸の地域では災害への準備も進められています。台風に備え、いつ何をすべきか。事前に整理することが大切です。
 三重県の最南端の町・紀宝町には22日、防潮扉の動作確認をする職員の姿がありました。

 来週、日本に上陸するとみられる台風10号を警戒し、2014年に全国で初めて導入した「ある枠組み」に従って“備え”が進められています。

 それが「風水害タイムライン」です。

「災害が発生する前に備えて、誰がいつ何をするかというような取り決めを決めておいて、タイムラインというのを当町では定めております」(紀宝町 防災対策課 榎本匡伸さん)

 町で死者1人、行方不明者1人を出した2011年の紀伊半島大水害をきっかけに生まれた「風水害タイムライン」。

「事前に何をやるのか、対応事項がありまして、こちらに行動項目が細かく書かれていて、終わると完了済となる」(榎本さん)
 

行政のタイムライン

タイムラインを活用した台風への備え
 行政のタイムラインを見ると、紀宝町を含む紀南エリアが予報円に入ると予想された22日は「防潮扉の確認」や「救命ボートの移動」とあります。

 タイムラインにのっとり、ボートの移動だけでなく積みこまれた救命胴衣の確認も進められていました。

 台風接近の「4日前」と想定される23日は、関係者による会議を開くとともに、保育園児や小学生の保護者を対象に注意喚起のメールが送られることになっています。

 さらに今後、台風がより近づいた場合、防災無線による住民への呼びかけや、高齢者の避難について行政として判断するとタイムラインで予定されています。

 このタイムラインを活用した台風への備え。これからとるべき行動が明確になるだけでなく、ほかにもメリットがあるといいます。

「漏れがない、し忘れがないというのが一番大きいと思います。文字でおこして、しっかり確認を押すと」(榎本さん)
 

避難経路や準備についての会議(5月)

南海トラフ地震でも活用が期待
 今回のような台風だけでなく「タイムライン」は、この地方で心配される南海トラフ地震が起こった時にも活用が期待されています。

 内閣府によりますと、南海トラフ地震により、紀宝町には5分ほどで最初の津波が到達。津波の高さは最大で約11メートルと想定されています。

 5月に開かれた会議には、住民だけでなく町や専門家も参加して、津波が来た場合の避難経路や準備について話し合いました。

「活発に話し合って様々な対策を考えてもらい、大変有意義な時間だった」(紀宝町 防災対策課 堀勝之 課長)
 

紀宝町 防災対策課 堀勝之 課長

家族・世帯ごとにタイムラインの作成を
 風水害タイムラインの導入を進めた東京大学大学院の松尾一郎 客員教授。今回の津波タイムラインも監修しています。

「紀宝町も南海トラフ地震の津波を考えたときに短く見積もると5~6分で来る場所もある。そのことを改めて地域住民が我が事として考えてほしい」(松尾 客員教授)

 今後は一人でも多くの住民に、津波や台風、様々な災害に対応したタイムラインを使った備えをしてもらうことが課題です。

「家族単位でタイムラインを見ながら話し合って、家族・世帯ごとのタイムラインを作成してもらいたい」(紀宝町 防災対策課 堀勝之 課長)
 

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